それは金山ふもとの今庄の酒場での事。


「・・・・、・・・本気かお前」


いつもは2階でくつろいでいるはずの少年、といっても忍者軍団の頭領が
いきなりふらりとやって来て一体何を言い出すかと思えば・・・

いつも通り、一人静かに酒を飲んでいたマゴイチは
まるでそう言うのが精一杯という風な変な顔をする。

だが忍びでありながらあまりそう思わせる事のない
若さと楽天的な性格を持つコタロウは
さして気にもせずおどけたように肩をすくめる。

「なに言ってんだ。冗談だったらもっと気のきいた冗談言うぜ?」
「・・・いや、いっそ冗談だった方がいいような気もするんだが」
「なんだよ、十兵衛が博識だって言って絶賛してたあんたなら
 べつに難しい事じゃないだろ?」
「おいおい、それとこれとは話は別・・・」
「お!なんだなんだ?なぁーにもめてんだ?」

珍しく困っているようなマゴイチの様子に
遠目で様子をうかがっていた生臭坊主のエケイが
面白そうに飲みかけの酒を片手にふらふら寄って来た。

あからさまに嫌がらせに来たのだと察知するマゴイチはかなり嫌そうな顔をするが
コタロウは仲間が増えたと言わんばかりに顔を輝かせる。

「あ、坊さん。あんたも十兵衛と付き合いがあるんだよな」
「おう。お前確か二階にいるっていう忍の・・・コタロウだったか?」
「そうだ。剣豪柳生十兵衛のいざという時頼りになる
 助っ人たるコタロウ様・・・ってのはさて置いて
 ちょうどいいや。坊さんも相談にのってくれよ」
「あぁん?ぬぁ〜んだ、勉強好きのマゴイチさんは
 いざって時に頼りにならねえってのか?」

皮肉と嫌味のたっぷり乗った言葉をマゴイチは無視することで抗議するが
エケイはそれを敗北宣言と勝手に解釈してしまった。

「おう、いいぜ。俺でよけりゃ相談にのってやるよ」
「よっし!さっすが生臭!話がわかる」
「がはは!なかなかわかってるじゃねぇか!」
「・・・・・」

マゴイチ、妙なテンションについて行けず完全に閉口した。

「で?相談ってのは十兵衛がらみの事なのか?」
「あぁ。前から思ってたんだが・・・十兵衛っていっつも無愛想な顔してるだろ」
「うんうん」
「だからたまには思いっきり笑わせてやりたくて
 なにかいい知恵ないかと思ってさ」

愛想良く話を聞いていたエケイのエビス顔が
笑顔のままこちーんと固まり
少ししてがらりと苦虫をつぶしたような顔に急変した。

「・・・・・、・・本気かお前」
「えー!?なんで坊さんまで同じ事言うんだ!?」

二度も同じ反応をされると不安になるのか
コタロウがあからさまに表情を変える。

「なんだよ、ただ十兵衛を笑わせるだけの話だろ?
 なんで知り合い二人そろって話聞いたとたんにサジ投げるんだ?」
「・・・いや、ただ笑わせるだけって言っても・・・なぁ」

なにやら言いにくそうなエケイに変わって
黙っていたマゴイチが口を開いた。

「俺らはお前より少しだけあいつとの付き合いは多少長いつもりだが
 十兵衛が笑った所なんてついぞ見た事ない話でな。
 だいたいあいつはほとんど幻魔を倒しに出て滅多に宿にはいねえだろ」

面白くなさげなマゴイチの言葉に
コタロウは勢いをなくして近くにあった古い長椅子にすとんと腰を下ろした。

「そもそもだ。故郷や一族を根こそぎ滅ぼされた奴が
 たった一人、信長の幻魔勢力に抵抗してて笑える事なんてあると思うか?」
「・・・でも・・・」

まだ何か言いたそうなコタロウに
マゴイチは酒の残っていないトックリをつまみながらさらに続けた。

「それにな、十兵衛には十兵衛の事情があって、俺達には俺達の事情ってもんがある。
 軽はずみな気持ちで引っ掻き回そうとするのは
 十兵衛のためになるとは思えねえがな」
「けど・・・!」
「っ!ちょい待ち!

反論しようとしたコタロウの頭を、エケイが突然どが!と机に押さえつける。
結構な力加減に小太郎はなにすんだと怒鳴ろうとしたが
酒場の入り口から入ってきた独特の気配にはっとして動きを止めた。


「・・・何やってんだ、雁首そろえて」


いぶかしげな顔をして現れたのは、幻魔狩りから帰ってきたらしい
話の主役にしてコタロウが笑わせたい無愛想な剣豪、柳生十兵衛。

いつもならものも言わず奥の社に直行する十兵衛だが
いつもバラバラにくつろいでいるはずの連中のちょっと風変わりな取り合わせに
興味を引かれて足を止めたらしい。

なんとも間の悪い登場のしかたに内心舌打ちしつつ
エケイが慌てて胡散臭い愛想笑いでごまかしにかかる。

「い!?いや〜ぁちょっと情報交換ってやつをな!な!マゴイチ!」
「・・・ん?あ、うん。まぁ・・・そんな所だ」
「・・・?・・・そうか」

押さえつけられて気まずそうに目をそらしているコタロウの事はちょっと気になるが
十兵衛はそれ以上詮索することなくふらりと奥の庭へ消えて行った。

三人がそのまま息をひそめていると
十兵衛はすぐ戻ってきてそのまま酒場を出ようとする。

「なんだ、また出かけるのか?」

そう問うマゴイチに十兵衛は足を止め
顔だけ向けてぶっきらぼうに・・・・

「・・・幻魔狩りたりねぇ。夜には戻る」

若干ぶっそうなセリフを残し、いつも通り振り返りもせず大股に通りへ消えていく。

羽織の背には一つ、鬼の文字。

それは見なれたはずの後姿だったが
三人はその時妙な哀愁を感じ、しばらく誰も何も言えなかった。


十兵衛は鬼の一族の血を引くと言う。
幻魔を狩るのは魂を己の力とし一族の仇、信長を討つため。

それは名実共に復讐の鬼。

だがそれと同時に十兵衛は人の血も引いているのだ。


エケイとマゴイチの喧嘩の仲裁をして
ごろつきとの小競り合いで危うくなったコタロウを救い
皆がほしいと思う品を見つけるとおしげもなく譲ってくれる。

けれど彼は無愛想でいつも難しい顔をしていて
酒も飲まず女遊びをするでもなく
暇があれば誰に言うでもなく一人静かに出かけていく。

たった一人、無数の幻魔と戦うために。

「・・・あぁ・・・お前さんの言いたい事、なんとなくわかったぜ」

マゴイチがまだ机に押さえつけられたままのコタロウを見ながら
そして十兵衛の背に書かれた鬼の文字を思い出しながら
ため息と共に吐き出した。


人は笑うが鬼は笑わない。


つまりコタロウは十兵衛に心身共々鬼となってほしくなくて
おかしな提案をしてきたのだ。

エケイもそれに気付いたのか、つるつるの後頭部をかきながら
コタロウの横にどっかと腰をおろし、古い長椅子が軽く悲鳴をあげた。

「・・・そういやあいつ、俺らと違って酒とか女とか娯楽ってもんが一つもねぇよなあ」

エケイは酒と女。
マゴイチは書物や学問。
コタロウは職業がら好奇心はある方で珍しいものには興味がある。

「だろ?見てると暇さえあれば山道で幻魔と斬りあってるし
 いても飯食って寝るだけだし、金は幻魔からかなり稼いでるのに
 何かに使うわけでもねえし、何考えてんのかわかんねえし・・・」

頬杖をついて独り言のようにぶつぶつ言うコタロウに
マゴイチがふと眉をひそめた。

「・・・お前馬鹿にくわしいな」
「隠密行動は忍者の得意分野だからな。
 それに十兵衛のやつ幻魔以外には鈍感だから
 尾行してても全然気付かなくて、見てて楽しいからたまにつけてるんだよ」

それは後の世でストーキングと呼ばれる行為だが
いかに勉強家のマゴイチといえど未来の外来語を知るわけもなく
忍者に向かって忍ぶなとも言えないマゴイチ。

「・・・ま、ほどほどにしとけよ」

あきらめとも責任破棄とも言える台詞を吐くにとどまる。

「でよ、おっさん。本題に戻るけどやっぱり無理な話なのか?」

三十初めでおっさん呼ばわりされたマゴイチはちょっとムッとするが
ここで反論するとエケイにいらぬ話題を提供するだけなので
我慢して頭を切りかえた。

「・・・前例があれば話は別だが・・・俺達も付き合いが長いわけでもなし
 無二の親友でも戦友ってわけでもない」
「そういや乗ってきそうもないから、一緒に飲んだためしもねえなぁ」
「・・・なぁ、それってお手上げっていわねえか?」
「「・・・・・」」


鉄砲軍団の頭領、宝蔵院流槍の名手、風魔忍者軍団頭領
歴戦の猛者がそろいもそろって片田舎の汚い酒場で
同時にため息を吐き出すのも何か妙な光景である。

「・・・なあ、十兵衛って・・・無愛想だけど、俺の好きな物よく知ってるんだ」

気まずい沈黙をやぶったのは、頭の後で手を組んで
誰に言うでもなく口を開いたコタロウだった。

「俺でもめったにお目にかかれない珍しい物とか
 なんでもないけどなんか欲しくなる物とか
 俺がそれが欲しいって言ったわけでもないのに
 もらうと嬉しいって思う物、べつになんでもない時にくれるんだよな」

マゴイチは背を向けたまま、エケイはマゴイチの前にあった酒を拝借しながら
耳だけをかたむけている。

「けどよ、俺その場しのぎで物々交換してるけど・・・
 俺って十兵衛が喜びそうな事ってなんにも知らねえんだよな。
 十兵衛は別に気にしてないかもしれないけど
 それって・・・なんか薄情じゃねえかって思うんだよ」

それはマゴイチもエケイもう薄々感じている事だ。

「そりゃあ俺もたまに助太刀はするけど
 どっちかっていうと幻魔戦は十兵衛の方が強いし覚悟も違う。
 ・・・けどあいつ、見てるとだんだん人間から離れていってるように見えるんだ」

鬼の力を有し戦う十兵衛はこの中の誰よりも強い。
しかしただひたすらに幻魔を斬り続け、ただ復讐のためだけに生きるのは
まさに鬼の所業ではないのだろうか。

「だから俺、せめて十兵衛を人間の側に繋ぎ止められないかって思っ・・・」
だぁ!もういい!それ以上言うな辛気臭え!」

重い空気にたえかねたエケイが話をさえぎった。

「・・・畜生、んな話されると俺も引っ込みつかねえじゃねえか」
「・・・同じく、だな」

普段意見があわず喧嘩の多い二人の意見がめずらしく一致した。

「・・・ま、笑わせるってまではいかないが
 十兵衛のためになる事を考えてみるのも悪くない。
 おいエケイ、枯れ木も山のにぎわいって事で協力するか?」
「なーんか引っかかる言い方だが・・・まぁ十兵衛にゃ世話になりっぱなしだからな」

沈み気味だったコタロウの顔が明るくなる。

「・・・じゃあ!」
「実行する前からあきらめるのは誰にでもできる。
 やれるだけやってみるのも一つの手だ」
「はは!下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってな。マゴイチ」
「うるせえな、俺は数で当てる腕なんざしてない」
「よっし!じゃよろしく頼むぜ!」

いつもの調子の二人に元気の出てきたコタロウを加え
だめで元々、にこりともしないくせに人のいい堅物を笑わせる団が結成された。

「だがあの堅物を笑わせるとなると難しいぞ。
 何しろ好みってもんがまるでない奴だからな」

無意識に愛用の銃をなでながら言うマゴイチに
コタロウがはいと挙手した。

「俺、前に交換で団子やったことあるけど」
「あ、それ前に俺が酒以外に甘いもん欲しいって言ったときにくれたぞ」
「エケイに流れたって事は、甘いものが好きなわけでもない・・・か」

次に顎をなでながらエケイが手を上げる。

「なぁ、前に派手な色のついた鳥くれた時もあったが
 実は動物好きとかないか?」

これにはマゴイチが横槍をいれる。

「・・・俺が前にもらったニワトリを鳥鍋にするって言った事があるが
 大して怒らなかったな」


沈黙。


「剣豪なんだから業物の刀とか好きだとか・・・ないか?」

エケイの提案はコタロウが耳をほじりながら却下する。

「何回か見たんだけど・・あいつの武器、雷や氷の出る鬼の武器だぜ?
 それ以上の業物なんてあるか?」


静寂。


戦う事に関してはともかく柳生十兵衛私生活は謎が多く
話はさっぱり前に進まない。


わかっちゃいたが、あいつの付き合いの悪さを再確認しただけか・・・。


マゴイチが首をぼりぼりかきながらため息を吐き出し

「・・・エケイの腐った好みなら腐るほどあるんだがなあ」

悪気はないが自然と悪口が出てくるのが悪い癖である。

「時代に流されてる陰気な野郎に言われたかねえ!」

それに即座に反応するのもエケイの欠点。

そんな二人だからいつも喧嘩になるのは必然で・・・

「ハッ、考え方が時代遅れな生臭坊主に言われる筋合いはないな」
「やんのかキザ野郎!」
「・・・いちいち五月蝿えハゲだな」
「おーいおい、オッサン達・・・」

いつもの喧嘩が始まろうとしてコタロウが仲裁に入ろうとした時
ふいに酒場の入り口から入る風がさえぎられているのに気付いた。

何やら言い合いをしている二人のかわりにコタロウが目を向けると
なんとさっき出ていったはずの十兵衛が
戸口にもたれてぽつーんとたたずんでいるではないか。

「う
わ!ちょ!オッサンども!」
「いで!?」
「う!?」

コタロウがあわてて言い合いをしていた二人の頭を押さえつけて止めるが
話に夢中になっていて気配を察知できなかったので
ひょっとしたら話を聞かれていた可能性がある。

「(・・・てめっ!まがりなりにも忍びだろうが、なんで気付かねぇんだよ)」
「(・・・んな事言ったって四六時中気配さぐってるわけじゃねえし)」

小声で言い合うエケイとコタロウをよそに
十兵衛は戸口から背を離しゆっくりやって来て
変な体勢で固まってる三人を見下ろし・・

「・・・何やってんだ、雁首そろえて」

無愛想を顔に張りつけ、さっきとまったく同じ台詞を復唱した。

「・・・い、いや、だから酒のみついでに情報交換・・・」
「・・・なら俺もまぜろ」

当たり前のように入ってこようとする十兵衛に
コタロウが親に突然部屋に入ってこられ、こっそり読んでいたエロ本を
親に見つかりそうになった中坊のごとく慌てた。

え!?ちょっとまて十兵衛おまッ!幻魔狩りは!?」
「気が変わった。いいから続けろ」

と、ぶっきらぼうに言われても議題の本人が目の前にいて
続けられる話題ではない。

コタロウは何とかしてくれと年上二人に目配せするが
エケイは俺しーらねとばかりに目をそらされ
マゴイチには自分のまいた種だ自分で何とかしろと無言で睨まれた。

さすがに即席の仲間というのは義理も人情もなく薄情である。


大人って汚ねえ!!


子供扱いされるのが嫌いなはずのコタロウも
この時ばかりは目の前の30代どもを心底恨み
頭上からまきびしをぶちまいてやりたい気分にかられる。

それにつけても困った。
普段なら何事にも無関心な十兵衛が今にかぎって話に入ってこようとするのだから
これはもう嫌がらせに来たとしか思えないようなタイミングである。
しかし本人には悪気などこれっぽっちもないのだろう。
それはそれで逆に恐ろしくもあるが。

「なんだ、俺には言えねえ情報だったのか?」
「い、いや別に大した事じゃねえから」
「なら言えるだろ」
「っ・・それは・・・」

十兵衛は今にも逃げ出しそうなコタロウへの尋問をあきらめ
大きな身体を丸めて酒を飲むふりをしていたエケイに向き直った。

「エケイ、何の話してたんだ」
「う?・・まぁ・・そりゃ・・色々と」
「おいマゴイチ」
「・・・さてな」

結局全員にはぐらかされた十兵衛の眉間に軽くしわが寄った。

「・・・なるほど。タダで渡せねえ・・・か。
 ちょっと待ってろ。何か交換できるもの探してきてやる」

などと勘違いして立ち上がる十兵衛の袖を
コタロウがあわててひっつかんだ。

「ちょっと待てよ!誰もタダで渡せないなんて言ってないだろ!」
「そ、そうだ!だいたい渡すも何も、しょーもない話なんだからよ!」
「交換うんぬん以前のヨタ話に金なんか取る馬鹿がいるか」

十兵衛、ちょっと考えて。

「・・・じゃ話せるだろうが」

三人の意見をまとめて反映した、もっともな意見を口にする。

「・・・・・・あ、ちょっと急用が・・」

逃げようとしたエケイをマゴイチとコタロウがほぼ同時に捕獲した。

「逃げるなクソ坊主」
「てっ、てめえこそ脳みそ鍛えてるんだろ、自分で何とかしろ!」
「相談にのるって言ったのおっさんだろ!」
「・・・死なばもろともって知ってるかエケイ」
「てめえで勝手に死ね!骨はうどん粉と混ぜて捨ててやる!」

小声だが丸聞こえな言い合いをする三人を
十兵衛はしばらく無表情に黙って見ていたが

「・・・おいコタロウ」

いつも仲裁するはずのエケイとマゴイチではなく
なぜかいきなりこの騒動の首謀者であるコタロウの名を呼んだ。

ぎくりと動きの止まったコタロウの頭に
十兵衛は何を思ったのか、いつも幻魔の魂を吸う手をぽんとのせた。

「・・・心配すんな、俺はお前らとつるんでるかぎり人間やめねえ」

十兵衛は『はじめっから聞いてたのか!?』と驚く三人を一瞥し
無骨な性格とは裏腹にコタロウの頭を子供をなでるように軽くなで・・・


「・・・ありがとよ」


いつものぶっきらぼうで低い声でそれだけ。


けれどそこにはきちんと感謝の心がのっているのに
この時三人はなんの根拠もないがそう感じた。


その証拠に光の加減かそれとも安酒場の暗さの加減か
薄暗い中十兵衛の口元がほんの少しだけ・・


笑ったように見えたのだ。


十兵衛はさらに軽くコタロウの頭を二度ほどはたくと
そのまま何事もなかったように酒場を出て行ってしまう。

足跡が遠ざかるのが聞こえたということは
こんどこそ本当に幻魔狩りに出かけたのだろう。

しばらく硬直していた三人のうち
真っ先に行動したのはコタロウだった。

「?・・おい、どこ行く」

ものも言わずに出ていこうとするのをマゴイチが呼び止めると
コタロウは子供のように嬉しそうな表情いっぱいに・・

「追うんだよ!!」

という答えを返し、コタロウは表通りへ飛び出していった。

おそらく十兵衛の後をこっそり追いかけ
タイミングを見計らって登場し、自信満万に加勢したりするのだろう。

残された2名はしばらく黙りこんだ後、顔を見合わせた。

「・・・若さってやつか」

マゴイチが十兵衛寄贈のキセルを取り出し
なれた動作で火をつけながらつぶやき。

「・・・若い奴の考える事はわかんねえ」

肩をすくめてエケイも元いた指定位置に戻っていき
薄暗い酒場はいつもの静寂を取り戻す。



一方、今庄から鉱山へむかう山道を刀片手に歩いていた十兵衛は

「・・・っ
し!

風邪でもないのに地味なくしゃみを一つ。

「・・・・・」

そして軽く鼻をこするとまた何事もなかったように歩き出す。

その後姿を木の上から、少しゆるい顔をしたコタロウが見ていたのに
部分的に鈍感で天然な十兵衛はやっぱり気付かず・・・

コタロウは今日見た十兵衛の言葉と
わずかな表情を思い出しながら


「(鬼の霍乱ってやつか?)」


木々の間に身を潜め、一人くすくす笑うばかり。













突然はまった鬼武者2の話。
見た目とっつきにくい十兵衛もやってると渋くなって素敵。
多少ストーリーに不満はありますが・・・ね。



賛否両論ってやつですか