【 スタイリッシュ 】 [ stylish ]
当世風の。 粋な。
「・・・」
おそらく書店だったろう建物を散策していて
なにげなく拾ったカタカナ語辞典で聞き慣れた言葉を引いてみると
あまり聞かない単語が出てくる。
仲魔たちに好きにしてていいと自由行動を命じると
崩れた本棚から日本語辞典を探し出して、さらにページをめくる。
パラパラパラ・・・
【 粋 】
いさぎよい気立て。
特に江戸っ子のさっぱりしていやみがなく張りのある気象。
また遊里の事情や世態・人情に通じたいわゆる「わけ知り」の気象。
「・・・・・」
合ってないようで合ってないようで合ってる・・
・・・ような気がする。
むこうでほこりまみれの英語雑誌を読んでいた(自称)スタイリッシュなデビルハンターが
視線に気付いて怪訝そうな目を向けてきた。
「・・・なんだ少年、その胡散臭そうな目は」
「んー・・まぁ、ちょっと」
あいまいに答えてさらに別の辞典を拾い上げてさらに調べる。
パラパラパラ・・・
バサン、ガザ、バサリ、ドザザ
ページをめくる合間に騒々しい音を立てているのはマザーハーロットだろう。
ちらと見ると何やら七つの頭の獣に物色されているようだが
しばらくして静かになり、興味を引く本でも見つけたのか
クスクスゲラゲラと音質の違う複数の妙な含み笑いが聞こえてきた。
・・・どんな本かあんまり知りたくないなぁ。
などと思いつつページをめくっていると探していた単語が見つかった。
さっきと別の意味がのっている。
『気持ちや身なりに色気があり、あかぬけしていること』
・・・・・・。
・・・・・・微妙。
「・・・だから、なんなんだ少年」
「・・・んー・・まぁね」
むこうでグラビア雑誌を拾い上げようとしていたスタ(略)が
視線に気付いて向けられたのと同じくらいのジト目を返してくる。
タトゥーの入る指で字を追ってさらに先を調べる。
「・・ウゥ?」
なにしてるのかと珍しくストックから出ていたピシャーチャが寄ってきた。
「調べ物だよ」
と胴体と結構な距離がある長い目に微笑みかけ目を戻すと
最後の方に・・・
『男女の情事に関すること』
ドバン!!
辞書はありえないような轟音を立てて閉じられた。
至近距離にいたピシャーチャがびくっと身をゆらし
マザーハーロットが乗っていた獣ごとこちらを見て
ダンテが条件反射で素早く剣の柄に手をかける。
「・・!?だから何だ少ね・・!」
ザ
辞書を抱いたまま、少年ジュンヤはダンテから距離を置く。
「・・・なんで後ずさる」
「・・・・・」
少年、無言でさらに後退。
「・・・おい」
いぶかしむダンテからジュンヤはさらに距離を取ろうとし
さらに春先のアレな人と遭遇したような顔でぽつりとこう言った。
「・・・お色気」
「・・・はぁ?」
「・・・お色気ハンター」
意味不明な言葉を発する少年の目には
ハッキリと怯えの色が見えた。
「あっちいけお色気ハンター!!」
「待て、一体何の話・・・」
ぶん! ぼいん バゴン!
投げつけられた辞書はクールにかわしたが
それは背後にいたマザーハーロットの物理反射で跳ね返され
後頭部をコントさながらに強打した。
「・・っ、・・てめぇ・・・そこ動くな!」
「こっち来るな色情狩人!!」
「だから何の話だっつってんだよ!!」
「寄るなバカ!!半径2メートルに入るな
エロハンターー!!」
「
会話をしろクソガキ!!」
物を投げながら逃げるジュンヤと
それを剣で打ち返しながら走るダンテを
ピシャーチャの長い目が不思議そうに追う。
「・・・ヴゥ?」
「ホォーッホッホッホ!よいよい、なにかは知らぬが面白そうじゃ!
しばらく放っておこうではないか」
マザーハーロットが骨の顔でケラケラ笑いながら杯をかたむける。
ピシャーチャは何を騒いでいるのかサッパリわからなかったが
とりあえず敵に襲われないように、剣を振り回すダンテから逃げるジュンヤに
エストマだけはかけておいた。
スタイリッシュなデビルハンター。
直訳、粋な悪魔狩人。
誤訳、色気のある悪魔狩人。
超訳、(R指定)悪魔狩人。
意味を大いにはき違えた主により
サマエルが誤解を解いてくれるまでストック監禁決定。
私も粋から調べて素でびびりました。
まぁ色気もないことはないんですが正しくは・・・
【 当世 】 今の世。現代。
つまり現代風、今風でカッコイイっつーことでしょう。たぶん。
と言う以前にあんまり英語を直訳しちゃいけません。
ふろっぐ