それはジャンクショップで買い物を終えて精算している最中。
「・・あら、しあわせチケット十枚たまってるんじゃない?」
場所は違っても一カ所以外すべて同じ顔をしているオカマのマネカタが
ジュンヤの広げていたマッカの中から束になっているチケットを発見する。
それはどこのジャンクショップで買い物をしてももらえるチケットで
十枚たまるとしあわせ、つまり福引きのできるチケットだ。
「・・・え?あ、ホントだ。気がつかなかったな」
チャクラドロップをダース買いしていたジュンヤは
驚いたように財布のすみにあったチケットをほじり出す。
少しくしゃくしゃになったそれを広げて数えると確かに十枚あった。
「あらら、ボウヤったら最初はやけに嬉しそうにもらってたチケットなのに
今はすっかり眼中にないって感じなのかしら?」
「そ、そんなんじゃないよ。
ただ持ち物が増えてきてたからホントに気付かなくって」
普段は使えないのでアイテム欄の一番下にあるそれは
十枚にならないと気付くことはまずない。
「ま、ともかく十枚だからアレ取ってくるわね。
すんごいもの、当てられるかしら?」
「うん・・・・あ、ちょっと待って」
景品の入った箱をとりに行こうとしたマネカタを
ジュンヤが思い出したように呼び止めた。
「どうしたの?」
「たまには仲魔にも選ばせてみようかな。
これって俺だけが集めたマッカの結果じゃないし」
「あら、いいの?」
「こればっかりは運だしね」
言いながらジュンヤはいろんな物の積み重なった薄暗い店内を見回す。
多少ちらかっているが、このくらいなら一体くらい呼べるスペースはある。
「あんまり大きくない仲魔だから呼んでいいかな」
「いいわよ。ボウヤの友達に悪い悪魔はいないみたいだしねv」
「ありがと」
ジュンヤは微笑んで片手を軽くふる。
薄暗い店内が一瞬光り、召喚されたのは
仲魔のリーダー的存在でもあるミカエルだった。
「主、どうし・・」
「きゃーー!!かっこいーぃ!!」
何か言いかけたミカエルの声を
オカママネカタの奇声がさえぎった。
「ダンディかつゴージャス!
んもう!ボウヤってばなんでこんなイイ男ばっかり連れてるのぉ?!」
普段冷静さを欠かないミカエルが、ぎくりとして軽く後ずさる。
「・・・・・・主っ・・・これは・・・マネカタ・・・なのか??」
服装と痙攣ぐあいからしてなんとかマネカタだとわかるものの
その特殊な口調と気配はミカエルが初めて遭遇するものだ。
「うん。ちょっと変わってるけどいいマネカタさんだよ」
「・・・そう・・・なのか?」
そりゃあまあ悪い奴には見えないけれど
かといって普通にも見えないマネカタも珍しい。
「んまっ!ヨスガの天使は高慢ちきなのが多いけど
やっぱりボウヤの所の天使さんは品があって素敵ねぇv
オジサマお名前は?」
ひき、と軽く顔を引きつらせたミカエルのかわりにジュンヤが答えた。
「ミカエルだよ。俺はミカって呼んだりするけど」
「あらやだ!それって天使の中でほとんど一番上のVIPさんじゃなーいv」
男の声で黄色いセリフを吐き、身体をくねらせるマネカタから
ミカエルは無意識に距離を置く。
ちなみに最初の頃、つまり合体直後のミカエルは
身分にたがわぬやたら難しくてわかりにくい偉人口調だったのだが
ジュンヤにわかりやすいようにしゃべってくれと困ったように言われ
大分偉そうな様子は減ったのだ。
「・・・大丈夫だよミカ。噛みついたりしないから」
そう言うジュンヤも、かつてこの特殊な調子に最初は尻込みして
ジャンクショップで買い物するにはそれなりの勇気がいったものだ。
しかしそこは不幸にもまれまくった人修羅。
なれてくれば何のことはない。
というか・・・こんなの平気なのか、主よ。
ミカエル、変な事でたくましい主をちょっと心配。
「うふふ、なんだか最初にここへ迷い込んできたボウヤそっくりな反応ね」
ばちんとなんだか視点のあってない目でウインクされ
朱とも金とも見える大きな翼がざわりと毛羽立つ。
思わずデスバウンドのかまえを取りそうになる手を
ジュンヤがあわてて押さえつけた。
「あ!あのさミカ!ちょっと選んでほしい物があるんだけど・・
じゃあお願いします」
「ふふ、いいわよ」
マネカタ独特の痙攣に、腰のふりまで加わるケッタイな後ろ姿を
ミカエルはなんだか1人でエレベーターに乗っていて
いきなりカーニバルの出演者集団(ビキニ外人のおねえちゃん)に乗り込まれ
思いっきり騒がれて降りて行かれたように呆然と見送った。(筆者実話)
「・・・・・主」
「ん?」
「・・・・世は・・・広いなぁ」
偉大なる天使長たる者とは思えない庶民的なセリフを吐くミカエルに
ジュンヤは困ったように苦笑した。
閉鎖的で実際そう広くないボルテクスだが
博識なミカエルでも知らない事は結構あったりする。
「はは、そう言うなよ。
ダンテさんでさえ最初見たとき無言で逃げようとしたんだから」
「・・・・・・・」
あの無礼な輩がアイテムの効果用法を知らず
なおかつ得意げに店で売られているものを主に渡しては
凄まじい苦笑いをされているのはそれが原因なのだろうか。
そんなことを考えたミカエルの脳裏に
別の疑問が浮上する。
「・・・主。つかぬ事を聞くが・・・」
「ん?」
「もしや我等を買い出しの荷物持ちに使わぬのは・・・」
ジュンヤは困ったように頭をかいた。
「・・・面食いだからな。ピッチやブラックは怖がられるし
マカミは変な物ほしがるし、トールはあの図体で入りきらないし」
「・・・・」
ミカエル、主の心遣いをありがたく思ったり
役に立てない仲魔ども(自分含まない)を不甲斐なく思ったりして
翼をちょっとしなだれさせる。
「はぁ〜い、お待たせ〜」
独特の音声にミカエルがぎくっと硬直する。
そんな大天使の腕をぽんと励ますように叩くジュンヤを後目に
オカママネカタは三色の箱を手際よくカウンターに置いた。
「はい、じゃあボウヤのご要望よ。
この中から好きなの1つ選んでちょうだいねオ・ジ・サ・マv」
ぶぶわ
翼を総毛立たせ、思わず最大級の電撃を放とうとするミカエルの腕に
ジュンヤがすんでの所で飛びついた。
「あ、あの!ミカあんまりマネカタと話したことないから
あんまりからかわないで下さい!」
「うふふ、もうか〜わいいったらv」
むぎぎと音が出そうなほど槍を握りしめる手をなだめながら
ジュンヤは運ばれてきた三色の箱を指した。
「じゃあミカ。この3つから好きなの選んで」
「・・・は?」
「ジャンクショップのしあわせチケット十枚でできるおまけだよ。
何が入ってるかは開けてからのお楽しみ」
そう言われてミカエルは少し驚いたような顔をした。
「・・・しかし主、確かそのしわよせチケット・・」
「し・あ・わ・せ」
「?・・うむ、そのチケットとやら
確か計算すると十枚最低でも10000マッカはする代物ではないのか?」
「うん。でもそのマッカを集めたのは俺だけの力じゃないし
一緒に戦ってるみんなにだって選ぶ権利はあるだろ?」
な?と微笑まれてミカエルは胸が熱くなる。
最高位の悪魔を何体も使役しながら
ジュンヤはそれを鼻にかけることなく、こんな小さな事にも気をつかってくれる。
身分上、あまり優しくされる事のない大天使は
オカマに怯えてスキル攻撃しようとした事もきれいに忘れてじーんとなった。
「・・・ではこの大天使ミカエル。
心して主の命を受け、敬意をもってこの使命、遂行しよう」
「はは、そんな怖い顔しなくても運の問題だから気にしなくていいよ」
「いや、主の寛大なる心遣いを粗末なものにするわけにいかぬ。
ここは一つ、神の御力にて最良の選択をすべし!」
びし!とミカエルの人差し指が
どこかの黒いセールスマンばりに天を指した。
「では大天使ミカエル!推して参ろう!!」
無駄な気合いと共にぶんと音を立てそうな勢いで
指がおろされた。
そんで・・
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な
う・ら・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り」
気合いのこもった指先が
まじめな声と共に箱の間をぴしぴし往復する。
「か・き・の・た・ね・む・け・・・たッ!!」
気合一声で指が止まったのは白の箱。
見守っていたオカママネカタが箱を開けると
入っていたのは運の香。
「あら、すっごい!やるわねぇオジサマ」
「うむ、神の力は偉大だ」
などと言うミカエルの額には
うっすら汗が浮いている。
相当真剣だったらしい。
「・・・・・・・・すごいなミカ。いろんな意味で」
「うむ、ぐっジョブだ主よ!」
ジュンヤの本当にいろんな意味のこもった(多分)ほめ言葉に
ミカエルは素直に、かつ実に満足げに
親指おっ立ててうなずいた。
うどん屋でキノコうどん喰いながら思いついたネタ。
私が迷ったときにしたやつです。
天然オヤジラブ。
誰が考案したのかはわかりませんがおもろい儀式です。
気に入らなかったらさらに呪文は追加されますが。
ようするに気にくわんねんがな