「と、いうわけで・・・たくさん持ってきましたヴァルゼルド!」
どす
前置きも説明もすっとばされた意味不明なセリフと共に
一緒にいたゴレムがかかえていた大小たくさんの箱が
無造作に目の前におろされる。
「はい!どうもかたじけないであります教官殿・・
・・・って、ハ??」
とりあえずお礼は言ってみたが、そこから思考が追いつかなくなったのか
ヴァルゼルドは出来もしないのに目を白黒させた。
「・・・教官殿、質問をよろしいでしょうか」
「はいどうぞ」
「できれば・・・『というわけで』」の前の解説をいただきたいのですが」
「あれ?言ってませんか?」
言いながら下を見ると、足元のゴレムが「・・言ってねぇよ」とばかりに
大きな手をぶんすか左右に振った。
「あ・・・すみません忘れてました」
「・・・いえ、それはかまわないのでありますが・・・急用でありますか?」
「え?いえ、ここに来るまでに前ヴァルゼルドがバッテリーっていうのを
美味しいって喜んでくれたのを思い出しまして」
「ふむふむ」
「で、クノンの所に取りに帰ろうかと思ったんですが
それじゃ時間がないでしょう?」
「確かに日没までの時間を計算するとそうなりますが・・・」
「でもよく考えたらここってスクラップ置き場ですから
それっぽい物が残ってないかなって思ったんです」
「・・・・・」
大人しく聞いていたヴァルゼルドの脳裏にイヤな予感がよぎる。
目の前の箱の山。
アティの海のように深い親切心と
水たまりのように浅い機械知識。
計算すると・・・
「だからゴレムにお願いしてバッテリーっていうのを
この辺り一帯から探して掘り出してもらったんです。
けどバッテリーってすごくたくさんあるんですね。びっくりしちゃいました」
結果
素性のわからない形式、正体、一切不明
デンジャーな廃棄バッテリー多数献上。
しかも悪意ゼロというおまけつき。
ヴァルゼルドは一瞬冗談抜きでフェードアウトしそうになるのを
努力と根性で耐えきった。
「・・・・・・あの・・・きょ・・・教官殿・・・」
使えないからスクラップ置き場に捨てられてるんだとか
それが全部つかえるならこんな所でエネルギー切れ起こしてないとか
ちょっと考えればわかりそうなものなのだが・・・
「え?あ、ひょっとしてお腹いっぱいですかヴァルゼルド」
わかってほしい事ほどわかってもらえないのは世の常である。
「・・・い、いえそういうわけでもないのですが・・・」
「じゃあどれにします?これなんかどうですか?
重たいから一杯入ってそうですし色も綺麗ですよ」
と、アティが差し出したのは
確かに大きくて重いが、あきらかに使えなくなって捨てられたと見られる
見た目も古く中身が紫色か青かどっちつかずな色に変色したバッテリー。
それは人間に置き換えるなら・・・
食わず嫌いにほんのちょっとだけ手を付けられて終わり
一年ほど暑くも寒くもない涼しいところで放置され
元食べ物とは思えないほど綺麗な花畑のようなカビの生えた
素敵弁当を差し出されたのと同じだろう。
横で見ていたゴレムがブピっと変な音を立てて後ずさる。
「・・・・教・・・・」
「お腹が空いてないならこんなのもあります」
と、出された小さいバッテリーからは
なんか漏れていた。
「のーーぅぉ!!」
ヴァルゼルドが変な絶叫をしてそれをひったくり
手近な地面に光の速さで埋めた。
「教官殿!!液漏れしたバッテリーに素手で触れては
大変危険です!ご注意下さい!!
(駅のアナウンス風)」
「え?そうなんですか?」
「これは我々機械には無害でも教官殿には有害な物質であります!!
違うでありますかそこの部下殿ッ!!」
と、びしと指されながら言われたゴレムはピピプーと音を出して
大きな手でこりこり頭をかくようなしぐさをする。
おそらく・・
『いやそう言うてもワシは探してくれて言われただけやきに
こげな事になるやなんて思わんかっただがや』
とでも言っているのだろう。
ヴァルゼルドは素早くゴレムの音声を計算して
人には聞き取れない電子音で猛反論を始めた。
ピピ!ポーププピ!ピピーー!
ピピピーポポ・・・
ピピッピーポポポー!!!
ポロポポーピピプー・・・
上の電子音を各個体のなまりも含めて改訳すると以下の感じになる。
『おまはん!命令に忠実なんはかまいまへんけど
それがどうゆう結果になるとか思いまへんのか!?』
『しょうがなかと。なんかてこのお人言い出したらきかんがに・・・』
『それをなんとかするんがお役目とちがいますんか!?』
『いやそぎゃん言うてもあんまり嬉しそうにするやとて・・・』
などと言い合っていても、機械に詳しくないアティには
2人そろってピーピー鳴いているようにしか聞こえない。
「あの・・・ヴァルゼルド?」
「はい!なんざんしょ?」
言語パターンの切り替えがズレた。
「え?」
「あ!いえ!なんでありましょう教官殿!」
「言ってる事はわからないんですけど・・・
ひょっとしなくても迷惑でしたか?」
変なところでカンのいい召喚師に
わからないようにやっていたロボ会話の意味がなくなった。
「う!いや!・・・迷惑というか使用可能な物がほとんどないだけですので・・・」
「えぇ!?そうなんですか!?」
「・・・はい、残念ながら使えそうな物はこれくらいで」
そう言ってつまみ上げたのは
かなり小さいが最近廃棄されたと思われる比較的新しいバッテリー。
アティはかぁと赤くなって勢いで帽子が飛びそうなほど頭を下げた。
「す、すみません!私全部食べられる物だと思ってて・・!」
「あ、いえ!ウッカリするのは自分にもよくあることでありますから・・」
そう言ってカチャカチャ手を振るヴァルゼルドは
表情があればおそらく相当必死な苦笑いを浮かべていただろう。
「それに教官殿は自分のためを思って行動して下さったのですから
自分はそのお気持ちだけでも十分であります」
「・・・でも・・・」
「それに・・・」
機械兵士の頭部が軽く小首をかしげるようにかたむいた。
「自分は補給うんぬんよりも
教官殿に来ていただく方がうれしいであります」
さらりと言われたのは結構な殺し文句だが
ヴァルゼルドはそれを殺し文句だなととは認識していなかった。
しかも
「・・・あ、そうですね。ご飯は1人で食べるよりは誰かと食べる方がおいしいですし」
この召喚師も何かちょっとズレている。
「じゃあ今度から時間が空いたときちゃんとしたバッテリー持ってきますね。
ついでにお弁当も作ってきますから一緒に食べましょう」
「はい!教官殿のお顔は太陽エネルギー60,45時間よりもウマイであります!」
微妙にかみ合わない会話に置いていかれたゴレムが
2人の間に向かって関西風の裏手チョップをかます。
だがどこか似たもの同士な2人は
会話に夢中でそれに気付くことはなかった。
なんか書いてるウチにワケがわからなくなってきた代物。
1つわかったのはバグでシリアス書くのが無理なことくらいか。
あと方言なまり等はデタラメです。
・・ってこれ、お題にそってないような・・
モドル