「姉上ー!馬超が参りました!おられますかー!」
大きくない屋敷いっぱいにひびく大声を出しながら
馬超孟起はずかずかと中へ入って行く。
少々乱暴な来客だったが、何人かいる使用人達も
何度も来る騒がしい来客の事なのでとがめる者は誰もいない。
ややあって。
「・・・大きな声を出さずとも聞こえていますよ、馬超」
と、奥から落ち着いた声が返って来て
少し背の高い普段着の女性が顔をのぞかせる。
この女性、名を馬彩桂、字を朱羅。馬超の姉にあたり馬騰の長女だった。
一見して普通の彼女、実は中国全土で五本の指に入るほどの猛将で
父は元より馬超でさえも朱羅の前では子供同然、歯が立たないのである。
それはそれで男として情けない話だが、馬超はそんなことは微塵も気にすることなく
出世速度も早いのに気取らずおごらず・・・早い話のんびりマイペースで
おおらかな姉を心から尊敬していた。
「姉上!狩りに行きましょう!今日は天気もよいし絶好の狩り日よりです!」
行きませんか、という誘いではなく、すでに行く気満々の馬超。
弟の方は元気いっぱいで少々強引だったが、姉の方はこの弟とは反対におとなしく
受け身がちな性格でつき合いも長いので慣れたものだった。
「そうですね・・・。体を動かすにはちょうどいいかもしれませんね」
「では決まりですね!」
「あ、その前に武装はきちんとしていきなさい。虎が出るかもしれませんから」
「虎・・ですか?」
聞き慣れない言葉にようやく馬超の動きが止まる。
「以前徐晃殿と狩りに行ったさい途中で離れ離れになったところを
運悪く馬より大きな虎に見つかってしまいましてね。
その時はたまたま武器を持っていたので事なきをえたのですが・・本当に驚きましたよ」
「で・・ではその虎、今もどこかに?」
「いえ、そのままにしておくわけにもいきませんし、かわいそうかと思いましたが
その場で仕留めておきました」
「お一人でですか!?」
「一人でです」
まるで買い物に行ってきたように事も無げに言ってのける朱羅。
実は彼女の武力、この時すでに最大値+衝動買いした剣により三ケタになっていて
武力に関しては三国一位の実力だったので、狩りの最中に虎に出くわそうが
まったく問題ないらしい。
加えて身分も一品官で金回りもよく、名馬的廬も所持している。
「あぁ、それと以前の武術大会でいただいた書物。医療の事がのっていましたから
戦場で負傷者が多くなったら私の所へ来なさい。みてあげられますから」
医療技術は負傷兵の治療をし、兵の数を回復させる戦場においてかなり貴重な技能で
所持する武将も数が少ない。
馬超の尊敬度が40上がった(ウソ)。
「・・・姉上、私は姉上を誇りに思います!!」
「?・・どうしました急に」
ちなみにこの時朱羅は文通趣味がこうじてか、魅力も最大値一歩手前
つまり友達いっぱいな状態だった。
一騎打ちでは負け知らず。
でも全能力90代の曹操様はもっと凄い。
軍師になっちゃったけど。
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