「・・・あ、そうだ」
それはターミナルを使い、アマラ深海からボルテクスへ戻ってきた瞬間。
アマラ深界で始終無言だった少年の言葉に
同じように戻ってきた赤いコートの男が、ほんのわずかに怪訝そうな顔をした。
男が知る限り、少年は自分から口を開いたためしがない。
思い返せば会うたび話すのはいつも自分からばかりで
全身にタトゥーの入った少年は、問われた答えをほんの少し返すのがほとんど。
しかしそんな得体の知れない相手に向かって
自分を雇わないかと言った男も男だが
さんざん怖い目にあわされたはずのこの男を
あっさり雇った少年も少年で・・
冷静に考えればどう見ても馬鹿げているとしか見えないこの奇怪な雇用関係を
この少年悪魔ははたして自覚しているのだろうか。
そんなことを頭の隅で考えたダンテは
コイン一枚で雇い主になってしまった少年型の悪魔を見た。
「・・・えと、ダンテさんにいくつか聞いておいてほしいことがあるんですが
・・・いいですか?」
さっきお前は雇い主だ、と言ったにもかかわらずまだ腰の低い少年に
まだ怯えてるのか、まぁこっちも色々やらかしたからなと
ダンテは内心苦笑しながら肩をすくめた。
「かまわんぜ。オレはお前に雇われた身だからな」
「・・・・」
全身にタトゥーの入った少年は、ちょっと胡散臭そうな視線をよこすと
まだ狩る狩られる関係だったころと同じように真正面からダンテを見て
少し強い口調ではっきりこう告げた。
「じゃあまず一つ。仲魔を傷つけないで下さい」
「仲・・・お前の使い魔の事か?」
「使い魔じゃありません。仲魔です」
仲魔というのはこの少年が使役する数体の悪魔のことだろう。
ダンテとしては大してどっちも変わらんだろうと思うのだが
この少年、その仲魔の事となるとかなり敏感に反応するので
適当に流すことにした。
「・・・OK、わかった。ただしふりかかる火の粉は払わせてもらうぜ。
さっきからお前の周りに妙な殺気がチラついてやがるからな」
「・・・あ、・・っと」
少年があわてて周りを見回して何もない宙に向かい
何かの名前を呼びながら話しかけ始める。
おそらくここにいない異空間内の仲魔達に
あまり殺気立つなとでも注意しているのだろう。
「・・・と、とにかく殺し合いは厳禁ですよ。みんなにも言い聞かせますから」
「おとなしく聞けばいいんだがな」
「挑発して正当防衛とか言われても聞きませんからね」
「・・・OK、わかったよ」
何か含んだような台詞を先読みされ、むっとしたように釘をさされる。
どうやらしばらく見ないうちにこの少年は
こちらの出方とそれなりの交渉術というのを学んだらしい。
「じゃあそれだけお願いします。
何かあったら追々増えるかもしれませんけど」
「?・・・それだけでいいのか?」
「はい」
それはそれで拍子抜けだ。
てっきりこちらを警戒して、あれこれうるさいほどの禁止事項を並べられるかと
ダンテとしては思っていたのだが・・・。
「それはつまりオレがオマエの仲魔とやらを殺さなければ
それだけで雇用価値があるってことか?」
「えぇ、それも・・・あるんですけど・・」
「けど・・なんだ」
ダンテが聞くと、調べてわかった呼び名を人修羅という少年は
少し迷うようなそぶりをして、ためらいがちに言った。
「・・・もう少し先で頼もうと思ってたんですけど、今言っていいですか?」
「・・・?」
そこでふと生まれる妙な違和感。
今目の前に立っているのは
ビルから飛び降りたとき、赤い迷宮の通路で再会したとき
迷宮の最深部で雇用の話をもちかけたときのどの時の少年とも一致しない。
ダンテが初めて見る気配を持つその少年は
無言を肯定と受け取ったのか、少し間をあけてこう言った。
「あの、俺がダンテさんから見て・・・完全に悪魔になったと思ったら
俺を殺してほしいんです」
その瞬間、ストックから静かに放たれていた殺気という殺気が
まるで主の心中を察したかのようにざっと消えてなくなった。
「料金は前払いしてあるから大丈夫ですよね。
できれば苦しくないように一発でお願いしま・・・」
「・・・ちょっと待て少年」
まるで他人事のような口調で話す少年の言葉をダンテがさえぎる。
なんですかとばかりに不思議そうな顔をする少年を
いくらか鋭い目でにらむようにしてダンテは口を開いた。
「一応確認するが・・・本気で言ってるのか?」
「俺はダンテさんみたいにジョークが言えるほど
余裕があるわけじゃないから・・・」
その時あまり表情のない青白い顔が
ほんの少し影を落とした・・・ように見えた。
「・・・あれだけ必死にオレから逃げ回って
そのオレをわざわざ雇っておいて、あげく殺してくれ?
それはジョークと言うより正気の沙汰じゃないように思うが」
「・・・まぁ冷静に考えればそうかもしれませんね」
相変わらず他人事のような少年の様子に
まるで人形と話をしているような気分になってきたダンテの声のトーンが
少し不機嫌なものに変わる。
「・・・理由は」
「え?」
「依頼の理由だ。
本来なら余計な探りは入れないんだが
納得のいく説明のない依頼も受けないタチなんでな」
言われた少年はちょっと困ったような顔をした。
「・・・聞いて面白いものじゃないですよ?」
「聞いてみないとわからんだろう」
「・・・笑いませんか?」
「今面白くないって言ったように聞こえたが?」
「・・・・・・わかりましたよ」
少年は観念したらしく頭をかきながら話し出した。
「・・・信じてもらえないかもしれないけど・・俺、元々人間なんです。
ボルテクス界ができる前の東京で
単なる普通の高校生で・・・悪魔の力もなかったし
悪魔がいるなんて事も知りませんでした」
「・・・・」
「ホントに急だったんです。俺が悪魔になったのって。
いきなり地面が丸くなって、空のかわりに地面ができて、人が誰もいなくなって
そのかわりに悪魔って言われる生き物ばっかりになって。
で、あんまり急すぎて色々あって、心が追いつけなくて
俺はこんな変な悪魔になっちゃったんですけど・・」
「少年」
ふと見るとダンテが腕を組んでこちらを見ている。
どうやら様子からして要点を先に言えと言いたいらしい。
人の話を聞く態度としてはあまりよろしくないが
とりあえず嘘を言うなと否定されなかったのは少年の救いだった。
「つまり・・ちょっとした抵抗ですよ」
「・・・?」
「俺なりの抵抗なんです。俺がこの世界で人の心を持つのは」
そこからの少年の話は、ぽつりぽつりと雨だれが落ちるような
やけに断片的な話し方だった。
友人や先生は人として生き残り、自分は悪魔になってしまった事。
けれど人のまま生き残った人たちは、みんなこの世界で心を変えてしまったこと。
悪魔の自分だけが人の側に取り残されて、人ではない仲魔に助けられていること。
そして最後にアマラ深界という場所で会った老紳士と淑女の話。
ダンテはアマラ深界についての部分で目を細めただけで
後はまったく口を挟まず、ただ無言を通す。
だが少年はかまわずに、今まで誰にも、この世界で生き残った
友人や先生にも言えていなかった今までのことを
数度あっただけの男に洗いざらい話した。
この様子だとかなり長い間、人との接触もなしに
一人でこの世界を歩いてきたのだろう。
少年の話を聞きながらそんなことを考えたダンテの頭の片隅に
かつて家族を失い、一人になった時の自分の事が浮かぶ。
・・・そういやオレがコイツに引かれたのは
昔のオレに似てるからなのかもしれないな。
そんな事を考えてそっと心の中だけで苦笑するダンテをよそに
少年は今までのことをすべて話し、軽くため息をついた。
「だから俺は・・・人の心を持つことで、みんなを変えていくこの世界に抵抗したかった。
望まなかった悪魔の身体に人の心を持つことで、この悪夢に抵抗したかった」
心なしか寂しそうな気配をさせながら話すその少年は
ダンテの目にはまた別の悪魔として・・
いや
それは道に迷って警察へ駆け込んだような
ごく普通の、人間の少年のようにも見えた。
「・・・でも・・・ひょっとしたら俺も駄目になるかもしれない。
その辺にいる悪魔みたいに他の悪魔を襲ったり
マガツヒほしさに悪いことをするかもしれない。
そうなる自覚はまだないけど・・・そうならない確証もないから」
「その保険としての依頼か」
「はい」
少年は迷いなくしっかりとうなずいた。
「だが・・・悪さといってもそれはこの世界じゃ自然の摂理だ。
ましてここには迷惑をかけるべき人間なんていない。
いるのは善も悪も感情もない悪魔と死神だけだろうが」
「・・・でもダンテさんは悪魔じゃないですよね」
「まぁな」
正確には半魔だがな、とダンテは口に出さずに思う。
「俺が守りたいのは・・・こうしてダンテさんと普通に話してる今の俺。
ただここがちょっと前人間の世界だったっていう証人です」
「・・・・」
変な意地ですけど・・と苦笑する少年に
ダンテは笑うでもなく呆れるでもなく
ただ無表情に白銀の前髪を軽くかき上げた。
「俺もだいぶ強くなって、もう普通にその辺でのたれ死んだりできないだろうし・・・
それにデビルハンターって悪魔を退治するのが仕事なんですよね?」
「あぁ」
「だからお願いしたいんです。ダンテさんなら確実にしとめてくれそうだし」
「・・・信頼してくれるのは嬉しいが・・
クライアント殺害ってのは仕事上名前に傷をつけることになる」
「いいんですよ」
ふ、と少年が笑う。
それは歳不相応の、ひどく大人びた笑みだった。
「俺が完全に悪魔になったら、今ここであなたと話している俺はもういない。
この身体は俺の抜け殻をかぶった別の悪魔の物になる。
だから・・・その処分をお願いしたいんです」
「・・・処分・・・ね」
ふとその時の少年の顔が
ダンテの記憶の片隅にある、赤い髪の娘と重なる。
ダンテは少し考えると、コートのポケットに手を突っ込み
いつも依頼の受諾を決めるのに使うコインを出すかわりに
さっき受け取ったばかりの一マッカを出した。
「それはこいつに含まれる依頼か?」
「それだけだと足りませんか?」
「そうだな・・・なんせオレをあれだけハイにさせた悪魔の退治依頼だ。
これだけだとちょっと割が合わないな」
ピン、と黒い革手袋にはじかれたマッカが綺麗に宙を舞う。
それはこの世界の最低価格だ。
いくら酔狂なこの男でも、最低価格のワンコインだけで
二重契約をするには無理がある。
少年はそれもそうか、と他に支払える物はないかとポケットに手を入れようとしたが
ぱしと軽い音を立ててマッカをキャッチしたダンテがそれを止めた。
「いや、報酬はマッカじゃない」
「え?」
「オレの要求を一つのめ。それでさっきのオマエの依頼、受けてやる」
それを聞いて少し警戒するような様子を見せる少年に
ダンテはおどけたように肩をすくめて見せた。
「なに、難しい条件じゃない。
言ったろ?オマエは特別だってな」
その特別という言葉が嬉しいような嬉しくないような
すごく嬉しくないような非常に嬉しくないような。
なんだか余計に難しい顔をした少年だったが
少しして、ようやく首を縦にふった。
「よし、じゃあオレからの要求だ。まずその敬語をやめろ」
「・・・・・・・・・は??」
今まで見たこともないくらいに少年の目が丸くなる。
「オマエはオレのクライアント(依頼人)。ましていい歳もいかないガキだ。
そのガキがいい大人の顔色うかがって、不相応な口調されたんじゃ
どうも気分が悪い」
「・・・・」
物言いは相変わらず乱暴だが
その言葉に今までのような軽蔑的な響きがないのに少年は気付く。
「その上にいつもいつも何もないような平気なツラ装って
そんな細身で自分より大きな悪魔を必死にかばって
あげく何度も殺されそうになったオレをあっさり隣に置こうとしやがる」
少年は内心驚いた。
この男、何も見ていないような顔をして
いつも自分の都合ばかりを優先しているとばかり思っていたのに。
そして思いも寄らない決定的な言葉が、ダンテの口から放たれた。
「それに・・・オマエがオレを雇ったのは、仲魔とやらの安全を確保するのと同時に
人の姿をしてるオレに・・・いや、人のなごりを持つオレに
助けてほしいと思ったんじゃないのか?」
いつも静かだった少年の目が、今までになく動揺する。
「・・・どうなんだ少年。
オレの言ってることは間違ってるか?」
少年は黙して語らない。
ただいつも静かな光だけを宿していた目が
見た目の年齢相応の反応を示していて。
「・・・大当たりってやつか」
ダンテがシニカルな笑みを浮かべ
少年を見据えたまま、1マッカをピンと再び宙にはじく。
「そこでだ少年。オレは気が短い
二度は言わん。今から言うことを頭にたたき込め」
まっすぐ落ちてきたマッカを横からパシンと手の中に収めると
ダンテは混乱する少年に向かい、2人の間にある地を黒の革手袋でぐいとさし
少し強い口調でこう言った。
「このクソッタたれた世界に抵抗してるっていうオマエをオレの前に出せ。
思うことはため込むな。腹にあるもの全部出せ。
遠慮なんかするな。助けてほしいならハッキリ言え。
それがクライアントの義務と・・・特権だろ?」
一つだと言ったわりに倍以上にふくれ上がっている要求。
だがそれは要求というよりも・・
少年には叩きつけるような物言いだというのに
それらすべてがとても優しい言葉のように思えて
静かだった目がまるで迷子の子供のように揺れ動く。
「それが完璧な悪魔になったお前を殺す依頼料だ。
・・・OK?ジュンヤ」
静かな笑みと共に呼ばれた名前は
先程一度だけ呼ばれた時とは格段に違う響きを持って
ジュンヤという少年型悪魔の耳にすべりこむ。
それは少年の人であったときの名前。
それは少年を個人として識別する言葉。
そしてそれは・・・
人の姿を持つ者から聞くにとても久しい
懐かしくて、嬉しくて、少しだけ悲しい
まるで呪文のような言葉。
いろいろな意味で困惑して言葉を失うジュンヤをよそに
ダンテはおどけるように両手を広げてみせた。
「なんだ、のめないのか?だったらこの契約はチャラになるぜ」
「・・・・・え?・・・い、いや・・・そういうわけじゃなくて・・・」
「だったらOKだな」
「え?えっと・・あれ??」
なんか矛盾してないか?と首をかしげるジュンヤなどお構いなしに
ダンテはさらに事を追い立てる。
「オレは気が短いって言ったはずだ。答えはYesかNo。
それと3つ数える間でしか受け付けねぇ。3・・2・・」
困惑するジュンヤをよそに、大きな手が二度乾いた音を上げた。
「・・え!?ちょっ!Yes!Yesだってば!」
3度目を打とうとした手は音を上げる寸前で止められる。
「OK、契約成立だ。話の早いクライアントで助かるぜ」
・・・こ、こんの・・・横暴魔人!
心底むっとする少年にダンテは彼特有の笑みを向けながら
コートに契約金を無造作に突っ込み、さらに言った。
「そうだ少年、参考までに一つ昔話をしてやろう」
「・・・?」
「昔・・・今のオマエと全く同じ依頼をしてきた奴がいた」
少年の目が驚いたように大きく見開かれる。
「そいつはある組織で作られた造魔で
オレと会うまで自分が悪魔であることを知らずに育ってた。
それがオレとのゴタゴタに巻き込まれてるうちに本当のことを知ってな。
オレに今のオマエとまったく同じ依頼をしてきた。
悪さをする前に自分を殺してくれ。悪魔を殺すのがオレの仕事なんだろ・・・ってな」
多少経過に違いはあっても、本当に依頼内容がそっくりだったとダンテは笑う。
「だがな少年、悪魔ってのは他人の都合で自分の命を差し出したりしない。
ましてオレの仕事は悪魔を狩る事で・・・他人の始末をつける事じゃない」
「・・・え?」
思いをはせるように、ダンテの色素の薄い目が
ジュンヤから初めて別方向にそれた。
「オレに依頼をしてきたそいつは、悪魔として決定的なミスをしたんだよ」
「・・・?」
「だからそいつとの依頼は不成立で終わってな。
そいつは今でも育ての親と暮らしてる」
その時、不思議そうな目をする少年と
かつて縁のあった真っ赤な髪の娘が重なって見えるのを
ダンテは変だとは思わなかった。
「そいつはオマエにも当てはまりそうだからな。
それもかねてしばらく同行させてもらうぜ」
「決定的なミスって・・・何ですか?」
「それを言っちゃ面白くないだろ?
ヒントは・・・そうだな、オレの店の名前。これ以上はナシだ」
もちろんそんなものわかるワケのないジュンヤは
呆れたように少し眉を寄せた。
「・・・・・・変な人ですね」
出会った当初から感じていたことが口から自然とすべり出るが
ダンテはそれに気を悪くする様子もなく、軽く肩をすくめる。
「HA、それをオマエに言われちゃおしまいだ」
「なんですかそれ、俺は別に・・・いて!」
反論しようとすると長い指にびしと額をはじかれた。
「オレが最初になんて言ったか覚えてるか?」
「あ・・・そっか。・・・えっと・・ごめん」
「わかればいい」
・・・まったく
これじゃどっちが主だかわかりゃしない。
今まで仲魔に刃向かわれた事のないジュンヤ。
いくら雇用料金が1マッカだったとはいえ
魔人ダンテの無駄にでかい態度には理不尽さを覚えずにはいられない。
「なんだ?何か言いたそうだな」
「最初から薄々思ってたけど、やっぱり性格悪いと思ったんだよ」
「違うな。世渡りがうまいって言うんだぜ」
「なっちゃいけない大人の見本・・いったたったー!?!」
目にもとまらぬ早さで長い腕が伸びてきて
皮の感触に頬を思いっきりつねりあげられた。
「・・・口数が少ないかと思えばなかなかの毒舌だな少年」
「なんらよ!腹にあるもろ全部らせっていったのランレさんらろ!?」
「それとガキの躾は別問題だ」
「それ以れんに・・・これが雇い主に取る態ろか!」
げし!
憎たらしいことにダンテの足は嫌味なほど長い。
が、蹴りを入れると当たりやすいのが救いだ。
痛む頬をさすりながらジュンヤが手の届かない間合いを保つと
とたんに周囲の空気がぎりぎり音を立てて歪みだした。
「・・あ!こら!よせったら!」
おそらく主に対する無礼に憤慨した悪魔が
無理矢理ストックから出てこようとしたのだろう。
空間の切れ目からのぞいた何か白い生き物の鼻っ面を
ぐいぐい押し返そうとしているジュンヤの背後で
ダンテがことさら可笑しそうに笑った。
「おやおや、忠義にあつい連中だな」
「挑発しないでって言ったろ!!」
「オレは何もしてないぜ?」
「・・・わかっちゃいたけど性格悪・・・!」
むっとして振り返ったジュンヤの頭にぽんと何かが乗ってくる。
驚いて見上げると目の前には初めて見る
ごく普通の優しい目。
「・・・できるじゃないか、少年」
「・・・え?」
怒ったり呆れたりあわてたり
表情を置き去りにしてきたお人形とは違う、人らしい顔がな。
心の中でつぶやいて、犬をなでるように短い黒髪をかき回してやると
黒とエメラルドのタトゥーの入った少年悪魔は
わけがわからず目を白黒させた。
「・・何?俺何か変なことした?」
「いや、オレもまだ観察眼がたりねぇと思っただけだ」
「??は?」
「まぁ安心しな。悪魔に関する仕事の達成率は100%だからな。
プロの仕事ぶり、きっちりその目に焼き付けとけ」
「・・・あの、悪いんだけど会話になってな・・・」
「ほら何してる。置いてくぞ少年」
「え?あ!ちょっと!」
言いたいことだけ言い放ち、大股でターミナルの外へ出ようとするダンテの後を
雇い主であるはずのジュンヤが慌てて追いかける。
しかしこの時、ジュンヤの最大にして最後の依頼は
ダンテが同行している時点でもう達成されているのも同然だったのを
これ以後ペースを乱され続けるジュンヤ自身、知るよしもない。
雇用後のイベントはないけど
こうゆうのがあったらかっこいいなーと思って書いてみました。
赤髪の人について詳しくはDMC2をプレイ。
むずいけど。
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