チチチチチ・・・・
頭の上を名も知らない鳥が飛んでいく。
見上げた空に雲がほどよく浮いていて
日差しも強すぎず弱すぎず、吹く風もどこか暖かい
それはいわゆる小春日和だ。
そんな中、アランはとある城の外で
いつも通りの装備のまま馬の背で
周囲を警戒するでもなく考え事をするでもなく
ただ静かにたたずんでいた。
今周りには誰もいない。
いまごろ前線組は城内の狭い通路で奮闘中だろう。
馬はなぜか城に入れない。
というわけで機動力重視であるアランは城外で居残り組になっている。
時々城内から戦闘だろう何かの爆発音や金属の音が聞こえる以外
外はいたって静かなもの・・・。
どがちゃーーーん!
・・・と、思ったが
突然近くにあった二階の窓が
ド派手な音を立てて破壊され、何かが音を立てて飛んできた。
ガキン!
不思議なことにまっすぐこちらに飛んできたそれを
アランは顔色一つ変えずに槍で叩き落とす。
そうして弾かれた剣は空中で何回転かしてから綺麗に地面に突き刺さった。
そして遅れて窓から出てきたのは
いつも最前線にいる見知った顔。
「あ!すんませんアランさん!大丈夫スか!?」
慌てたように出てきた青い髪は遠目でも目立つ上に
声も大きいので見間違えることはない。
場所と状況から事態を推測したアランは
槍を構えなおしながら怒った様子もなく口を開いた。
「・・・また単身か?」
咎めるでもなく呆れるでもない言い方に
バーツは少し困ったようにばりばり頭をかく。
「・・え?えぇ、まぁ。・・・誘導してたらいつのまにか」
「・・・・・・」
つまりこうだ。
味方本体を護衛しているうち、いつのまにか前に出すぎ
いつのまにか本隊とはぐれ、いつのまにか城のすみで勇者に囲まれ
やっきになって応戦していてあぁなったのだろう。
普通単身で行動していれば、それなりに傷を負い
回復もできず危険な状況になるはずなのだが
バーツの場合、戦闘になった場合まず先に相手の首が飛ぶ。
しかもどうゆうわけか、たまにくらう攻撃も魔法も
かすり傷程度にしかならないのがとても不思議な通称青鬼バーツ(本人は嫌がります)。
もちろんその事を熟知しているアランも
大した心配もせず、窓から突き出た戦士の顔を見上げて・・・
「・・・ほどほどにな」
と、むしろ敵を心配するようなニュアンスを含めたセリフをつぶやいた。
「おいっす!じゃ俺まだ仕事するんで!」
元気にそう言って(本人は嫌がるが)青鬼バーツは引っ込んだ。
直後、ドンと鈍い音がして今度は壁をぶち抜いて今度は盾が落ちてきたが
なれているのかアランの顔色はいつも通り、青白いままだった。
少しして・・・
今度は城の深部から、天井をドーンとぶち抜いて何かが出てきた。
金色にも見えるその大きな身体は、瓦礫を乗せたままぶるりと身震いすると
足元に向かって強烈なブレスをぶしゃーと吐き出した。
「・・・・・」
なんだかファンタジーにあるまじき大怪獣映画のような光景を
アランはやっぱり顔色を変えずに黙って見守る。
しばらく見ているとその大きな生き物はこちらに気がついたのか
長い首をこちらに向け、ギシャーと大きく一声吠えた。
それなりに大きい声だったために乗っていた馬が少し怯えたが
アランはやはり表情を変えないまま槍を上げて答える。
すると元をチキと呼ばれる大きな神竜は
それを確認すると答えるように今度は短く吠えてから
再び城内へ潜り込むように城壁をちょっと破壊しながら姿を消した。
「・・・・・・」
再び静かになった城外で
アランは考える。
そういえば・・・
馬より大きな竜が城内にいるのに
どうして騎馬が城に入れないのだろう。
素朴で今さらな疑問をうかべるアランをよそに
2カ所から聞こえる破壊音は徐々に奥へ進んでいく。
シンキングタイム
@ 土足厳禁
A ペットお断り
B 糞は飼い主が持ち帰りましょう
C 昔馬に髪を4分の3ほど食いちぎられ
強烈な馬アレルギーなヤツがいる
真面目な顔で色々ズレた事を考えてみたが
どれもあんまり合ってない。
というかCはありえないだろ普通。
そうこうするうち制圧の合図が城外まで響いてくる。
それを聞いたアランは考えることを放棄して
本隊に合流するべく槍を構えなおし、退屈そうにしていた馬の手綱を引いた。
結論
D まぁいいか
なんとなく書いた留守番ネタ。
これも実際あった話・・だったと思います。
記憶あやふや。
ただバーツが勇者4人ばかしを1人でブチ倒したのは確かです。
あ、それとアラン様、阿呆にして御免。
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