1.無理への前置き

このお話はとある場所にあるとある小さな村の
なんの変哲もない小さな一軒家からはじまります。
・・いえ、一軒家と言ってもその家は無計画に増築を繰り返してそこそこ大きく
住んでいる人間は1人なのに中がやたらとだだっ広いという無駄な一軒家でした。

住んでいるのはこの村にふらりと引っ越してきて
この家を譲り受けたハンターさんが1人。
あとは給仕のネコが一匹、それと拾った小さいブタがいるくらいで
外出の多いハンターさんが一端外に出てしまえば
4人がけのカウンターや10人がけの半円形のテーブル
家の中心にどーんとある天幕のついた大きなベッドもただの持ち腐れ同然です。

とにかくそんな大きくて無駄の多いお家の中に、今日は珍しくお客さんがいました。
いえ、お客といっても家主のハンターさんが
『ちょっと鍛冶屋で用事してくるから適当にまってて』と言ったので
待ってはいるもののちょっとヒマを持て余している人達でした。

1人は広いお家をウロウロするにも飽きて、大きな窓
・・というかぼがーんと開いている場所から日も暮れた外を眺めている赤いコートの男。
もう1人は無表情にブタやネコを撫でるのにも飽き
当たり前のように黙って本棚をあさり始めた青いコートの男です。

2人ともちょっと雰囲気は違いましたが顔はほとんど一緒で
でもやってることや性格はまったく違うというヘンな2人組でした。
そしてこの2人、これでも一応双子で赤い方が弟のダンテ
青い方が兄のバージルというのですが・・・
まぁそのへんはこの際多く語る事もないでしょう。

ともかくそろそろやる事がなくなり景色を眺めるのにも飽きてきた弟のダンテは
仕方なく本棚をあさっていた兄の方に寄ってきました。

「なんだ、何か珍しい本でもあるのか?」
「・・その前に文字が読めるかどうかは聞かないのか?」
「それにしちゃさっきからずっと見てるだろ」

ダンテにそう言われた通り、不思議な文字の並ぶ本から目を離さないまま
バージルは古い製法で作られている紙のページをめくりながら言いました。

「完璧とまではいかないが・・不思議な事に多少読める。
 だが読めるだけで意味の分からない部分は多々あるがな」
「じゃあそこには何が?」
「・・内容と数からして狩猟記録のようだな。
 お前で理解できそうな単語と数をあげるなら・・ランゴスタ886、カンタロス657
 ケルビ153、ランポス1071。これは数からしてどれも小型だろう」

バージルの言った通り、その単語のいくつかにはダンテにも記憶があります。
ただ小型といえどもそれはあくまでこちらの世界の基準であり
虫はどれも虫にあるまじき大きさで、ランポスという小型の恐竜みたいなのだって
人よりちょっと大きいくらいはあったはずです。
ですが問題はその下に記載してあった狩猟数の比較的少ない所でした。

「そしてここからは大型なのかサイズが記録してある。
 お前の手こずっていたダイミョウザザミとかいう甲殻類は8体狩猟済み
 最も数を上げているリオレイアという種は最大サイズ1941.8p、それを45体。
 サイズで最も大きなものはガノトトスという種で最大2847.7p、これを12体だそうだ」

つまりあの暢気なハンターさん、約20mから30mある生き物を
たった1人で50体以上狩りたくっている計算になります。

それにガノトトスという生き物には兄もちょっとだけ覚えがあり
それがどれだけ大きくて無茶な生き物なのかもおぼろげに知っていました。
そしてそれがどんな生き物たちなのかを知らないダンテでも
そのデータを聞いただけで性格の合わない兄とほぼ同じ感想に行きつきました。

「・・なぁ、あの大雑把でワイルドなハンターさん、見るたび知るたび思うんだが
 実は人間じゃなくて人型した肉食動物かなにか
 もしくは人間の型したまったく別の生命体か何かじゃないのか?」

・ ・ ・

「それにしても無駄に広い家だな。1人住まいでここまで広くする意味がわからん」
「・・・現実逃避してないでちょっとくらい否定してやれよ」

しかし兄はふっと絶望的な目をしてこう返してきました。

「・・・してはみたいが・・・してやれる要素がどこにも見当たらない」

そう言われた弟はしばらく兄と同じような顔をしていましたが
ここへ来てすぐやったのと同じように家の中を見回し始めました。

「・・確かに1人住まいにしては大きいな。
 ちょっとしたパーティーが余裕でできそうなほどの広さだ」

そうして兄弟そろって現実逃避を始めたころ
問題の人外ハンターさんが鍵どころか扉もない入り口から帰ってきました。

「おーい!鍛冶屋のジジイ来てたから依頼もらってきたー!
 仕度して見物して行こうぜよーそろー!」 

大声で言ってる意味も内容もまったくわかりませんが
その千鳥足加減と酒臭さを見れば鍛冶屋に行ったついでに
一杯ひっかけてきたのだけはわかります。

なんだかもう呆れるのにも慣れてきたダンテはため息はつかずに肩だけすくめました。

「・・何だアンタ変わってるな。鍛冶屋に行って酔えるクチなのか?」
「違うってーの。鍛冶屋の帰りに酒場にいる情報屋のおねいさんと飲み比べしてたワケよ。
 あのおねいさん情報屋のくせにそれで勝たないと教えてくんなくってさー
 まぁ負けちゃったからみそ汁で顔洗って出なおすとして・・お〜!ハムただいま〜」

やっぱりよくわからない事を言って突然ハンターさんがなで始めたのは
さっきから家の中をウロウロしていたオムツをつけたブタでした。
確かにその上にはHamuという表示がついて回っていて
2人とも不思議には思っていたのですが・・・。

「さっきから気にはなっていたのだが・・それはそのブタの名前なのか?」
「うんそう。ホントはプーギーとか言うらしんだけど
 なんか飼う時にいきなり名前付けろって言われちゃって
 考えるの面倒だから第一印象で決めちゃった」
「・・あんまりでそのまま過ぎていっそ清々しいくらいだな」
「あははは。でもハムっていっても食べる気ないからね。
 こんな小さいの食べたって食べごたえないし腹ふくれないでしょ?」
「「・・・・」」

大きな大きな家の中、ハムという名前のついたブタの声だけが響きます。
2人ともこのハンターさんとそこそこ付き合いはあるはずなのですが
2人とも普段ツッコまれる側なためか、こういった時リアクションに困ります。

「えーと、そんでハムなのはともかく何の話してたっけ?」
「・・確か鍛冶屋のジジイで依頼がどうとかって話だろ?」
「その前に少し酔いをさませ。その様子では話が飛び回って長くなりそうだ」
「あ、そうか。じゃあそうする〜」

言うなり本来レイダという名前をもつハンターさんは
千鳥足で家のど真ん中にあった大きなベッドに行き
着ていた鎧もそのままにどすんとあお向けに転がりました。
相変わらずツッコミ所は満載でしたが兄弟はもう慣れてきたので何も言いません。
しかも鼻ちょうちんを上げて寝ていたかと思ったら
10秒もしないうちに起き上がってうーんとのびを始めるのですから
もう何か指摘する方が間違っているような錯覚さえ起こります。

「・・ぐあー・・よく寝た。んーと、それで何を話したっけ」
「要点だけ引き抜いて聞くならば、依頼をもらったという所が妥当だ」
「あぁそうそう。えっと、依頼ってのは鍛冶屋にたまに来る伝説のジジイ・・
 まぁそのへんはどうでもいいや。本題はそのジジイがもってくる依頼ね」

レイダの話は大雑把ですが要点はわかりやすいのでダンテには助かります。
ですがたまに大事な所が抜けていたりするので気は抜けません。
弟は要点だけ、兄はその影の隠れた重要点に注意しながら話を聞くと
その酔った勢いで持ってきたみたいな依頼というのは
その鍛冶屋のジジイだけが持ってくるという
ラオシャンロン撃退という依頼でした。

ラオシャンロンというのはこの世界にいる古龍種という生き物で
何種類かいる龍の中では飛び抜けて大きな龍になるのだそうです。
しかし大きい龍と言ってもそれは好んで人や街を襲ったりせず
ただある区間をゆっくりと移動するだけのおとなしい龍なのだとか。
ですがおとなしくてもそのサイズたるや滅多やたらと大きくて
その大きさから人も人里もまったく恐れないため
大きな身体であちこち移動してはそれだけで周辺に被害を出してしまうという
この世界ではちょっと変わった生き物なのだそうです。

「で、それを人里に近づく前におっぱらえって依頼をまれに来るジジイが持ってくるの。
 そう難しい依頼じゃないし報酬がバカ高いってワケじゃないけど
 あれから取れる素材は貴重だし、ジジイもいつもいるわけじゃないから丁度よくてさ」

などと大きな宝箱型の物入れからいろんな物を引っ張り出しながら
レイダは相変わらず大雑把に説明してくれました。

その話からしてそれはそう凶暴な相手でも厄介な相手でもなさそうなのですが
それより前にダンテにはまず聞いておかなければならない事がありました。

「・・で、聞くがその依頼ってのは
 オレ達が行く事をもう事前に決定して受けたのか?」
「うん。アレは報酬とか見返りがどうこう言う前に
 ここに来たのなら絶対見ておいた方がいいと思って」

強引なのか横暴なのか親切なのかわかりませんが
そう言われると弟はハンターとして、兄は知識を求める者としての興味がわきます。

「・・それはそれほどに興味深い生き物なのか?」
「そっちの生き物の基準がどんなのかは知らないけど
 アレはあんまりお目にかかれないし、あたしの知ってる限りで最大級の生き物だよ」
「前に見た巨大ヤドカリよりもか?」
「あんなの一発で潰されちゃうよ」
「あれは何かの頭蓋をヤドにしていたようだが、あの元よりも?」
「もっともっと」

だとすると頭蓋骨だけでも3m以上ある相当な大物です。
2人は顔を見合わせると似たような顔をして小さく笑いました。

「物理的な土産も重要だが
 土産話ってのはいくら大きくてもかさばらないのが利点だな」
「お、じゃあ行くのね」
「などと聞く前からすでに準備万端だろう」
「あはは。まぁそうなんだけどね」

などと笑った脳天気なハンターさんは
用意した荷物をそれぞれに放り、自分も荷物を背負いました。

けれど行くか行かないか聞かれていたところで
バージルの答えは元から1つしかありません。

だってこの人の行く先には大抵ろくな事がないのですが
いいことも悪いことも含めて結構楽しいのですから。

けれどバージルはふと思い出したような顔をし
レイダを無言ですみの方へ引っぱっていってこそっと聞きました。

「・・ところでそこは船で行く場所か?」
「いや、陸地で山間部にある砦だからそれはない。
 その砦を相手に突破される前にお帰りいただくのが今回のお仕事だから」
「・・わかった」

それをこっそり聞いていたダンテも同じように反対側へ引っぱっていって聞きました。

「・・ってことは入り組んだ道とかがあるのか?」
「ほぼ全エリア砦の一室につながってるからそう迷わないと思う。
 ただ各エリアに行く通路は密集してるからそこは気を付けてね」
「・・よし」

各自まず心配することが船酔いと迷子なんて情けない話ですが
そこと無意味な兄弟ゲンカをのぞけばかなり頼りになる人達なので
元から細かい事を気にしないハンターさんはあまり気にしませんでした。

「よっし。そんじゃラオを追っ払いに行きますか。
 ぱっと作戦名をつけるとしたら『無理』ってとこかな」
「?オイ待て。やる前からもう無理なのか?」
「や、無理な話じゃないんだけどまず第一印象がそんなヤツで・・
 あ!そうだ!部位破壊したいから弓装備していくんだった!」
「だから目の前で着替えるなってのに・・!」

などと目の前で着込んでいた鎧をガチャガチャ交換しだした大雑把さんをよそに
兄は冷静に弟の頭を掴んで自分ごとぐるりと向きを変えました。
ぐきとか鈍い音がしましたが後から痛えとか文句が聞こえてきたので大丈夫でしょう。

ただその時ちらと聞いた『無理』という単語に
兄はこの時ちょっと言葉では言い表せない妙な不安を覚えていました。




その不安、次でドンぴしゃです。






2.その無理と無茶の配合

出かける前にネコの作った体力の上がるというごはんを食べ
村から歩くこと半日くらい(ロード時間としては8秒くらい)。
指定されたその場所は天然の谷と崖を利用した砦になっていました。
しかし砦と言っても谷間の所々にバリケードを設置し
崖を掘って中に簡単な通路と小部屋が作ってあるくらいで
そこはあまり本格的な砦というわけではありません。

聞けばそう頑丈なものを作っても大体は無駄になるし
相手の行動が不定期なので必要最低限の備えしかしていないのだそうです。

そしてその砦の最初のエリア、テラス状に作られた場所から
3人はそれを見ることができました。

ズシーン  ズシーン

それは大きな谷底をゆっくりと這うように四本の足で歩いてきます。

ズシーーン  ズシーーン

だんだんと近づいてくるそれは谷底いっぱいの大きさで
動くたび赤黒い岩のような甲殻がこすれてギリゴリという音を立て
一歩歩くたびに出る地鳴りのような音も
近づくにつれて耳が痛くなるほどに大きくなってきます。

ズシーーーン  ズシーーーン

そしてそれが3人のいる見張り台の前にさしかかりました。
それはこちらの姿が丸見えなはずなのにまったく見向きもせず
何を思ったのか急に足を止めて長い首をぐいんと回し
なんとその反動で前足を持ち上げ、大きな後足で立ち上がりました。

ただでさえ巨大で歩くだけで地面がゆれるそれは、立ち上がるとさらに大きく
そこそこ高さのあるその場所からでも頭が見えません。

どんなくらいかと言われると
弓装備のハンターさんと比べた場合大体このくらいです。





立った状態で双子の弟と比較するとこんな感じです。





リベリオンがつまようじのようです。

これが古龍種ラオシャンロン。レイダ作通称『無理』。
確かに無理です。そのままです。
というかこんなビル同然なのをどうにかしようと思う人は普通いません。

そしてその無理な大きさをもつ巨大な龍は
立ち上がってぐるると喉を震わせていましたが
目の前に鳥でもいたのか、いきなり大きな口でがぶりと何かに食らいつくような動作をし
ゴばんと空気がそこだけもぎ取られたような凄い音をさせました。

そしてそれはまたずしんと前足を地面に降ろすと
何事もなかったかのようにゆっくり地響きを立てて歩き始めました。

同じ顔をした銀の髪の兄弟達は、一言も口をきかずそれを黙って見ていました。
そしてその間で持ってきた食料をがつがつやっていたハンターさんは
いつも通りな口調でこう言いました。

「・・さてと。ここからじゃ手が届かないから次のエリアから戦闘開始ね。
 ここからでも射れない事はないけど、あんまり遠いと矢が通らないし」

ガッッ

そう言って踵を返そうとした肩を両方にいた兄弟がほぼ同時に掴みました。
いつも仲は悪いけれどこういう時のシンクロ率はバッチリです。

「?なに?また二人して干した魚みたいな怖い顔して」
「・・・アンタの説明不足には・・いやこれは説明がどうのって次元じゃないな。
 まず1つだけ簡単に聞くぞ。・・・正気か?
「?もう酔ってないし出かけにも飲んでもないし
 依頼されてるラオシャンロンってのはあれしかいないんだけど」

規則的な振動で地面がビリビリ揺れる中
しつこい頭痛をがまんしているような顔をしたダンテは
哀愁と絶望とうっかり感の入り交じったヘンな作り笑いをして
眉間を押さえつつ肩をすくめて片手をヒラヒラするという複雑なリアクションをしました。

「・・・OK、わかった。わかったからまず落ち着こうか(オレが)。
 確かに大きいとは聞いてた、が、オレの目もアンタの目も正常で
 妙なクスリでもキメてない目でちゃんと見てればアレは無理だろ

と、赤黒くて動く山をびしと指したダンテの言う通り、あちらとこちらを例えるならば
普通の人間と小さめのハムスターくらいの差があります。
しかし荷物の中から焼いた肉を出して
両方にハイと渡してくるレイダの様子はいたっていつも通りでした。

「うん。確かにそう思うよね。そういう愛称(勝手に)付けてるし。
 でも上手く立ち回って根気よく相手してればちゃんと追い払える相手だから」
「・・・ちょっと待て、その口ぶりから推測して
 お前はまさかあの巨大生物を撃退した事があるのか?」

その信じられないようなバージルの問いかけに
レイダは実にあっさりした口調で言いました。

「何回かあるよ。でもその時は弓じゃなくて
 アレ用になんとなく作った対龍用の大剣でしつこく殴りたくってだけど」

・ ・ ・ ・

「「1人で?」」
「1人だよ?」

ズシーーン ズシーーン

微妙にかみ合わない会話をする3人をよそに
山のような生き物はゆっくりと地響きを立てて進んでいきます。

なんというかこの世界の人間というのは本当にバ・・もとい
たくましいと言うか常識はずれというか物怖じしないというか
とにかくいろんな意味で人間離れしているようです。

そう言われたバージルはしばらく山のような生き物を怖い顔でにらんでいましたが
ふいにレイダの方を向き、重苦しい声で聞きました。

「・・実例はあるのだな?」
「うん。さすがに倒すまではいかなかったけどね。
 でも1人で出来たのが3人で無理ってことはないと思う」

兄は少し考えて次に質問を変えました。

「ではさらに聞くが、3人で行動する場合の最重要注意点を先に述べろ」
「んーと、あたしはある程度戦い慣れてるからそうはくらわないけど
 戦い慣れてない人は2撃で死ねる
「・・・アンタ・・・確か最初に難しくないとか言ってなかったか?」

悪魔も裸足で逃げ出しそうな形相をして拳を握る弟にも
相変わらずなハンターさんは動じません。

「一撃離脱を心がけてれば大丈夫だって。
 それにそのために硬化薬Gと回復剤ありったけ荷物につめたんだから」
「その硬化剤いう物を飲んだ場合で生存率はどれほど上がる」
「んー・・でもよく考えてみればあんた達
 鎧とかまったく着てないからやっぱり三撃目はダメと思う」
「「・・・・・」」

普段折り合いの悪い兄弟はほぼ同時に
ブルドーザーに木刀一丁で立ち向かうコメディアンな気分になりました。

・・いえ、本来あんなのをどうにかしようと思う事自体が間違っているのですが
自分達の常識はあまりこちらの常識として通用しないのが悲しいところです。

いつもより数段渋い顔をしていた兄はしばらく考え込んだ後
背負っていた荷物から硬化剤Gと言われていた物を出して言いました。

「・・いいだろう。攻撃の要領と甲殻の浅い部分を教えろ」
「オイ!そこのバカ兄貴・・!」
「バカはお前だバカダンテ。先にも聞いただろう。
 1人で可能だった事が3人で不可能なはずが・・
 ・・・なんだその疲れ切ったような目は」
「・・いや、相変わらずアンタのキテレツな頭の中身は
 さっぱり理解できないと思っただけだ」
「人がいる部屋の真横で1人ギターで大乱闘していたお前に言われたくない」
「!?知ってた上に覚えてるのか!?」
「他に音がない状態であれだけ派手に騒がれれば嫌でもわかる」

それは昔とある塔であったミッション13で
武闘神像をどうこうするとかいう話なのですが
内容がさっぱりなハンターさんにはいつも通りな口喧嘩にしか聞こえません。

「・・えっと、それで弟の方はどうするの?
 無理だと思うならここで残ってくれてもかまわないけど」

その途端、地味にケンカをしようとしていた弟の動きがピタリと止まりました。

「・・バカ言うな。あのくらいのサイズとやりあうのは初めてじゃない。
 ・・ただ存在感が異常で銃も効きそうにないから少し面倒に見えただけだ」
「己の力量が必要ない飛び道具に頼るからそんな事になるのだ。
 とは言え、お前の近接攻撃はどうも無駄な動作が多い傾向があるな。
 たとえば門番の犬を倒した時に手に入れ、妙なはしゃぎ方をしていた三氷棍などが・・」
「だから何でそんな話を知ってる上に今頃・・!」

と、その時今まで成り行きをながめていたレイダが突然矢筒から矢を引き抜き
あざやかに一回転させるなりかなりの速度で両方に突き付けました。

「黙れ。いい加減に硬化剤飲んで肉食え」

その顔は笑っていましたが声と狙いは完全にマジです。

兄弟はそれぞれ何か言いかけた口もそのままに固まっていましたが
動ける範囲で降参のポーズをすると矢はあっさり下ろされました。

「はいよし。さて、先に言っとくけど今回時間との勝負だから
 途中で兄弟ゲンカしてるヒマはないと思ってね。
 他の注意点は追々話すからとにかく次のエリアへ行こうか」

そう言ってぐらぐら規則的に揺れている床を踏んで
あの巨大生物を1人でどうにかしたというハンターさんは砦の中に入っていきます。

兄弟はちょっと気まずそうに顔を見合わせると
同時にため息をついてその後に続きました。

「・・仕方ねぇ。そりかかったスネ毛ってヤツか」
乗りかかった船だ

その船がちゃんとした船なのかドロ船なのかはまだ分かりませんが
あんな巨大なのに立ち向かえる頑丈で強力な船が果たしてあるのかどうか
まだ今のところ疑問な兄弟でした。






図としてはちょっとわかりにくかったかなと思うけど
アレをちゃんと絵で表現するのは至難の業だよ。
あと普段のんきなハンターさんも一応ハンターなので
狩りの時はちょっと短気です。

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