ボヘボヘボヘ・・・キキーー!!ドバン!!
明らかに異常のあるエンジン音が近づいて来たかと思うと
かなり近くなった所で強烈な急ブレーキを踏む音がする。
それは店のすぐ前で止まったしドアを乱暴に閉めた音もしたので
おそらくここに用がある客なのだろう。
などと丁度入り口近くを歩いていたサマエルがのんびり考えていると
半分残っていたドアを蹴り開けて壊すくらいの勢いで
ちょっとずんぐりした男が怒鳴り込んできた。
「オイコラぁ!!ダ
ン・・!!
」
だがその一見良く言って調子と景気のよさそうな
悪く言ってメタボリック予備軍な身なりをした男は
なんとなく予想がついていた名前を半分だけ怒鳴り
ちょうど目の前にいたサマエルを見て固まった。
見慣れていたり元が蛇だということを知っていれば別だろうが
何しろ人型のサマエルはただそこに黙って立っているだけでも
その場の空気と世界がまるで違うように見えてしまう美人さんだ。
そんな人が怒鳴り込んだ先にいれば普通は固まるだろうし
おまけにその女、実は全長十数メートルある真っ赤な蛇で
銃器のたぐいを全部跳ね返してしまうとなると・・
・・それはともかく、男が固まっていると怒鳴り声を聞きつけたのか
朝飯のおにぎりを片手に、しかもご飯つぶを口にひっつけたまま
ラフな格好のダンテが出てきて戸口で固まっていた男に声をかけた。
「よう、早いなエンツォ。報酬の支払いもこれくらい早ければ
もう少し気前よく仕事を受けてやれるんだが」
エンツォと呼ばれたその男はその言葉でようやく呪縛が解けたのか
ギギギと音が出そうなほどのぎこちなさで
ダンテとサマエルをゆっくり交互に見たか思うと
親指でサマエルを指しつつげんなりしたように言った。
「・・・オマエ・・・また新しい女連れ込んだのか?
しかも今度はまたクールでエキゾチックな・・」
「あぁ、悪いが違う。そいつは今来てる客の連れだ」
「客う!?オマエまさかオレ様の仲介もなしに仕事請け負って!!」
「それも違う。客と言っても仕事がらみじゃない客だ。
・・まぁ話せばかなり長くなる上にあまりのややこしさに混乱するだろうから
今日の所はさっさと帰った方がオマエの・・」
キキー! バタン
と、やんわり追い返そうとダンテにしては珍しい気遣いをした直後
間の悪い事にちょうどレンタカーで出かけていた買い出し組が戻ってきた。
「主!只今戻ったぞ!」
「・・まったく、まともな買い物1つに車でどれほど時間が・・ん?」
しかもさらに悪い事に入ってきたのはトールとミカエルで
その手にはいろんな食材の入った袋や資材がごっそりもたれているものの
からまれ防止と威嚇用につけたサングラスおかげで
それは一見して強奪帰りのギャングか山賊だ。
普通ならそこでビビられて逃げられるのがオチだが
しかしそのうちのミカエルだけはエンツォと少し面識があったため
再度固まられはしたものの悲鳴を上げて逃走される事だけはなかった。
「お前は・・そうだ、いつかの酒場にいた情報屋だな」
「・・へ?・・あッ!あんときの旦那じゃないですか?!
なんで旦那みたいなお方がこんな小汚い所に!?」
どうやらエンツォはミカエルを何かの組織の幹部だと思っているらしく
ダンテが小汚いと言われてムッとするのもかまわず
いきなり商売人の低姿勢に切り替わる。
「少々事情があってな。しばらくここに滞在する事になった。
あの時の情報はかなり有益に使わせてもらい
主も我らも満足のいく結果を出せた。礼を言う」
「いやいやいや!そんな滅相もない!
そんな情報でよろしければまたごひいきにしてやって下さい」
「うむ頼も・・」
「こらダンテさん!食べながらそんな格好で歩いてなおかつ接客までするな!
どれか1つにしろよ行儀悪い!」
などとやっていると今度は奥から純矢と
ダンテの分だろう皿をもったバージルが出てきてしまい
営業スマイルだったエンツォが速やかにフリーズした。
だって奥から普通に出てきたのは
ここいらじゃ滅多に見かけない微妙な年齢の東洋人だし
しかもその後ろにいたのは多少の雰囲気やパーツは違うものの
目の前にいるダンテとほとんど同じ顔をした男だし。
しかもよせばいいのにそこでミカエルがいらない気遣いを入れてくれる。
「あぁ、丁度よかった紹介しておこう。これが以前話していた私の主人だ」
「・・・・へ?」
「歳はまだ若いが私含めこの場にいる全員の元締めだ。失礼のないよう・・」
「ぅわ!こらミカ!普通の人にいきなりそんな説明・・!」
あわてて止めようとしたがすでに遅し。
エンツォの視線がさっきから困惑気味に大量の荷物を持ち突っ立っている大男
ただ静かに事の成り行きを静観している美女
そしてミカエルとダンテ、それにそっくりなバージルの間を順番に移動して
最後に純矢にたどり着き・・
「・・・・え〜〜・・・それでお坊っちゃまは
あっしにいかがなご用命をくだされるのでおりませうでしょうか」
純矢の事をどこかの大富豪の息子と勘違いし
ついでに頭の整理が追いつかずに混乱したのか
まったく噛みもせず変なへりくだり方をした。
ダンテがため息を1つついて頭をかきむしる。
「・・あ〜・・エンツォ、さっきから色々と目新しい物見て混乱してるんだろうが
今この状況を説明するにはちょっと手間がかかるんだ。おい少年」
「ん?」
「オレはちょっと外でこいつに事情の説明をしてくるから
後は適当にやっててくれ。ただし鍵のかけてある部屋には手を出すなよ」
言うなりダンテはそこら辺にあったコートを掴み
エンツォを乗ってきた車に軽やかに詰め込むと
そのまま車で走り去ってしまった。
・ ・ ・ ・ ・
「・・・え〜・・・もしかして逃げた?」
「逃げたな」
「逃げました」
「相変わらず手際のいい」
「あんの男は!!」
みんなが冷静に肯定してくれ、最後になってようやくトールが怒り出す。
・・あぁ、そういやクラスに1人はいるよな。
掃除の時間になると凄くうまいこと言って姿くらますヤツ。
などと今ごろ思っても仕方ないので
純矢は頭をかきつつ考えを切り換える事にした。
「・・ま、いないのを怒っても仕方ないか。
適当にやってろって言ったんだし普通の人巻き込んだら危ないし」
「・・あれ?高槻、悪魔狩りの彼は?」
そしてその騒ぎに気付いたのか、奥からフトミミとケルベロス
あと冷蔵庫に残っていたベーコンをだらしなくくわえたマカミがやって来る。
「いやそれが・・たった今逃げられまして・・」
「ナンダト!?アノばかメ!主ニコンナごみ溜メヲ押シツケテドコヘ逃ゲタ!」
「・・ツッテモココイラザット見テキタ感ジ
ドコモ大シテ変ワンネェヨウニ見エルケドナァ」
「ソウ言ウ問題デハナイ!!」
ガウ!と吠えたりもぐもぐ物をのんびり食べている対照的な犬たちを見ながら
純矢はふとこの場にまだいるべき人員が足りないのに気付く。
「?そう言えばマカミ、ハーロットはまだ帰ってないのか?」
「インヤ、一端帰ッテ幽鬼ヲ置イテッタケドマタ出カケタ。
ナンデモ東京以上ニ遊ビ甲斐ガアッテ忙シインダトヨ」
「・・・・あっそ」
その言い回しだけで何をやってるのかは想像できるが
あんまり詳しく追求する気にもなれないし
いても今からする事に到底役立つとは思えないので黙っておく。
「・・でも勝手にやらせてもらおうと思ってたけど
ヘタに片づけたら危なそうな物とかあるかも知れないな」
「デハ我ガ追ッテ連レ戻ソウ。マダソウ遠クヘハ行ッテイマイ」
「じゃあ私も行こう。あとマカミも来なさい」
エプロンをたたんで簡単な身支度をするフトミミに
今まで他人事な顔をしていたマカミが不満げな声を上げた。
「エー?ナンデダヨ。ソイツガイリャオレノ鼻ハイラネェダロ」
「君は残しておくと高槻の邪魔をするか
何か変な物をいじって爆発でもさせそうだからね」
「チェ、カンノイイヤツ」
否定しなかったということは本当にそんな事をするつもりだったらしい。
さすがにダンテと気の合う不良犬だ。
「ならば俺も行こう。奴の行きそうな場所は多少の見当がつく」
そう言って最後に手を挙げたのはバージルだ。
確かに彼なら双子なので多少の居場所くらい特定できるだろうが
何せ今までのことが今までなので少し不安なのも確かだ。
しかしそんな純矢の不安を感じ取ったのかバージルは少し笑って
「心配ない。こんな事は昔何度も経験した。
それに多少不本意だがこういった役目は本来俺が受けるべきだろう」
そう言ってちゃんとハンガーにかけてあった上着と
立てかけてあった閻魔刀を手に取る。
まだ完全に信用できないかも知れないが
フトミミもケルベロスも一緒なのだし、時には信じてやる事も大事だと考え
純矢は少し迷ってから首を縦に振った。
「・・うん、じゃあ・・たのむ」
「では行ってくる」
ざっと振り返った白銀が入り口からもれていた光りに反射する。
その後ろ姿はあまり今から弟を引っ捕らえに行くようには見えなかったが
もうバージルもダンテとのケンカにも慣れた頃だろうし
何より自分の役目だと言ったのだから止める必要はないだろう。
「フトミミ、車は使うか?」
「借りれるなら使いたいけど買い物の方は?」
「大方は済ませてきた。使え」
そう言って最後にミカエルがフトミミに向かって車のキーを投げてよこす。
相手も車で逃げたのだから確かに車は必要だろう。
「だが少々ボロとは言えレンタルだ。扱いは慎重にな」
「わかってるよ。それじゃ高槻、行ってくる」
「ナァ、車ッテアノ鉄ノ箱ダロ?アンナノニ入ルノカ?」
「浮ケル分際デ文句ヲイウナ」
そして犬2匹を連れた散歩請負人みたいなフトミミが
まだ修復の終わっていない玄関を出て周囲が静かになる。
言い換えるとトラブルメーカーが出払って静かになったとも言うが
ともかく純矢は気を取り直して家の中に向き直った。
「・・さてと、それじゃあ家主の事はフトミミさん達にまかせて
残った俺達は家主がいなくても大丈夫な範囲での掃除をしないとな。
えー・・まず今いるのがミカとサマエルとトールと・・あとピッチか」
「ピシャーチャも使役されるおつもりですか?」
「うん、あぁ見えてピッチも器用だからな。
えっと、トールはまず大破させた所の修理で
ミカはその手伝いと他にひどそうな所があればそっちの片づけ。
サマエルはピッチと一緒にキッチンを頼む」
「うむ承知」
「主はどうするつもりだ?」
「俺はちょっと家の中を探検に・・ってのは冗談で
ダンテさんの言ってた鍵のかかった部屋と
手を出したらマズそうな部屋とかを探してくる」
「1人でか?」
「1人でだけど?」
その場にいた全員が一斉に顔を見合わせる。
それは不幸にまみれたこの少年の下にいる仲魔としてのカンで
1人にすると絶対よろしくないと一発で感じたからだ。
「・・では私が同行しよう。トール、後は頼めるな」
「うむ、心得た」
「え?いいよ別に。ミカって日曜大工とか好きなんだろ?」
「だがこの胡散臭い家屋を主1人では歩かせられん」
「家の中だってのにそんな大げさな・・」
「いや主、ミカエル殿の判断は正しい。
ここは東京ではない上にあの悪魔狩りの住む土地であり場所なのだ。
気を許して足元をすくわれるよりも多少なりとも備えはしておくべきだ」
「私も同意見です。こちらに滞在してからまだ危険な目にあっていないとは言え
ここは悪魔というものと密接に関係する土地なのですから
あまり単身で行動するのはお控えになった方が賢明かと」
などと家の中を見てくると言っただけなのに
まるで未開の密林で迷子決定な事を想定してる連中に純矢は顔をしかめた。
「・・なぁ・・なんか俺ダンテさん並に信用失ってないか?」
「私どもを差し置いてあれだけの事をした結果ですので」
「・・・・・」
静かながらに非難の意味がこもった台詞に純矢は閉口する。
そう言えば兄弟ゲンカの仲裁に入って死にかけた時
ストックにいた仲魔達はあの時も今も皆何も言わないが
やはり黙ってはいてもちゃんと根に持っているらしい。
こういう時なんとかしてくれそうなブラックライダーや
場を和ませてくれそうなフレスベルグがいないのは純矢的にちょっと痛い。
「・・じゃあ俺はミカと一緒だな。あとピッチは・・・あ」
どこにいるのかと思っていると、一体いつからそこで見ていたのか
奥へ行く扉のはじから菱形の目が1つだけ遠慮がちにのぞいている。
それはどうやら来客に見つかるとまずいと思っているのと
みんなで色々やっているのを邪魔したら悪いと思っているらしい。
本来なら意地でも目に入ってしまうような目立つ姿をしているのに
そんな姿で遠慮がちにされると何だかちょっと可愛そうに見えてくる。
「・・なぁピッチ、悪いことしてるわけじゃないんだから
いるときはいるってちゃんと自己主張しような」
でないとこんな人物共々ゴチャゴチャしたこの状況下じゃ
ゴミと間違えられて一緒に捨てられてしまう。
そう思いつつ純矢はその石幽鬼を拾い上げ
トールに玄関の修理を頼んでからキッチンへ向かった。
「壊れそうな物とかはもう片づけてあるんだよな」
「はい、元々そう物のある場所ではありませんでしたので」
「よし、じゃあ窓と外に出られそうなスキマを全部ふさごうか。
ミカ、そっちの窓と扉の下ふさいでくれ」
「了解だ」
「・・ところでジュンヤ様、一体何をされるおつもりですか?」
「あれ、サマエルは知らなかったのか?
ピッチはアレを捕まえて食べるのがすごい上手いんだぞ」
「?」
アレと言われても分からず不思議そうな顔をするサマエルに
窓を閉めていたミカエルが説明してくれた。
「頭文字がGで始まる茶色の生き物だ。
管理をきちんとしている場所ではあまり見かけないが
この有様ではかなり生息しているだろうからな」
「・・・・・あぁ」
サマエルはちょっと考えてようやくぽんと1つ手を打った。
そう言えば朝飯を作っている最中、やたらフトミミが唐突に古びた新聞を
目にも見えない勢いで振り回していると思ったら。
「・・よし、こんなもんかな。それじゃピッチ頼む。
終わったらドアをノックしてくれればいいから」
そう言って目の1つ出ていた石を部屋の真ん中の床に下ろすと
それはうなずくようにことんと身をゆすってから
ココココと牙を使って器用に移動を始める。
それを見届けてから全員部屋を出て、ドアを閉めると・・
ガタン ガッガッガッ ゴツン ビビビ ゴアァー!
中で何やら激しい音とか何かの羽音とか
ちょっと怖い奇声とかが断続的に聞こえてくる。
中で何をやってるのかちょっと気になるが
終わるとちょっと散らかるものの衛生的にとても綺麗になるので
あまり気にしないでおく。
「特許を取れないのが少々残念な特技ではあるな」
「・・いやでも子供とかが間違えて作業中のところを見ちゃうと
まず確実にトラウマになっちゃうだろ」
「やっている事は昆虫採集とあまり変わらないように思えるのですが・・」
「・・お前は少し今化けている状況を考えて物を言え」
以前会社に迷い込んできたスズメバチを
顔色も変えず素手で捕殺したサマエルに
ミカエルが渋い顔でツッコミを入れた。
そうして後でホウ酸団子を作る計画を立てキッチンをサマエルにまかせると
純矢とミカエルはダンテ宅を言われた通り、勝手にざっと歩き回ってみた。
日本のせまくて部屋の多い作りとは違い
外国の間取りというのはそう複雑ではないらしい。
それに元々1人で住んでいるだけあって部屋はどれも使われておらず
部屋というよりは物置同然になっている場所が多かった。
「・・使わない部屋は掃除しないってのも
物置として使う合理性もわからなくはないんだけど・・
しっかし何でこういう部屋に鍵をかけないんだよあの人は」
そしていくつかある部屋を見回っているうちに
いつかどこかにあるだろうと思っていたそれはあっさり見つかった。
ドアを開けて入るなり目に入ってきたロケットランチャー
カートリッジがついたままで即座に撃てるサブマシンガン
素人目にも人間を撃つ物じゃないとわかる巨大ライフルなどなど
そこは鉄臭さと火薬臭のほどよく入り交じった武器庫だった。
でも鍵もなにもかけてなかったので
武器庫というよりはただの銃器置き場と言った方が正しいかも知れないが。
「こんな場所に来る空き巣もいないのか
それともここへ辿り着く事さえできなかったのか・・」
まぁどっちだろうとあまり自分達には関係のない話だと思いつつ
ミカエルはランチャーの砲弾とか手投げ弾みたいな物がゴロゴロして
なおかつ白くなるほどホコリがつもっていた箱から純矢をさりげなく遠ざけた。
「どちらにせよここは手出しできんな。
後で皆に入るなと注意してマカミに厳重に注意するくらいしかできん」
「・・そうだな。さすがにこれを整理して掃除とかは・・あれ?」
物騒なのでなるべくその辺にあるものに触らないようにしていた純矢の視界で
何かがちらりと一瞬だけ動く。
ネズミか何かと思って目をこらすと
部屋の奥に暗くて気付かなかったが小さめの扉があるのに気がついた。
「あ、ミカちょっと待った。あそこにもう一部屋ある」
「何?」
袖を引かれて踏みとどまったミカエルがそこへ行って確認すると
あまり目立たない隠し部屋みたいな扉を1つ見つける事ができた。
「・・奥にもう一部屋か。物好きな」
「鍵は?」
「かかっていないようだ」
ドアには鍵をかける金具はあるものの鍵自体がなく
取っ手に手をかけると少しきしんだ音を立ててそれは開いた。
少し見えた中は窓がないのかほぼ真っ暗で
ちょっと狭そうだが明かりがあれば入れそうだ。
「・・変な所にあるんだな。弾薬庫とかかな」
「あの男の事だ、百歩ゆずってそれか酒の隠し場所か
悪くて事務所の壁に突き立ててあった物のさらにヒドイ・・」
「うわー!よせよせよせ!イヤな想像させるな!」
それはそれで結構ありそうなので
純矢はミカエルの背中をびたんと叩いてから腕にしがみつく。
だがそのまま逃げもせずがっちりしがみついたままなので
怖くても奥までついてくるつもりらしい。
「・・主、気が進まないのならここで待っていた方が・・」
「・・いや、言い出したのは俺なんだし
こういうのはちゃんと自分の目で見とかないと気が済まない。
・・・あんまり・・いや、もの凄くイヤなんだけど・・」
「・・・・」
「優しく笑うな!!」
嘘が苦手なためか顔にそのまま心が出たらしく
ミカエルは激怒した純矢に音速で頬をひっ掴まれて伸ばされた。
それはハタから見れば仲の良い親子か
腐女子目に見ればいちゃこらしてるバカ2人に見えただろう。
「・・とにかく行こう。言っとくけど急に驚かすのとかは絶対なしだからな」
「悪魔狩りではあるまいし、そんなことはせん」
「あと暗いんだからあんまり速く歩くなよ。
それといきなり置いていくのもダメだからな。
それからいきなり大きい物音を立てるのも・・」
「注文が多いぞ主」
「それと人が怖がってんのに嬉しそうな声出すのも厳禁!!」
などと緊張感がありそうでまったくないやり取りをしつつ
2つの足音は長い間誰も入っていなかった小さな部屋へと入っていく。
だが2人がその扉をくぐった直後
扉の影から一匹の小さなコウモリが影からにじみ出るように這いだし
隠し持っていた古い鍵を放り出して再び影の中へと潜り込んだ。
それは今回のあらゆる騒動の発端になる重要な出来事だったのだが
困った事にその現場を目撃した者は誰1人としていなかった。
2へ