「え?ドリル・・・ですか?」

ヴァルゼルドのメンテに立ち会ったアティは
聞き慣れない言葉に目を大きくした。

それは確か機械兵士が接近戦で使う武器の総称だったはずだが
ヴァルゼルドは大体の場合銃を使用しているので実物は見たことがない。

「そうよ。銃をなんらかの事態で破損、もしくは紛失した場合の緊急時にそなえて
 スペアに装備されてあったのよ。知らなかった?」
「・・・はい。全然知りませんでした」

それを聞いて今度はアルディラが怪訝そうに眉をひそめた。

「・・・変ね。緊急用といっても戦況や敵のタイプで使い分けするように
 プログラムは組まれてるはずなんだけど」

言いながらアルディラはモニターを見ながら片手で器用にキーを打っていく。

「でもあの子はがんばってくれてますよ?」
「それはわかってるつもりよ。
 でもこの子の能力と装甲なら、前に出て接近戦をしても戦闘効率は・・・」

モニターが新しい情報を映し、それと同時に

「・・・・・・あらいやだ」

アルディラがまるでちょっとした忘れ物をしたかのような声を出した。

「?・・どうしました?」
「ん?・・・うぅん。何でも。
 ともかく今のところ問題はないみたいだから
 このデータでバックアップ取っておくわね」
「あ、はい、お願いします」

頭を下げるアティを後目に
アルディラは表示されたプログラムの羅列を見ながらそっと苦笑する。


「・・・大した気力ね」


そこには


どこでとったのかアティの画像と
その下に書き込んだ覚えのない、こんなプログラムがあった。


最優先任務、上記人物の護衛。

なお上記人物は後方支援型。
よって護衛範囲確保のため攻撃を遠距離のみと設定。







「ターゲット2,5,接近中。射程範囲に入り次第迎撃開始」
「ヴァルゼルド!右から召喚攻撃しますからトドメをお願いします!」
「了解。ターゲット5、支援後に迎撃。ターゲット2、オートガード」
「あ、でも!壁になってくれるのはありがたいですけど無理しないで下さいね!」
「了解。可能範囲でガード遂行。・・・アタック開始!」


そしてヴァルゼルドは

今日も明日も明後日も

アティのとなりでアティをガードしながら

もくもくと銃を撃っている。










ネタ帳にのこってたネタの速攻仕上げ。
こうやって書いてみると改良後のヴァルも結構かっこいい。

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