パシン
何もない所から微かな雷光が発生する。
ちょうどターミナルから出てきたばかりのジュンヤは
ぴたと足を止め、慌てて今閉めたばかりの扉に素早く入ると
虚空を見上げてこう言った。
「サマエル?トールか?」
最小限の短い問いかけに
間髪入れず虚空から落ちついた声が返ってきた。
『悪魔狩りとです』
「うわ、またかぁ?」
カン!
呆れて頭をかきむしっていると
今度は何か小さな物が虚空から飛び出してきてターミナルの床をえぐる。
『いかがしましょう』
「・・・呼ぶよ。ミカもブラックもさっき戻したばっかりだしね」
『わかりました』
ジュンヤは心底呆れたようなため息を吐き出し
両手を広げ、片方づつに意識を集中させる。
そして魔法陣二つを浮かび上がらせ
二体の悪魔を召喚する。
ドン!
ドン!
「ええい!チョロチョロと漢らしくない輩め!
貴様の脳には正々堂々の文字は存在せんのか!!」
「HA、攻撃力倍増させて雷をよびまくってる奴が言うセリフか?」
「貴様の飛び道具も似たような物であろうが!」
「こいつはオマエにくれてやってるハンデってやつさ。
一発で終わるようなショウは楽しくないだろうTバック」
「我はトールだと何度言えばわかる!!
いい加減その・・意味はよくわからぬが妙な呼び方をやめぬか!」
「あいにくオレ・・・」
ばこ
何か言いかけたダンテの頭に
ジュンヤの無言で投げたスニーカーがヒットした。
「・・・・・・痛ぇな少年」
「嘘つけ!ビルから落ちても死なないくせに」
言いながら片足で跳んで靴をひろい、座り込んで履き直しつつ
ジュンヤは自分より大きな長身の魔人と巨大な鬼神を軽くにらんだ。
「で、俺前にも言ったよな。ストックでケンカするなって」
「・・・う」
トールはぴたりと大人しくなったが
ダンテは悪びれた様子もなく銃を片手でキリキリ回した。
「知らないな。オレはそこのTバックの攻撃のお返しをしてただけだぜ」
「また挑発したんだろ」
「いいや?最初は暇つぶしに始めたちょっとした議論だったんだが
ちょっとしたはずみで意見がわれちまってな」
「議論?」
ジュンヤが首をかしげる。
これほどこの二人に似つかわしくない言葉も珍しい。
「議論って・・・何の話?」
「オマエのズボンの下の模様の話」
「・・・・・・・・・・・・ハ?」
事も無げに言い放たれたセリフに
たっぷりの間を置いて、ジュンヤの口から変な声が出た。
「そのハーフパンツの下の模様はどうなってるのかって話だったんだよ。
オレは絶対ケツに黒マルで、前はあそこ含めた蕾模様だと思うんだがな」
「・・・・・・・・」
ジュンヤの顔が素になった。
「何を言う!主の股間に模様はない!
あるのは尻までで前には達しておらぬ!」
怒られて大人しく正座していたトールが
がばと身を乗り出してきた。
「強情だな。腹の模様からしてあそこにもあると見て間違いないだろうが」
「ないと言ったらないのだ!少なくとも我はそう信じる!というかあってたまるか!」
「ドリーミーなTバックもいたもんだ。想像するのは勝手だが
信じたもんに裏切られるってのは世のセオリーだぜ」
「あったとしても尻同様の黒マルだ!これ以上は譲れん!」
「前も後も黒だってのか?HA!
コイツのあそこがそんな地味な組み合わせで終わるような代物か?」
言いながら親指で指されたジュンヤのズボンを
トールも大きな手でびしと指す。
ハッキリ言って失礼極まりない。
「黙れ!貴様の下品な妄想に当てはまるほど主の(自主規制)は落ちてはおらぬ!」
「そうか?オレは(自主規制)に模様があるのは
大人の目でのいい傾向だと思ってるんだが?」
「勝手に決めるな!そもそも貴様の基準と主の(以下同文)を一緒にするな!」
「・・・よし、じゃあオレが正しいかオマエが正しいかハッキリさせようか。
オレが正しければそのTバックをヒョウ柄に変えさせてもらう。
オマエが勝てばなんでも言うこと聞いてやるぜ」
「・・・・・・むぅ・・・よ、よかろう!その言葉、忘れるな!」
主人そっちのけで雑音入りで勝手な議論を終えた魔人と鬼神が
くるりとジュンヤに向き直った。
「というわけだ少年」
「主」
そして
何のためらいもなく
ダンテは言った。
「脱げ」
死 亡 遊 戯
瀕死のままストックに放り込まれ
ぴくりとも動かない魔人と鬼神の前にブラックライダーが現れた。
黒馬の騎士は二人に一瞥もせず
何かを置いて闇に消える。
仲良く二つ置かれたのは
誰も使わないバクチ回復剤マッスルドリンコ。
・・・てめぇ、回復スキル持ってんだから治していけよ。
そう言いたいが一人クリティカルをもらい
ネバーギブアップでギリギリ生きているダンテの無言の抗議は
闇から聞こえてきた天秤のきしむキィという音にかき消された。
「・・・・両成敗・・・・」
誰もが一回くらい気になったろうあの下の模様。
でも世の中にはダイレクトに聞いていけないこともあります。
で、ドリンク飲んで状態異常にかかりつつトールの回復スキルで復活後
怒られた事でまた議論になってエンドレス。
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