いきなりだが、ギンザにあるターミナル部屋は
ある種異様な雰囲気に包まれていた。

あまり広いとは言えないその殺風景な部屋
しかし外部から悪魔が入り込めないその灰色の部屋に
なぜか大小合わせて10体近くの悪魔がひしめいているのだがら仕方がない。

ある者は壁にもたれて意味もなく銃を出し入れし
ある者は身体が大きいので部屋の中央でただじっとするしかなく
ある者は入り口の前で檻の中の虎のようにウロウロと行ったり来たりし
ある者はその上をマネしてバサバサ飛び回る。

そして静かだった室内で1人(匹)ウロウロしていた魔獣が
上から落ちてくる冷気に耐えきれなくなりガウ!と吠え声を上げた。

「ふれす!上ヲ飛ブナ!寒イ!!」

しかし言われた妖獣は元からあまり会話の通じる部類でないため
怒鳴られてもあまり気にせず

「おれ待つ待つ待つー!ジュンヤ待つ待つー!」

とお構いなしに頭上をバサバサ飛び回る。

ケルベロスは牙をむいてプロミネンスをかましそうになるが
まぁまぁと割って入ったフトミミになだめられ
歯ぎしりしながらも何とかおさめてくれた。

ケルベロスが何をいらつき、フレスベルグが何を待っているのかというと
仲魔全部をストックから出してここへ全部押し込み、とにかく待っていろと言って
ジュンヤが1人でギンザへ出て行ってしまったからだ。

それは今までになかった事だ。
何しろここにいる悪魔達の主人は何より仲魔を大切にし
大体の場合自分のそばに誰か最低1体は置いていた。

そしてそれ相応に仲魔達も自分たちの主そばを離れる事はほとんどなかったのだが
それを今はストックと呼ばれる主人の懐のような場所からさえも追い出され
ここで待っていろと固く言い聞かせ、すぐ戻ると言ったまま
もうかれこれ10分ほど彼らの主人の姿はない。

仲魔の反応は信頼している者からかなり心配する者まで反応は様々だ。

ケルベロスは心配で入り口付近を動物園のトラのようにうろつき
トールも心配はしているが動けるスペースがないため
髪の先をいじりながら座り込んでただじっとするしかなく
フレスベルグはよく分かっていないだけで心配はしておらず
ワケも分からずウロウロするケルベロスのマネをする。

マザーハーロットもあまり心配していないらしく
乗っている獣を使ってなぜかピシャーチャにモグラ叩きを教えていて
その近くにはとぐろを巻いたサマエルがいて、それを細めた目でじっと見ていた。

フトミミはジュンヤの力量を信頼しているのでケルベロスを撫でて説得しているし
ミカエルは腕を組んだままさっきから一言も口をきかないが
黙って待っていると言うことはいつも通りなブラックライダーと同じく
主の力を信頼しつつ、その言いつけを忠実に守っているのだろう。

ダンテはどういったつもりなのか分からないが
ただ意味もなく銃をホルスターから出したりしまったりする動作を繰り返していた。
その足元には珍しく静かなマカミが落ちた包帯のように丸くなっている。

たった1人がいないだけなのに、いつもは騒がしい面々がやたらと静かで
それはなんだか週末にバイクで派手に騒いでまとめて捕まってしまった
若気の至り連中を見るようだ。

そしてそんな状態がしばらく続いて・・

「ごめんごめん、遅くなった」

重たい静寂を破るようにいきなり入り口が開き、のんきな声がやって来た。

本人は知らないだろうがその場の空気が真空直前から
いきなり高原のような澄んだ空気のようにガラリと変わり
入り口付近で最もイライラしていた魔獣が真っ先に声を荒げた。

遅イゾ主!!ドコガチョットダ!
「・・だからごめんてば。思ったよりも時間がかかって・・」
「ジュンヤジュンヤ!おれ待った待った!いい子で待ったー!」
「わ、ちょっと待て、いっぺんに来るなって。ケルが困るだろ」

でも一番困るのは大きな犬と大きな鳥になつかれている自分なのだが
ジュンヤはそんな事も気にせず先に冷気に弱いケルベロスを優先させて
先に白い魔獣をぎゅうと抱きしめてから大きな鳥の頭を撫でてやった。

それが終わった頃に床でじっとしていたマカミが飛んできて
紙袋を持っていた腕にきゅとからみついてくる。

「・・・ンデ?テメェハ一体ドコデ何シテタンダヨ」
「それはこれからちゃんと説明するよ」

ぺたと平たい頭を撫でながら、ジュンヤは獣達をまとわりつかせたまま部屋の中央
トールのいたあたりに行って座り込み、たくさんの悪魔達に取り囲まれながらも
のんびりした口調で今回の事についての説明を始めた。

「えぇと、みんなに離れて待っててもらったのはこれなんだよ」

そう言って握りしめていた紙袋から何かを手のひらに出して見せる。

それは戦闘でたまに得られる宝石類だ。
しかしいつもそれは大小不揃いで手に入ることが多いのに
不思議なことにそこにあるものはどれも大きさが均一で純度も悪い物ではなく
まるで今そこで購入したような綺麗なものばかり。

「アァン?テメェコンナモン買イニ行ッテタノカ?」
「違うよ。元々持ってたやつから綺麗なのをRAGで選別してもらったんだ」
「ナンデ?」
「みんなに渡すから」
「・・ハァ?」

ぽかんとマカミの口が開く。

「ほら、俺みんなに物もらってばっかりだからさ。
 たまにはこっちからお返ししたいなと思って」
「「「??」」」

意味が分からず獣達がそろって首をかしげる。

各自それなりに高位の悪魔で人の言葉を話せても
こういう所はそろって動物っぽくて結構かわいい。

全員まとめてなでなでしたい所を我慢してジュンヤはとにかく説明を始めた。

「えーと・・・ほら、みんな時々レベルが上がったとき俺に何かくれるじゃないか。
 でも俺は回復アイテム以外の物をみんなにあげてないだろ?
 たまには俺からもみんなに感謝の気持ちとして何かあげようと思ってさ」

確かに仲魔達はレベルが上がる時、まれに何かをくれる者がいたりする。

それは貴重なアイテムであったりごく普通のアイテムであったり
あんまり使い所のない微妙な物である時もあったりするが
それがどんな代物であれ、ジュンヤは仲魔達の気持ちを嬉しく思っていて
それに何かお返しできないかと思って今回の事を思いついたわけだ。

ただその物をくれる仲魔の中に1人だけ
何をくれても素直に喜べない特殊なハンターもいたりするが。

「で、何がいいかなって考えたんだけど、みんなの好みってのもよく分からないから
 無難に間違って使ったりしない宝石類に・・」
「待て主」

真っ先に手をあげて意見したのはミカエルだ。

「ん?何ミカ?」
「確かに我らは時折主に何かしらの献上をするが
 だからといって主がそれに答えねばならんという道理はない」
「言うと思ったけど・・やっぱりミカは頭が固いな」
「・・・・。それはかまわん。
 だがそれとこれとの話は別だ。
 そもそも我らは主に仕えることによってその存在意義を持ち・・」
「ホォーッホッホッホ!そんなつまらぬ御託がこの者に通じると思うか天使長?」

また何やら難しいことを言い出したミカエルを止めたのはマザーハーロットだ。

「どうせ小難しく長い講釈をたれたところで
 言い終わってから『別にいいじゃないか』などと申して一気に流されるのがオチじゃ。
 グダグダとつまらぬ言い訳などしておらず、さっさと手を出してはどうじゃ?
 とは言え・・施しはしてもされる側に立つというのは
 おぬしほどの身分ではあまりなかろうがな」
「・・・・・」

ミカエルは渋い顔をして黙り込んだ。

別に物をもらうのが嫌なわけではない。
彼女の言う通り、時々何かを献上する事はあっても
その逆が今までにあまりなかった事なので、そういった事に慣れていない事や
宝石の価値の事も含めて少し抗議してみただけなのだ。

だがこんな楽天的な魔人にその通りでまっとうな事を言われてしまうと
真面目なミカエルとしてはどうにも釈然としない。

ミカエルはムッとしたままジュンヤに目をやると
少し困ったような笑みが返ってきた。

「・・まぁ、ハーロットの言うことはほぼあってるよ。
 別にいいじゃないか。俺がそうしたいって思ってるからそうするだけなんだし。
 変に理屈とか価値とか考えなくても、俺はそう言うことあんまり気にしないからさ」

かなりの高位になる大天使は1人眉間を押さてため息を吐き出す。

言われてみればそうである。
元敵だった連中や散々な目にあわされた変なヤツまで平気で隣に置いてる本人が
物が貴重かどうかとかこの世界の宝石は換金できず物々交換にしか使えないとかいう
細かい事を一々考えるわけがない。

けれどそう言った理屈抜きのまっすぐで、何にでも分け隔てない所が
ここにいる全員が好きなジュンヤの性格なのだが。

そうして難しい顔をしたままのミカエルに、ダンテがとどめとばかりに口を挟もうとしたが
ブラックライダーの黒馬に弁慶をがんと蹴られて止められた。

声を出すのだけはなんとか耐えたが、HP3ケタ確実に減っただろう。

「と、言うわけで俺からのギフトタイム。ミカにはこれだ」

そんなやり取りをいつも通りスルーして
ジュンヤはミカエルのまだ眉間を押さえている方とは反対の手に何かを握らせる。

開けてみるとそこにあったのは緑色のエメラルドだ。

「考え方が固いっていう点からダイアモンドにしようかと思ったけど
 それだと高価だから絶対いらないって突き返すだろうと思・・」
当たり前だ!!

そりゃあ宝石類で一番高価かつかなりの貴重品なのだから
そんなもの平気で渡そうとしてきたら当然怒る。

あったら自分が渡したいくらいだし。

しかしミカエルは怒鳴った後で渡されたそれをじーと見て

「・・・・・だが心遣いは感謝する」

ジュンヤになんとか聞こえる程度の声でそう言って
この世界ではあまり珍しいとも言えないその緑色の小さな宝石を
しっかりと握りしめて胸に当てた。

この頭も性格も堅い大天使はあまり顔に心情を出さないタイプだが
手を胸の前にやるのは彼が心にきたという時のクセだった。

なのでその様子だけでもちゃんと選んだ甲斐があったと
怒られるかなと内心でヒヤヒヤしていたジュンヤはようやくホッとした。

「ナァナァ、ソンジャオレニモアルノカ?」
「ジュンヤジュンヤ!おれはおれはおれは?」
「はいはい、あせらなくても全員分あるぞ」

興味津々と寄ってきたマカミとフレスベルグに
ジュンヤは笑いながら袋の中に手を突っ込んで
マカミにオパール、フレスベルグにはアクアマリンを渡した。

「マカミのは色合いがころころ違ってて落ち着かないって意味でこれ。
 フレスのはやっぱり涼しそうな色が合うかと思ってそれにした」
「オ?ソンジャアッチノ旦那ノやつノ選別基準ハ?」
「金色に緑は似合いそうだし・・目の色と同じってのも洒落てるかと思ってね」
「・・ホ〜ン?」

にや〜と言わんばかりの変な目(元から変だけどそれをさらに変にした目)に見られて
ミカエルは慌ててさっと顔を背け、もらったそれをきちんとしまう。

「ケルにはいつまでもこんな色をしてて欲しいって意味でパール。
 トールにはこれ、綺麗っていうよりはたくましい感じのするターコイズだ」
何!?我にもか!?

どう見ても宝石なんてガラじゃないトールが驚き
ケルベロスは無言のまま目を丸くする。

「全員だって言ったろ?迷惑だって言うなら俺が預かっておくけど・・」
「い・・いや!それはない!ありがたく頂戴つまかれる!」
「・・日本語変だぞトール」

ちゃんと選んだとあってサイズも大きめな宝石をもらいながら
トールはそれをまるで雪を初めて見た時のようにしげしげとながめた。

「おや、ではわらわ達の分も用意してあるのか?」
「もちろん。ハーロットは色のイメージ的にルビーだ」
「ほうほう、なるほどのう」

獣ごしにそれを受け取りつつマザーハーロットはそれを物珍しげにかざして見た。
宝石は彼女としてはあまり珍しい物ではないが
ジュンヤが選んでくれたものとなると話は違ってくるらしい。

「ブラックにはイメージ的にオニキス。
 ピッチのはちょっと悩んだけど身体の色が似てるからコーラルだ」

ブラックライダーが相変わらず無言でそれを受け取り
ピシャーチャは大きな手でそれを持ち上げ
喜んでいるのか口を開けてウヴィ〜ーといつもよりちょっと高めにうなる。

「フトミミさんには落ちついた色をしてるからアメジスト。
 サマエルには身体の色と合いそうなサファイアだ」
「え?私にも?」
「もったいないお気遣いですが・・
 それでジュンヤ様の気が済むのならありがたく」

性格の落ちついている2人には
それぞれ紫と青色の落ちついた色の宝石が渡される。

「で、少年オレの・・」
「はいダンテさんの」

最後にぺいと投げられたのは真っ赤なガーネット。

ダンテはそれを器用に受け止めつつ少しムッとした。

「・・・なんでオレだけ態度が別物なんだ」
「ブレイクタイムにしろとか言ってメギドの石渡してくる奴にはそれで十分だろ?」
「・・・・。まぁいいか。赤は嫌いじゃないからな」

着ているコートが目に悪いほど真っ赤なのに、それで赤が嫌いだと言うなら
そいつはよほどのバカか天の邪鬼だ。

「しかしいいのかい高槻?宝石は売っているものではないし
 狙って取るにもそれなりに苦労する物だろうに」
「いいんですよ。使うのがもったいなくてただ無駄に持ってるより
 ちゃんと何かの役に立てた方が宝石だって喜びますよ」

そう言われるとただ綺麗でアイテムとの交換にしか使わない宝石も
別の価値が見えてくるものだ。

「・・あ、それとRAGで聞いたんですけど
 フトミミさんのは俺の誕生石なんだそうですよ」
「誕生石?」
「月に当てはめられた宝石の事ですよ。
 ボルテクスにはあんまり縁のない話かも知れませんけど
 一月から十二月までそれぞれに決まった誕生石があって
 自分の生まれた月の誕生石を持ってると幸せになるんだとか」 
「ではジュンヤ様は2月のお生まれなのですね」

何気なくそう言ったのはあまりこういったことに興味なさそうなサマエルだ。

「あれ?サマエル知ってるのか?」
「知識として覚えていただけですが・・それなりには。
 それと蛇足として付け加えさせていただきますと
 宝石というものは各自ある言葉の象徴として使われる事もあるそうです」
「たとえば?」
「アメジストの場合は『誠実』。
 私のサファイアの場合は『慈愛』になります」
「・・・へぇ」

確かにそれはフトミミには合いそうな言葉だ。
サマエルにも慈愛・・とまではいかないかもしれないが
温和で平等な態度からしてそんな言葉も似合うかも知れない。

「しかしどちらの宝石の象徴も
 私達よりもジュンヤ様の方がお似合いです」
「はは、確かにね」
「・・そんなわけないって」

赤くなるジュンヤにマザーハーロットやマカミらなどから笑いが起こった。
本人に自覚がないのに周りからはそう見えて
さらにそれを指摘するとそんなわけないと否定するのもまた
彼らの悪魔の主人らしくない主人の良いところだ。

しかしその時、少し離れたところでそのやり取りを見ていたミカエルが
いきなり何を思ったのかなぜか翼をぶわと総毛立たせ
猛スピードで部屋のすみっこまで退避する。

「ん?ではわらわ達の石はどういった意味を持つのじゃ?」
「ルビーは『情熱』、オニキスは『信頼』だそうです」
「ホォーッホッホッホ!なるほどのう!
 情熱の赤と信頼すべき友の黒というわけじゃな!」
「・・・・・」

ケタケタと笑うマザーハーロットと対照的に
ブラックライダーはやっぱり黙ったままそれをローブの中にしまう。

マザーハーロットは情熱的とはいえないものの、言葉自体はなぜか似合い
無口な騎士は確かにジュンヤからの信頼が最も厚い存在だ。

「ナァ、ソンジャオレラノハ?」
「オパールは『歓喜』アクアマリンは『招福』。
 ケルベロスのパールは『純潔』を表すそうですよ」
「ウォ!オモレェ!喜ビ歓迎カ!
 オイソレニおまえ!招キ猫ジャナクテ招キ鳥ダッテヨー!」
「?おおおれマネキドリマネキドリー!」
「・・・デハ我ハ純潔ヲ保ツタメニ、ヤタラ頻繁ニ風呂ニ入ラネバナランノカ?」
「ものの例えだからそう心配しなくていいってば」

水が嫌いで渋い顔をするケルベロスの頭をジュンヤが撫でる。

そう言えば一度洗ってやろうかと思って水場に連れて行ったら
猫みたいに毛を逆立てて全力で抵抗されたりしたものだが・・。

「じゃあトールとピッチのは?」
「・・奇妙なことにターコイズが『安全』コーラルが『聡明』になります」
「うっわ・・」

トールは大きい身なりで心配性。ピシャーチャは戦いに不向きだが
その他のことを器用にこなし、見覚えの成長を持っているのでレベルもそこそこ高い。

なにげなく渡して回った宝石だが
その象徴する言葉は不思議とそれぞれに該当している。

「バイパー、オレとボスはどうなんだ?」
「え?あ・・・」

だが何気なくダンテにそう言われたサマエルの様子が
珍しく少し困ったものに変化する。

象徴と本人の印象が合っているなら普通に言うだろうし
悪いものだったとしてもちゃんと毒をつけて説明してくれるだろう。

が、この反応の仕方からして・・・おそらくその言葉は言ってしまうと
ダンテにとってはサマエルでもカバーしきれない都合の良い物。

ジュンヤは嫌な予感をふくれ上がらせた。

しかもミカエルの方もその事で何か知っているのか
さっきから部屋のすみっこで自分の翼の中に丸くなってこもっている。

でもそんな態度を取られると
結果はどうあれ余計に聞きたくなるものだ。

「・・・あのさ、ミカの方は?」
「・・・『結婚』だそうです」

ブウ!!

マカミとトールとダンテが一斉に吹き出した。

くぉらミカ!!そんなの気にするな!!
 
俺だって知らなかったんだからそんなところで丸くならない!!
「・・・主、ミカエル殿と結こ・・」

べちゃん!!

恐る恐るトールの言いかけたその台詞は
全部言う前に大爆笑していたマカミを顔面に投げつけられて未完成で終わった。

しかしかわりにダイヤモンドを渡していたとしても『純愛』なのだから
あまり事態は変わっていなかったろうが。

「・・っ・・で?オレの石の意味は?」

ひとしきり笑いまくってまだ腹を抱えたまま聞いてくるダンテに
サマエルはいくつもある翼を少し垂れさせ、変な方向へと視線を飛ばす。

本当ならあんまり言いたくない所だが
ダンテだけ言わないとなるとそれはそれで誰よりも特別な意味があるように思われ
この状態からさらにつけ上がらせるというよろしくない事態になってしまう。

自分の翼にサナギよろしく閉じこもってしまった大天使の槍を掴み
ずりずり引きずり戻そうとしているジュンヤに向かって
サマエルはどうしましょうかという視線を投げかけた。

ジュンヤはかなり複雑な顔をしたが
非常に嫌な笑い方をしているダンテを見て
しかたなさそうに小さく1つうなずく。

真っ赤な邪神は少し目を細めつつ、仕方なしに言った。


「・・・ガーネットは・・・・・・・『友愛』なのですが」


槍を掴んでいた手がぽろと外れ
金色の目が満月のように丸くなった。






「うわーーん!!返せよバカーーー!!」

「HAHAHA!!せっかくの初ギフトで友愛の証だ。
 オマエの気持ちはありがたく受けてやるぜ!」

「そんな意味で渡してない!いいから返せってばー!!」

「相変わらずシャイなヤツだな・・っと!
 別に口で言ってるワケじゃないから照れなくてもいいだろ」

「だから違うって言ってるだろ!!返せ返せ返せーー!!」

「ムキになっる・・って!事は!そういう意識はあるんだな?」

「ふざけんな!そんなんあるか!!」

「ハッハ!照れ屋な主人だ!あぁ日本人だからそうなのか?」

「うるさいバカ!違うっていってるだろ!!
 毎度の事だけど人の話聞け!!

おっと!で?お返しは何がいい?
 これと同じ物を指輪に細工して渡すのも悪くないな。
 もちろんサイズは薬指で」


「死ねーーー!!」

致死量ぶっちぎりの威力がのった破邪の光弾が赤いコートギリギリをかすめ
サッと馬ごとふせたブラックライダーの上を猛スピードで素通りし
部屋の壁に着弾して見事な大穴を開ける。

あんまり広いとは言えない部屋中を駆けずり回り
真っ赤なナリで真っ赤な宝石を手にひょいひょい逃げ回る魔人を
その身が宝石に似ている少年がやっきになって追いかけた。

「ははは、相変わらず仲のいい事だ」
「・・・偶然というのは恐ろしいですね」
「トコロデアレハイツ止メル?」
「気にせずとも5分してやめねばいつも通り黒騎士が止めよるわ」
「・・・・(否定はしない)」
「ミカエル殿、ミカエル殿、いい加減に出てきて下さらんか?」
「・・ヴ〜・・(目で追いかけっこを追っている)」
「ジュンヤジュンヤー!おれおれもおれもー!遊ぶ遊ぶ遊ぶ!」
「ヤメトケヤメトケ、痴話げんかッテノハ外カラ見ルダケノモンダ」


などと勝手な事を言ってる仲魔達をよそに
ガーネットとエメラルドブルーの追いかけっこは
ドタバタと仲魔の間をすり抜けたり飛び越したり踏んづけたりしながらも
あまり広いわけでもないターミナル部屋の内部で

まだ飽きもせずに続いている。









何気なく書いてみたら、なぜかみんなそれぞれにあった物が送れてびっくり。
あとエメラルドは何気なく書いて、後から意味を知って心底びっくりしました。
いや嘘のようなホントの話。

それとジュンヤの誕生日は私と同じって脳内設定してあります。
ちなみにそれで誕生花と花言葉を調べた場合、スノーフレークで『慈愛』。
・・あ、やっぱり似合う。


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