・・がた、ごとがたがし


「・・・?」

緋竜はその日、一人部屋で積み木を積み上げて遊んでいた。
今日は雨なので外にも行けず、かといってみんなの手間をかけないようにと
関羽が作ってくれた積み木で一人部屋で遊んでいたのだが・・・
ちょうどいびつなお城ができあがった時、部屋の天井から妙な物音が聞こえてくる。

見上げると部屋のすみにある天井の板が一枚、ガタガタとゆれているではないか。

猫かネズミかとは思ったが、猫もネズミも天井板をはがそうとしたりはしない。
普通ならここでくせものか侵入者と断定し、槍の一本でも突き立てるのがセオリーだが
緋竜は黙ってじーーっと何もせず、ただ天井を見つめている。


少しして・・・。


がき、がご


「・・っぶは!いやー結構天井裏ってのも汚れてるんだなぁ」

天井に開いた穴から見た事のある顔がさかさまに顔をのぞかせた。

「よお!きたぜぇ!」

そう言ってのんきに手を振る呉の次期君主孫策に、緋竜は驚きもせず
さも当たり前のように同じく積み木を持ったまま、のんきに手をふりふりと振り返した。

「いや、まいったまいった。もう少し広いかと思ったら骨組がしっかりしてて
 通りにくいのなんのって・・・よっと!」

などと言いながらもかなり高さのある天井からためらいなく飛び降りて
なれた動作で着地。これでもかというほどホコリにまみれた服をばしばしはたき出した。

「今日はたまたま仕事が少なかったんでな。ぱっぱと終わらせて抜け出して来ちまった。
 だから今日はもう自由!いくらでも遊んでやれるぜぇ!」

緋竜、ちょっとせきこんで積み木を持ったまま首をかしげる。

「大丈夫だって!権に押しつけてねえから心配すんな」

緋竜、反対側に首をかしげる。

「だからホントに大丈夫だっての。太にも呂蒙にも迷惑かけてないって。
 ・・・お前なんか疑り深くなってねぇか?」

緋竜、ちょっと口をとがらせた。

「・・・わーかったって!心配かけさせねえって。そんな顔すんな」


一体どういった理屈で会話しているのか、ちょっぴり変な二人だった。


「んで!何して遊ぶ?鬼ごっこ・・・は目立って周瑜にみつかるから、かくれんぼか?」

だが緋竜は少し慌てたようにぶんぶんと首を横に振る。

緋竜は以前何度か小喬とかくれんぼをした経験がある。
だがその中で一度でも無事に終わる事ができたかくれんぼは存在しない。

なぜかというと、緋竜がいるから。

隠れるとあっという間に迷子になり、参加していないはずの馬超や姜維に
さんざん捜索されたあげく、半泣き状態で呂蒙や黄忠などに保護され
オニになっても要領が悪いのか、はてまた方向音痴なのか
やはり行方不明になって大騒ぎに発展する。

なので姜維からかくれんぼは禁止!ときつく言われているのだ。

「・・そっか?じゃあ目立たず楽しくって遊びも・・・あんまり思いつかねえなぁ。
 今度だまって遠乗りに行くと強制隔離するって周瑜に脅されたしなぁ・・・うーん」

腕を組み考え込む孫策。
緋竜もまねをして考えるふりをしてみる。

「あ、そういや何かいい知恵を浮かばすにはこうするって
 お前んとこの釣りじいさん(ホウ統)が言ってたな」

などと言いながら孫策、指につばをつけて頭につけ、あぐらをかいて座禅を組んだ。
若い人にはわからないネタだが、緋竜も見よう見真似でまねる。

どこからともなく流れてくる木魚の音をバックに二人は考えた。


ポク  ポク  ポク  ポク  ポク  ポク  チーーーン


先にひらめいたのは緋竜だった。
なれない考え事をして隣でぷうぷう鼻ちょうちんをふくらませていた孫策の腕をゆすり
ちらかっていた積み木を集め出す。

「・・・・んぁ?・・・目立たなくてかくれんぼじゃない遊び?」

緋竜はうなずいて積み木を使ってジェスチャーもまじえて説明を始める。
しばらくその部屋からは「お、なるほどな」とか「よし、まかしとけ!」などと
孫策の元気な返事だけが聞こえていたが、しばらくして
「よし、じゃあ行動開始だ!」という言葉を最後にその部屋から完全に音が消失した。





だだだ
だだだだどがん!

「呂蒙!陸遜!孫策を見なかったか!?」

ダッシュの勢いそのままに駆け込んで来た周瑜の一声に
一瞬何事かと緊張した二人の顔が即座にあきれたように変わる。

孫策が事務仕事から逃げ出し、それを周瑜もしくは太史慈が気付いて
血相変えて探し回るというのは呉のいつもの風景なのだ。
ちなみに今回太史慈は甘寧と船の製造視察に行って不在だった。

「またですか?そろそろくるころだと思っていましたが・・・」
「ここしばらく大人しいからと思っていたが・・・やはりきたか」
何をのんきに納得している!今回は非常事態なのだ!」
「荷物をまとめて家出でもされたのですか?」
「馬鹿を言え。家出をするなら大喬様と一緒に決まっておろうが」
冗談を言っている場合ではない!孫策が・・・!
 今日仕上げる書類仕事を全部終わらせて消えたのだ!」

いつもの事だと思っていた軍師二人の笑みが固まった。

「・・・それは・・・確かに非常事態だな」
「今までにありえなかった事例が発生したという事は・・・
 これ以後の事態も予測不可能という事になりますね」

孫策、仕事を片付けて遊びに行ったぐらいでえらい言われよう。

「どうなさる都督殿、これから臨時召集をかけるべきか?」
「・・いや、話し合っている間に何かあっては遅すぎる。
 陸遜、まず各将軍に伝令と 捜索の指示を頼む。
 ・・・孫策が嫌な事を消化してまでする事だ。・・・なにやら悪い予感がする」
「わかりました。では物見の兵にも通達を」
「殿には報告すべきか?」
「いや、あの方は孫策の父だ。よからぬ興味を持って騒ぎを荒立てられては困る」
「・・・ですな」

君主なのに孫堅も何か変な言われようだが間違ってはいない。

呉の君主とは言ってもそれ以前に孫策の父。
事情を話せば『何?策が嫌いな事を終わらせてまでする事?面白そうだなわしも・・・』
などと言い出しかねないのだ。

「蜀の陣への協力はあおいでおいた方がよいでしょうか?」
「・・・他国の力を借りるのは忍びないが・・・背に腹は変えられん。
 呂蒙、人選の判断はお前にまかせる。大事にならぬ程度に協力をあおいでくれ」
「承知した」
「では各自散開、一刻も早く孫策を探し出してくれ!」
「はい!」
「では後ほど」

まるで今から奇襲か戦でもありそうな様子で呉の軍師三人はそれぞれに散って行く。

だがその時、すぐそばの柱の影から人影が二つ走り去ったのを
見たものは誰もいなかった。



ところがそれからしばらくたったころ、新たな問題が持ち上がる。
部屋で遊ばせていた緋竜がいなくなったと姜維が呂蒙に泣きついてきたのだ。

しかも緋竜のいた部屋には、天井から何者かが侵入した形跡があったといい
おろおろする姜維をなだめ、呂蒙は考える。
しばらく状況と仮説を組み立てていると、ある結論が弾き出された。

「・・・・・孫策様だ」
「へ?」
「状況から察するに、その侵入者はおそらく孫策様だ。
 緋竜が消えたのも孫策様が消えたのも時刻が酷似している。
 となれば結論は孫策様が緋竜を連れ出したと考えるのが自然だろう」
「し・・しかし!なぜそれなら二人共どこにも見当たらないのですか?」
「それがよくわからん。孫策様はどこにいても目立つ方だし
 緋竜は人目につかぬ場所を好むわけでもないだろうし・・・
 まさかかくれんぼでもしているのか?」
「いえ、それはありません。かくれんぼは事情があって緋竜に禁止だと言ってあります」
「ならば・・・一体二人ともどこへ行った?」
「心当たりはほぼ全部探して名前も何度かよんだのですが・・・」
「・・・孫策様の行動といい、わからんな。そのわからん所が余計に不気味だ。
 ともかく蜀の方々にも事情を話して協力をあおってくれ。
 呉にも緋竜捜索依頼は出しておこう」
「わ、わかりました。お願いします」


そのころ問題の二人は。


「おっかしいなー。なんで仕事から逃げた時より大騒ぎになってんだ?」
「・・・・・」
「身に覚えもなにも・・・今までこんな事したためしないからわからねえよ。
 なぁどうする?ここらへんでやめとくか?」
「・・・・・」
「兵の詰め所?知ってるけど・・・どうすんだ?」

そのころ二人は多くの兵たちが歩き回る縁の下で
腹ばいの砂だらけになりコソコソ話し込んでいた。



それから数分後。


「と・・都督殿ーー!!」

それは周瑜が黄蓋が孫策のいそうな場所を検討している時
今しがた巡回をしていたと思われる数人の兵が、慌てたようにやって来た。

「どうした!?見つかったのか!?」
「いえ・・それが・・我々が巡回していた時にこれが・・」

そういって兵が差し出したのは紙切れに書かれた・・


  心配すんな
              孫策


というなぐり書きに近いほどの下手な文字。


「・・・と・・都督殿・・・」

隊長とおぼしき人物の呼びかけに答えず
紙切れを持った周瑜の手がガサガサふるえた。

「・・・
心配せずにおれるかーー!!そもそも孫策がこう言った日に限って
 何事もなく終わった事などものの一日たりともあるものか!!
 
探せ!!一刻も早く探し出し、詳細を説明させよ!!」
「は・はいぃ!!

孫策をあまりにもよく知る周瑜に見せたのがまずかったのか
半ギレで命じられた兵士達は大慌てで走り去り、中には慌てすぎたのか
ぼてっところんで仲間に助けられながら走って行く者までいる。

その様子に黄蓋が困ったように半端に髪の残る頭をかいた。

「のう都督殿、なにもそうカリカリして兵に当たらずともよいではないか」
当たっておらぬ!私はいつでも冷静だ!」
「・・・まぁそう自分で豪語されるならわしは何も言わんが・・・
 それはさて置き、弟君には報告せんでもよいのか?」
「いや、周泰に話して部屋へ引き止めておくようにしてある。
 先程呂蒙から今回、あの緋竜という娘がかかわっていると聞いた。
 孫権様まであの娘に調子を崩されてしまってはかなわぬからな」
「なるほどなぁ。・・・まぁ今回小喬が姫様らと買い物に出ていたのが唯一の救いか」
「・・・だがそれはあくまで唯一の吉事にすぎん。油断はできぬぞ」
「しかしのう、今回若はなんの落ち度もないと聞くが・・・
 もし若を発見したとして、一体何をどう注意されるつもりじゃ?」

周瑜はその問いに長い髪をなびかせ手を突き出し、戦場で名乗りを上げるように一言。

「会ってから考える!!」

と、見た目にはカッコイイが、一国の大都督らしからぬ行き当たりばったりな答えを残し
競歩のような歩き方で去って行く。
黄蓋はそれ以上ツッコミを入れる気にもなれず、困ったような顔で見送った。



それから1時間ほど孫策と緋竜の捜索は呉蜀合同で続いたが
二人の行方はおろか、手がかりすら一向に見つからない。
普段なら目立つ行動であちこちに痕跡を残していく孫策が
ここまで見事に隠れきるのも何かおかしい。

その事に気付いたのは、姜維と一緒に主要な場所を再度捜索していた呂蒙だった。

「・・・おかしい。これだけ探しても見つからんとは・・・。
 姜維、本当にかくれんぼは禁止してあるのか?」
「もちろんです。私と黄忠将軍の二人がかりで言い聞かせましたし
 それに・・・あの子は人の言いつけを破るような子ではありません」
「・・・そうだな。だがそうなると二人共どこへ消えた?
 かくれんぼでもない、城外へ出た形跡もないとなると一体・・・」

孫策がいなくなって騒ぎになるはいつもの事だが
何かと騒動を呼ぶ緋竜が一緒となると話は違ってくる。

「・・・何か悪い遊びをして大事になっていなければいいのだがな」

呂蒙の何気ない一言に、姜維がふと何か思い出したように顔を上げる。

「・・・悪いあそ・・・・・・
あ!!?

そう。緋竜が遊びを教わる人物の中に一人問題になる人物がいる。

「呂蒙殿!心当たりがありました!」
「何!?」
「私のカンが正しければ緋竜はその方の知恵を使っているはずです!」
「わかった。案内を頼む!」
「はい!」



さらに30分後。



どがん!!


「失礼します!!」

扉を蹴り開けた後で失礼しますも何もないのだが
ともかく周瑜の蹴り開けた部屋は、なんと呉君主孫堅の自室。

中にいたのはあぐらをかいて菓子をほおばっていた孫堅。
積み木を囲んで思案していた孫権と、横でお茶の用意をしていた周泰。
さらになぜか一般兵の服装をした孫策と緋竜が仲良くみんなで
円をかいて座り込んでいた。


「おう周瑜!遅かったじゃねぇか!」

カラカラカチカチャン


大声を出したからか、はてまた腕を勢いよく上げたからか
全員の中央につまれてた積み木がかわいい音を立てて崩れ落ちた。

「よし!!策の負けだ!」
「でぇーー!?ちょっと待てよそんなのアリか!?」
「・・・・・四連敗」
「兄上は集中力がたりぬです。・・・ところで周瑜、何かあったのか?」

中にいた比較的常識人である孫権が、呆然としている周瑜に問いかける。
だが呆然としていた周瑜のかわりに呂蒙がまず質問をした。

「・・・・皆様、何をなさっておるのですか」

遊び組五名は顔を見合わせる。

「何って・・・見りゃわかるだろ。積み木くずし。
 一人一個づつ取っていって、くずした奴にはいっこ罰を・・」
「・・・いや我々が聞きたいのはそうゆう事ではなく・・・」
「あ、そういやお前達俺達の事さがしてたんだっけ。
 あれ?なんだ、陸遜もおふくろさんも一緒だったのか?」
「・・・あの・・・すみませんが私は姜維といいまして・・・」

嫌そうな顔をするものの目上に面と向かって否定できず
引きつり笑いをする姜維を制し、呂蒙が先に話を元に戻そうと動いた。

「それより孫策様、今まで一体どこにおられたのです。
 皆でかなり捜索しましたが・・・まさかずっとここに?」
「馬鹿言え。お前らの周り結構ウロウロしてたんだぜ?兵服二つ借りてな」

そう言って孫策は近くに転がっていた一般兵の兜をかぶってみせる。

「・・・あぁ・・・そうゆう事ですか」

陸遜があきれたようにつぶやいた。

考えてみれば一般兵などそこらじゅうにいるのだから
混乱している最中変装して兜を目深にかぶり
大勢に紛れてしまえばそう見つかるものではない。

孫策は少し体格のいい兵士。緋竜は少し小柄な新米兵士と見れば
いつもの二人を探そうとしている大勢の目に止まる事はまずないだろう。

姜維が疲れきったような顔でため息をついた。

「・・・・ホウ統殿に教えてもらった・・・ヘビごっこ・・・・ですか」
「お、知ってんのか?俺は緋竜から教えてもらったんだが、結構ハラハラして面白いよな!」

横で積み木を組み直していた緋竜がうんとうなずく。

「兄上、ヘビごっことは一体なんですか?」
「簡単に言うと移動単身かくれんぼだ。自分以外のやつに見つからないように
 目的地まで移動するだけで、誰にも見つからず到達できたら勝ち。
 誰であろうと一人にでも見つかったら即、負けだ。
 まぁ俺達は途中から騒ぎになったんで、変装したりしてしのいだりもしたんだが・・・
 あ、そうだ周瑜。お前兵にやつあたりしてただろ?」
「・・・・・・まさかあの時!?」

そう。あの書置きを発見したと報告にきた兵数人の中に、孫策と緋竜はいたのだ。
その時はイラついていてわからなかったのだろうが、あの中の一人が転んで
それを助けていた兵士。それが今まで探しに探していた両名だったのだ。

「しかしお前らだせぇなぁ!俺達何回かお前らの横とか通ったり
 木箱とか壷の中とかに隠れて見てたってのによ。誰か気付けよ一人くらい」

一般兵の服を着た呉の若大将と五虎将の娘を
木箱や壷の中をのぞいて探そうとするのも、正気の沙汰とは思えないが・・・。

「・・・いきなりそのような姿で私の部屋に押しかけてきたと思えば
 そのような事をしていたのですか兄上」
「はは!何言ってやがる。緋竜が一緒に遊ぼうって言いたそうなのを通訳したら
 おんなじように隠れるのに付き合いながらここまで来たくせに」
「・・っ!なっ・・成り行き上・・・仕方ないと言うか・・・・何と言うか・・・」
「なんだここが終点だったのか。わしにも一声かけてくれれば参加したものを」

さすがに風雲児孫策の天然父。周瑜の期待を裏切らない。

「いいじゃねえかオヤジ。今も結構楽しいんだから。またの機会を待とうぜ」
「・・・うぅむ・・・しかし今度はわしにも声をかけろよ?仲間外れはなしだぞ?」
「・・・ち・・・父上」

孫権が顔をしかめる横で、周泰が黙って空になった器にお茶を注ぐ。
緋竜は入り口で立ち尽くす軍師達を不思議そうに見た後
一緒に遊ぼうといいたげに、コイコイと小さく手招きした。

「よっし!じゃあ次だ次!次負けた奴何する?」
「こら策、その前にピン一発だ」
「げ!覚えてやが・・
ってーーー!!オヤジ指の力強すぎーー!!」
「兄上こそ私にしばらく口がきけぬほどの絞め技をされたではありませんか。
 婦女子もいるのですから力の加減を考えて下さい」

聞いているとなにやら物騒な罰ゲームをやっているようが
ちなみに周泰と緋竜は今のところ負けなしだった。

「で?そこの軍師ーズも参加するか?
 今なら負けた奴が初恋の話ってのでどうだ!!

と満面の笑みをうかべて意味もなく自信満々に親指を突き出す孫策に
今の今まで黙っていた周瑜が・・・

「・・・・・・ゴふっ

吐血して倒れた。

「おわ!?なんだなんだ?!今さら思い出したように!?」
「ははは。周瑜、忍耐がたらんなぁ!」
「・・・え?何か・・・外であったのかお前達??」

呂蒙が頭を抱えてため息を吐き出すと、周瑜をかつぎながら
中の連中を無視して若手二人に指示を始めた。

「陸遜、外で走りまわっている連中に伝令だ。
 姜維は蜀の方々に・・・なるべく穏便に、言葉を選んで説明してくれ」
 俺は都督殿を運んでからここへ戻る」
「わかりました」
「・・・すみません。・・・お手数おかけしました」
「へ?なんだみんな帰るのか?」
「いえ、後程参りますゆえお構いなく」
「そっか?・・だってよ緋竜。よかったな」

帰ると言われて寂しそうな顔をしていた緋竜が嬉しそうに笑った。
それに一瞬見惚れた孫権を父が肘でかるくつつき、変な咳払いがもれる。

「じゃあ・・えっと、何回戦だっけ?まぁいいや。次の対戦!まずオヤジから!」
「ようし、負けんぞ策!」
「あの・・・ところで何回戦まで続けるつもりですか?」
「・・・・・(孫権の横でお茶菓子を開けてる周泰)」
「・・・・・(出ていく三人に手を振ってる緋竜)」

騒ぎ合う孫家と静かな護衛と蜀の娘を残し
呉蜀の知将たちは無言のまま扉を後ろ手にバタンと閉めた。


「・・・・無心というのも・・・恐ろしいな」


どちらに言うともなくもらした呂蒙の言葉に、最年少二名は同時にうなずいた。






孫策と緋竜の見つからないように移動するヘビごっこ。

被害

午後の全城内職務停止。
呉蜀兵合計300人以上無駄足。
孫策の壊した天井板修理。
周瑜貧血。全治三日。

孫策がしかられないようにと仕事をすませた後の遊びの成果は
最初に周瑜が恐れていた通りの結果となってあらわれた。


ちなみに孫家三代とその護衛、ならびに緋竜による積み木くずし。
その罰ゲームの結果は・・・


孫堅  =    子供のころの恥かしい話   策のドロップキック
           緋竜による兎射利阿無手留(ういりあむてる)

孫策  =    父のデコピン   弁慶に一撃(やはり父から)   周泰の全力タックル
           緋竜に肩車   権のチャージ1(緋竜半泣きによる報復)

孫権  =   膝カックン   策のシメ技実験台   逆立ちで歌
          策のチャージ1(お返し)
          
周泰  =   桃の皮むき(弧刀使用)  
          緋竜からのデコピン(威力はまるでないが一番怖かったらしい)

緋竜  =    策からのしっぺ(半泣きになって一時周囲が混乱)
           初恋の話(初恋の意味がわからずお流れ)

飛び入り呂蒙  =   顔にラクガキ放題(緋竜、孫策、孫堅の共同作業)


となった。



なお孫策は五日ほど周瑜に口をきいてもらえず
存在を抹消されたとかされなかったとか・・・。









マッハで書き上げた孫策と遊ぶお話。
しかしこの人書きやすすぎ。その気になれば空でも飛べそうな勢いです。

ちなみにヘビごっことは、とあるゲームの主人公がモデルになってます。
ヘビを英語にしてみましょう。



ダンボールかぶったりするけどね