唐突ですが

とある場所に悪の秘密地下基地がありました。

まぁ正義の味方に秘密基地があるのと同じだと思いましょう。

それは都市の地下だったり山の地下だったり
断崖の地下だったり海底の地下だったり
とにかく必ず地下に存在する基地でした。

その基地では日夜、正義の味方なるものを壊滅させるため
いろんな人や博士や改造人間達が一生懸命・・・いえ
たまーにさぼったりケンカしたりしながら働いていました。

これからお話しするのは、とある改造人間ウズマキング31号が
初めて地下基地にやってきた時のお話です。




ウズマキングというのは工場で資金を稼ぐ製品を作る工場長の総称です。
なぜだかみんな目にウズマキ模様の入った全身タイツ(悪の下っ端お約束)。
見分けなんぞ胸の番号でしかつきません(でもちょっと良心的)。

まぁ確かに工場長というのも物をただつくるだけの地味な職業なので
文句の言いようもないのですが・・・
それはそれでなんだかパンチ一発で倒れるその他大勢の戦闘員が
地道に内職作業をしている、現代世相を反映するような少々物悲しい風景・・・

・・・話がそれました。

ともかく、新しく工場長となったウズマキング31号(以下31号)は
とりあえずその基地で一番偉い人、つまり総統なる人に挨拶するべく
地下基地へ足を踏み入れました。

ちなみに31号は以前、小さな下町工場で定年を迎える寸前・・・

・・・いえ、生々しい話はさておき。

カモフラージュもされてない地味な入り口のエレベーターを下りると
まず長い廊下にさしかかります。
上にも下にもなんだかワケありな装置がびっちり付いていて非常に落ちつきませんが
これは敵が侵入したときにだけ作動する罠なので問題ありません。

ですがその罠の廊下がウンザリするくらい長ーーいのは
総統が用心深いのか小心者なのか、はてまたただ単に暇なのかは
まだ顔も見ていない31号にはわかりませんでした。

長ーーい罠の通路をぬけると保安室がありました。
中には地下基地を守る怪人が数人いて、総司令室への道を説明してくれました。
聞けばここの悪の怪人は、総統の意志で味方には親切なんだそうです。

悪なのに親切なのか?と首をかしげながら部屋を出て
階段を下りるとまた保安室がありました。
同じように道を説明してもらい、部屋を出て階段を下りるとまた保安室がありました。
さらに進むとまた保安室がありました。

ここまで数珠つなぎに保安室があると
保安室というよりなんだか立ち飲みの飲み屋通りを歩いている気分にかられます。

さて保安室コンボも終わると少し階数の多い長いエレベーターがありました。
何階に行くかはさっきしつこいほど教わったので迷いません。

ボタンを押しエレベーターを待っていると
後からダンゴムシみたいな怪人がやってきました。
ちょっとためらってから31号が何階ですかと聞くと
ダンゴムシの降りる階は31号の目指す階の途中だと言います。

少し待って二人でエレベーターに乗り込みました。
全身タイツとダンゴムシがエレベーターに乗っているのもなんだか変な風景ですが
こんな事はこの基地ではざらな方です。
下へ移動する間、ダンゴムシは工場にしかいないウズマキングが
こんな所にいるなんて珍しいなと言いました。
今日入ってきた新人ですと31号が説明すると
ダンゴムシは「そうかまぁがんばれ。ここの総統はいいボスだからな」と言い
偵察帰りだというダンゴムシ怪人は途中の階で降りていきました。

ダンゴムシと会話して、さらにいいボスと言われても
なんだか31号はピンときません。
むしろカブトムシを想像してしまいました。

疑問のつきない31号はともかく目的の階でエレベーターを降り
こんどは普通の廊下を歩き、研究室らしき施設を通り過ぎようとし・・

どんがらがっちゃーん!

研究室にあるまじきファニーな騒音に足を止めました。

見ると中では見事なハの字ヒゲおじいさんと
派手な色眼鏡をつけたおじいさんが何やら言い争っていました。
どうやら博士同士がケンカをしているようです。

何をケンカしているのかはわかりませんが
怪人の名前がどうとか決めポーズがどうとかビームがどうとか
とてもマニアな理由で言い争っているのだけはわかりました。

しかしずっと続くかと思われていた言い争いは
カツカツと靴音を立てて入ってきた男によって中断しました。

その男は落ちついた色のマントに
片方だけの小型バイザーと連絡用と思われるレシーバーを装備していました。

ざっと見た目は派手ではない男は
物も言わず博士の間に割って入ると
不思議なことに今まで騒いでいた博士達の口論はぴたりと停止しました。

「・・・お前達、またか」

入ってきた男はそう言って、またぎゃあぎゃあ騒ぎ出した博士の間で
両方の言い分を聞いていましたが、しばらく聞いた後
聞こえないような低い声で一言二言何かを話しました。

とたんに今まで言い争いをしていた博士達は、頭を下げて平謝りを始めます。
しかもの合間に聞こえてくる単語に総統という言葉が入っているではありませんか。

どうやら博士をなだめたこの男が
この基地で一番偉い人、つまり総統のようです。

男が博士に頭を下げられながら出てきます。
男は出てきたところで31号に気付き、さらに胸の31の文字を見て
事情を察したのかあぁとうなずきました。

「新規着任の工場長だな」

そうですと31号が言うと男は穏やかにこういいました。

「私はここを管理している者だ。
 他にも名前はあるが・・・ここでは皆総統と呼んでいるからそれでいい。
 あまり顔を合わせる機会はなかろうが、まぁよろしく頼む。」

悪の秘密結社の偉い人にしては態度が温厚です。
ちょっと安心しつつ31号はよろしくお願いしますと言っ・・・

ごき!

どご!

た直後、問答無用な力にはじき飛ばされ
5メートルほどノンバウンドで吹っ飛び、突き当たりの壁に激突しました。

「こらナオキ!!基地内で人員を撥ねるな!」

総統の声に31号はかろうじて動く首を向けると
子供用の足こぎ車みたいなものにのったぬいぐるみが
かわいく「ゴメンネ」と言って猛スピードで走り去っていくのが見えました。

多分あれも怪人の一種なのでしょう。
だとすれば見た目と行為のギャップがしく
精神的にも屈辱感をもらってしまうイヤな怪人です

ともかく31号は起き上がりました。
改造されていなければ即死だったでしょう。

しかも起き上がるとき総統が大丈夫かと手を貸してくれて
31号はダンゴムシがいいボスだと言った意味がなんとなくわかりました。

総統の話によるとさっきのぬいぐるみはやはり怪人で
マッハレーサーナオキというそこそこ強力な怪人なのだそうです。
運転技術はプロ並みで、猛スピードで車を人にぶつけてから
ごめんねとあやまるのだとか。

開発したてで味方も撥ねてしまうのがたまにきずだと
総統が苦笑していると、突然基地内にけたたましい警報が鳴り出しました。

31号がびっくりしておろおろしていると
総統の装備していたバイザーが反応し細かい情報が走り出して
その下の目がふと不敵に笑いました。

「・・・来たか」

31号はその時、保安室で怪人達から聞いたことを思い出しました。

悪がいれば正義もある。

つまり来たというのは正義の組織が
この地下基地めざして攻撃を仕掛けてきたのだと言うことでしょう。

総統がレシーバーを直しながら
バイザーの横にある装置の操作を始めました。

「ゴッパ!チューニングペア、エビロン、フロンガを出せ!
 ラプター2、リーフ、魔王は格納庫に待機!
 保安室にも補充要員を送るぞ。人選は後だ。すぐ戻る!」

人が変わったように迅速に指示を飛ばす総統を
31号はなんだか尊敬の眼差しでみてしまいました。

ちなみに指令を出しているゴッパというのは
数人いるオペレータの中の唯一のコンピューター
ゴクアクブレーンタイプ8の事です。

性能は悪くないのですが口もガラも態度も悪く、総統にでもタメ口なのですが
その砕けっぷりが総統のお気に入りだと31号が知るのは
かなり後になってからの事です。

「さて、私は司令室に戻る。
 後の事は工場にいるウズマキ達に聞いてくれ。 
 多少上層がうるさくなるだろうが・・・気にせず作業するようにな」

基地内に敵が進入したらどうしたらいいのかと31号が心配すると
総統はとてもシブい笑みを浮かべて言いました。

「・・・心配するな。誰も通さん。
 そのための施設と兵器と怪人達だ」

派手ではありませんが大きなマントをばさりとひるがえし
総統は去っていきます。

その後ろ姿は絶対的な威厳と自信に満ちあふれ
まさに怪人達が尊敬するに値するにふさわしいボスの背中でした。

その後ろ姿に31号は感動しつつ
いつまでもその後ろ姿を見えなくなるまで
いつまでもいつまでも

戻ってきたナオキに二度撥ねされるまで見送りましたとさ。













誰も書いたことないだろうアジト2でした。
誰もやらないことやるの
大好き。
ちなみにナオキは基地内を歩いてると
一人だけグラフィックが違ってカワイイですが、味方を撥ねたりしません。

私は悪側でばっかりやってましたが
なんかいろんなところに愛着がわいて悪な気がしませんでした。
むしろ1人の怪人に13人束でかかってくるライダー共の方が

よっぽど(断言)



レンジャー類だって5人程度なのに