それはとある思いつきから始まった。

いつもは登ってばかりいるカグツチの塔を
今度は逆にずっと下へ降りていってみようかという話になり
適当なメンバー(カグツチを殴る予定メンバー、ミカエル、ダンテ、トール)を組んで
ニヒロ機構マルノウチエントランスからオベリスクを目指し
そこから下へ向かうという計画が立ったのがそもそもの始まりだ。

上には限りなく高い塔も、下に向かってはそう深くなく
ちょっとわかりにくい階段を何度か下りるうちに下層へ行く仕掛けは途切れ
一行はある広い場所に出ることになった。

そこは周囲から集まったマガツヒがたまる場所なのか
周囲全体に赤い渦のゆらめく不思議な場所で
少し大きいホールのような場所になっていた。

それはそんな場所、オベリスクB2で起こったとある出来事の話である。




「なぁ、トールにはどう見える?」
「・・・四角の・・箱状の物に見えるが」
「ミカは?」
「・・・同じくだ。少し発光しているがどう見てもキューブ状の物体に見える」
「ダンテさんにも?」
「そうとしか見えないが・・・」
「で、みんな全員ばらけたように見えずに
 ちゃんと四角い箱のままに見えるんだよな?」
「・・くどいな。さっきから何回もそう言ってるだろうが」

赤いマガツヒの渦巻く通路で鬼神と大天使と魔人と人修羅が一カ所に密集して
ある一点を穴が開くほど見ている光景はあんまりどころかもの凄くカッコ悪い光景だったが・・
何をやっているのかというと、その階の中心にある柱、その一番下付近に
四角い物体が浮いているのをジュンヤが見つけたからだ。

それは下層部の少し遠くにあったが、ほのかに発光する四角いキューブで
この世界では時々見られる宝箱のように見えた。

すでに開けられているなら宝箱なら小さなキューブにばらけているはずなのだが
ここから見た限りではその様子は見られない。
取り忘れかと思ってすぐ下層に降りようとはしたものの
そこから下へ行く階段もスロープもワープホールもこの階には存在しない。

つまり、目には見えているがそれは取りたくても取れないという
とっても嫌な宝箱になっているのだ。

ミカエルが飛べるので一見取りに行けそうなのだが
ここは落下防止なのか通路には見えない壁のようなもの
RPGにはよくある通行禁止の見えない壁というものがあるのでそれもできない。

ダンテもそれを一応知ってはいるのだが
やはり目の前に段差があって降りられないと言うのは納得がいかないのか
無言で目の前を睨んで時々そこをこんこん小突く。

「主、ここがオベリスクのみだった時に取り損ねて
 カグツチの塔が来たとき進入口をふさがれたのではないか?」
「でもあんなに目立つ場所にあって取り忘れてたなんておかしいだろ?」

確かにそれは塔の中心にあった柱のど真ん前にあるので
前回来たときに見落としたとも考えにくい。

ミカエルは腕を組んで広い通路を見回した。

「だがここへ来るまでに別のルートはなかった。
 しかもこの階から先に進むルートも存在しないとなると・・」
「・・・うーん、せめてあれが開いた後の状態で浮いててくれれば
 こんな気にすることもなかったんだけどなぁ」

昔なら後で来ればいいと思っただろうが
この世界での宝箱もほぼ開けつくした今となると
開いてない宝箱というのは中身がどんな物であれ、やっぱり気になる。

「・・なぁトール、もう一回聞くけど
 あれってやっぱり四角い状態で浮いてるよな?」
「・・い、いやそうしつこく聞かれると我としても自信がなくなっ・・」


ギきィイイィイイイイイィィーーー


キャーー!!?!!


どしゃ! どごん!


突然響いてきたガラスを遠慮なくひっかいたような音に
ジュンヤが悲鳴を上げ、浮いていた大天使が耳を押さえて地面に落ちたり
鬼神が同じく耳を押さえて武器を落としてひっくり返り
静かだったその場が一瞬軽いパニック状態になる。

音の発生元は見えない壁、つまり通れそうだけど通れない
つまりRPGでよくある構造上降りれない側の壁を
耳に指をつっこみながらリベリオンで引っ掻いて壊そうとしていたダンテ。

「なにしてんだーーー!!」

耳をふさぎながら全力の飛び蹴りを食らわせると
再度剣を振り上げようとしていた魔人は
たった今斬りつけようとしたやはり見えない壁に
着地に失敗したカエルのごとく激突した。

「・・・・痛ぇな少年」
何なんだ一体!!なんでいきなりあんな怪行動とるんだよ!!」
「・・いや、そこから降りれば手っ取り早いだろうと思ったんだが」
「それができれば俺達一体何度高いところから転落できてると思ってるんだ!」
「・・・主、怒っている最中すまんが・・トールがバインドした」

ミカエルの声にふと床を見ると身体はデカイのに神経のか細い鬼神は
攻撃でもないただの音にやられ、通路に転がって痙攣中。

ダンテさん!!
「アメリカンジョークだろ」

嘘200%な事を平気な顔してほざける神経は
さすがにステータス異常全無効なだけある。

ともかくトールを回復させ、聞きやしないだろうが一応厳重に注意してから
4人は再び下に見える四角い箱をながめた。

「・・・で、どうしようか。あるって事は取れるって事なんだろうけど・・」
「一端出直してカグツチの方から道を探すという手もあるが」
「・・・ちょっと手間だな。他に道がないならそれしか方法ないけど」

などと話している間にも、行動派のダンテはやっぱりそこから降りたいのか
ベタベタと見えない壁を触ったり叩いたりして壊せそうなところを探している。
最初はただそれを見ているだけだったトールも
そう熱心にされると本当にどこか壊せそうな気がしてきて同じような事を始め
ダンテとまとめてジュンヤに怒られた。

そしてその時は一端作戦の立て直しにターミナルに戻ったのだが
それから後、あの未開封の宝箱のあった場所について意外なことが判明する。


「ミカ!トール!ダンテさん!聞いて聞いて!
 調べてみたらあの場所、やっぱり行けるように出来てたんだ!」
「何?ではカグツチからのルートがあったのか?」
「いや、そうじゃなくてもっと近くから行けたんだ」
「ではあの壁を越えるか壊・・」
さないし、隠し扉とかも通らずにちゃんと行ける方法があったんだ」
「なんだ、なら一体どこからあそこまで行けってんだ?」
「それが・・・」


「「「裏口!?」」」


そう、一度ターミナルを経由してしまうとあまり外からは出入りしないあの巨大な塔
正面にある入り口とは別に、裏からはいる場所が存在するのだ。

場所はそのまんま、見えている入り口のちょうど裏手。
嘘のような気分でそこから入ってみると
今まで表示されたことのないマップが出てきて
あれだけ悩んだ宝箱に、なんの障害もなくあっさりと到達した。

開けた中身はチャクラ金剛丹。

戦闘中にしか仕えないがチャクラドロップと同じくらいMPを回復させられ
しかもなくならないという結構使える代物だ。

「わ!やったー!これでMPの残量気にせず戦える!」
「しかも主にしか使えぬから
 主は攻撃の代わりにこれを使用する係になれる」
「あ、そうか」
「よかったではないか主!これであまり自らの手で悪魔に手を下さずとも
 ミカエル殿や我らに一任するだけですむぞ」
「え?でも・・」
「心配せずとも我もミカエル殿もそれなりに耐性がある。悪魔狩りとてそれは同じだ」
「・・ん、そうだね」
「ならオレのMPをなんとかドリンコで
 バクチ回復させようとするのもナシになるのか?」
「・・・・・・・」

「悩むな!!」


以後、ジュンヤの戦闘分担にMP回復が新たに加わった。








ぼーっとしつつ塔を下ってたら気付いた発見。
ホントに昔取り忘れたのかと思って攻略本見て確認したら裏口とは!
遊び心なのかマップ作成するとき忘れてただけなのか
なんでそんなもんが存在するのかはわかりませんが
とにかくチャクラ金剛丹は便利です。

ちなみにドリンコは数があれば今でも戦闘通常問わず
異常にかかるとカワイイ連中とか魔人連中とかに配ってます。

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