14 最後の槍もとばっちり
二月は短いと思い出す日
さて、ちまたではここの四周年とやらで騒がしいようだが
わしは就任してから一年もたってないからその感慨は薄めだ。
というか、四周年って祝っていいものなのか?縁起悪くないのか?いいならいいが。
それはともかく前もやったシールの某パン祭り企画の交換をする。
年始になぜか毎日引かされ続けて微妙な気分になったおみくじで
それなりに集まったシールとまずは刀一つと交換。
前までのわしなら選択と思案がめんどくさいとげんなりするところだが、今回は別だ。
おーいまんば、へせべ。ちょっと立会い手伝ってくれ。
蜻蛉は・・お杵と一緒に遠征を頼む。ゆるめの所を選ぶから
いつも通り身の安全を重視しろ。失敗しても気にするな。
というか、今までで何回か失敗してたのをまったく気付かなかったくらいだから
気にするも何もないんだが・・とにかく気をつけてな。
それで交換するのは・・・えーと、相変わらず字が多い・・
槍の・・きーのくーらのー・・や〜り〜の〜・・あった。これだ。
「で、作ろうとしてもなっかなか出来ないから、どんな高慢ちきな槍だコラと思って
当初は開幕パンチの一つや二つくれてやる予定だったんだが
思いのほか酒くたびれたオッサンが現れたんで出鼻をくじかれて
どうしてくれようかと今悩んでる最中だなう」
「??・・なぁおい、聞きたい事が多すぎてさすがに頭がまわらへぶ!?」
「差し出がましいかと思いましたが、代打を務めさせていただきました。
あとは煮るなり焼くなり、へし折るのであれば是非ともこのへせべにお任せを」
「・・いっっつ・・!聞きたいことが倍増して酔いも半分さめたぞ!」
「今の一撃でも半分なのかよ。まぁ順に説明するとだな
まず今ぶん殴られたのは わしがお前さんを作ろうとして気がつくと刀数が激増しててどうしてくれんだって意味で殴られたんであって、次におっさんにオッサン呼ばわりされたかねぇよってのは、あ、へせべ殴るのはもういい。話が進まん。で、その差は発酵してるかそうじゃないか、つまり酔ってるか酔ってないかの差じゃないかとわしは勝手に思ってる。あとお前さん、さっきからわしの事値踏みしてるようだが、別に値踏みするほどの価値もないぞわしは。見ての通りの・・」
「ちょ・・ま、おい、待った。まってくれ。・・怖えぇ。先読みが過ぎて怖えぇ。
あとそこのレベル差どぎつい護衛の殺気で鼻先から焼き殺されそうなんだが・・」
「まんば、へせべ。すまんがちょっと押さえてくれ」
「・・・・・・・・」
「主、やはりもう一撃だけでも・・」
「一発で充分だ。蹴るのも同等、それでいい。けど、二人ともありがとよ」
「・・そのような勿体無きお言葉」
「・・俺はべつに何もしていない」
「ぐぅ・・見た目には和やかなはずだってのに・・
地獄の釜のふちに両手縛られて立たされてる気分だ。
しかしあんたに関しちゃいくつか謎は解けた。護衛の目もあるんで詳しくははぶくが
なめてかかるとどこから何が飛んでくるかわからないって部類だな・・」
「はっは!馬鹿言え。こんなどこにでも転がってるさえないおっさん相手に何言ってる」
「・・・(う、うっさんくせェ。なんだ?何の上級者だこいつ?)」
「しかし冷静に考えてみれば今回の刀増えすぎの件。
興味本位で鍛刀しまくったわしにも責任があるし
それにこのギスギスした空気を長いこと引きずるのも本意じゃない。
なので今回の事はさっきの一撃も含めて水に流して
これからなんのかんのあるだろうが、よろしく頼むということでいいか、たけし」
「・・やれやれ、そんな言い方されちゃ・・・たけ・・?」
「日本号。本号でもいいんだが、わしとしてはホンゴウ=タケシに直結するからたけしだ」
「?全てのものは俺のもののたけしではないのですね」
「青い鬼に怯えきって自滅する方のたけしじゃないのか」
「・・おい待てやめろ。言ってる意味の大半わからんが色々とまずいニオイがする」
そうして結局、たけしは地味だけど誠意ある本人の説得により本号となった。。
たまにとある決めポーズ(初代〇イダーのアレ)をとるのを条件につけてだが
相当嫌だったのかレベル差膨大な二人を前にしても引いてくれなかった。
(ちなみにその時点でまんばレベル81、へせべ80、たけし1だった)
・・そうかぁ、ダメかぁ、たけし。汎用性あるいい呼び方だと思ったんだがなぁ・・。
まぁヤケクソでやってくれたポーズが思いのほか楽しかったんで別にいいか。
ちなみにその後、酔ってもないのにヘンな主だと言うので
まぁ酒の味もわからんし、酔った事もないんだがなと言ったらその場にいた全員に驚かれた。
いやそういう体質なんだから仕方ないだろ。そこの側近二人。なんで残念そうなんだ。
酔って暴れて千鳥足してからそこらでゲ●でも吐いてほしいのか。
確かに酒付き合いもわからんし酒の楽しみとやらも理解できんだろうが
皆で楽しそうに飲んでるのをただ眺めてるのも悪くない楽しみ方なんだぞ。
・・?何だお前ら。悪いことしてないのになんで謝る。
ともかく槍は全数三本そろったが、よく考えたらそれが何だと言われればそれまでだ。
そもそもレベル差があり過ぎておちおち一緒の合戦場へ出せないし、あと馬が足りない。
まぁいい、もう悩むのも面倒だ。幸い資源と時間は山ほどあるし育成は気長にやろう。
あと映画記念とやらの配布と言う名の押しt・ゲフンゲフン配布で刀が勝手に増えた。
・・まったくホントに、増えてきてわかったがこんなに刀があってどうしろってんだ。
刀の最大数はまだ何とかなってるが、刀装の最大数がギリギリだ。
上の考える事はよくわからんが、ともかく増えた刀はメモしておく。
日本号(本号) 見るからなオッサン。酒くさい。話すとまぁ気は合うんだが
『あんたと話すと酔いが半分近く飛ぶ』と言われた。
たまに難しい単語を使ってくるが、すまんわからんで通しておく。
あと妙にへせべに睨まれがち。酔っ払い嫌いなのか。
髭丸 名前とその由来に矛盾を感じる道端で拾った物腰おだやかなひじ丸の・・
ん?ひじ、ひざ?ひじき?とにかく前手に入った戦闘時に顔が怖い丸の兄。
こっちは大人しそうな台詞の所々と口調がちょいちょい怖い。
不動行光 配布されてきた自虐癖のある酔っぱらい。甘酒って酔えるもんだったか?
自分でダメ刀だと言うのでじゃあおそろいだな。と笑ったら
なぜかさめざめと泣くので膝か手ぬぐいを貸そうとしたら
へせべにつまみ出されて半日ほど帰ってこなかった。
酔ってるせいか重傷率高し。
三日月宗近 配布されてきた何か色々と変わった刀。あちこちで見たツラだが
それより何よりトラウマになりかかった激強の敵と同じギラギラの紋持ちで
味方とわかっていてもそこそこに怖い。育成に手が回りきらず
しばらくは遠征組として扱う。
明石国行 なまりと脱力感の強い奇妙な刀。長話してると勝手に寝そうだ。
これも手が回りきらず遠征組。
あと青なんとかって合戦場が新しく増えてたが、まだ池田屋でつまっていてその二つ先なので意味なし。そこを制覇しないと使えない旅道具とやらも、かさばるほど量もないので、そろそろ池田屋突破はあきらめようかと思う。
15、宵闇は休めばいい時間だと思う
三月別件が忙しい日
ちょっと前に気がついたんだが、刀帳の回想ところの右上になんか増えてた。
特命・・?なんだったかなこれ。見たことあるようなないような・・。
見るとわしがちょっと前に勝手にドジョウ(元???で現監察官)と呼んでたやつがいっぱいだ。うわぁなんだこの大ドジョウ祭り。完全放置した呪いか何かか。逆に面白いぞ。
まぁコムラのももチラには到底かなわんがな。あれが最近で一番笑った。
わしとコムラ以外が使用中の便所を間違えて開けたみたいな顔してたのは気になるが、楽しいことはいい事だ。
ところでまんば。なんでさっきからわしの羽織掴みっぱなしなんだ?
という余談はともかく、現在とある城の地下を捜索中だ。
と、書けば短いがこれはこれで任意ではないが正直めんどくさい。
そもそもなんだ地下99階って。ドル●ーガの塔でも60階までだってのに
誰だそんなに掘り散らした暇人は。なんで途中で酸素欠乏で窒息しないんだ。
なおここで手に入る小判はそこそこ入手して気がついたんだが使い道が微妙だ。
だいたい小判で交換できるものっていってもあれだろ、壁紙が増えるだけだろ。
ん?なんだこんすけ。けいしゅ?いやだから壁紙だろ。本丸背景の。
別にこれといった差や違いは・いて、こら頭突くな。何で怒る。
え?新刀種(剣)の鍛刀期間中の丸々ごっそりどこ行ってたかって?
いやそれがちょっと別件(別ゲーム)の期間行事で忙しくてな。
今のところ刀数は足りてる(というか多すぎて管理がめんどい)し
確証性のないものに付き合ってられなかった。
すまんゆるせ。厚揚げをやろう。大根おろしとカツオぶしもそえて。
さて文句を言いつつ元気にムシャるこんすけはともかく地下捜索だが
単純作業の繰り返しが多いとは言え、地下に進むにつれ経験値の割合が普段の合戦場より多くなっていくのは利点なのでそこは利用させてもらっている。
ここではいわし(岩融)が大活躍だ。
いい馬を渡してあるので敵が弱いと開戦直後に全滅させてくれて実に効率がいい。
うーむ魚で弱いのいわしも立派になったもんだ。
大器晩成の真髄を見た気がす・こらつまむな。立派になったなと言っただけだろう。
ただ先に進むにつれて敵の飛び道具が激しくなってきて
戦闘前に矢だの銃だの岩だのをじっと耐えるのも腹立つので
先に進むかどうかは皆の打たれ強さとわしの忍耐次第だな。
そもそも報酬扱いになってる短刀たちも前の増え過ぎ問題で大体いるので
無理に進む必要もない。今ある命は大事だ。
あ、そうだ。命で思い出したがへせべの隊に行ってもらってた池田屋。
長々と足踏みしていたがもう進行放棄しようと思う。
と言うのもこの前、ものは試しにうちで最高レベルのまんばを隊長で向かわせたら
開幕一戦目で敵槍の攻撃を二回連続でくらって中傷になったからだ。
一回目はわかる。なんの調整かあそこにいる槍はやたらと素早いから
一匹でもいたらどうやっても一撃はくらうようになってたからな。
ただ一通りこちらの攻撃が終わり、運悪く残っていたその敵槍が
また同じ相手の、しかも6分の1の軽傷中で隊長のまんばを
ピンポイントできっちりかっちり刺しに来るとかどんなミラクルだ怖いわ。
もうこれは『お前ら来んな帰れ』という暗示かお告げか何かだろう。
怖気づいたとも言えるが何とでも言え。こちとら胸をはれるド素人だ。
なのでこのずーっと夜で男士達の大半が活躍できないうえに
チートな敵がさらっと紛れてる陰鬱な場所は、他の優秀な審神者達にまかせる事にした。
それにここを制覇しないとダメなきょく(極)とかいうのも必須ではないだろうし
近ごろ新しくできる刀の大半が夜戦弱体の太刀とかいう嫌がらせにも飽きてきたから
丁度よかったってな。ははははー・・・・はぁ・・。
ただケガをしつつがんばってくれていたチビ達(短刀達)や
隊長をまかせていたへせべには少し言いづらいものがある。
とくにへせべが問題だ。色々と厳しいあいつの事だから・・
「・・申し訳ありません!!
己が無能をこのような形で主にぬりつける事になるなど痛恨の極み!
なんという愚行!なんという失態!面目次第もございません!!」
・・おぉぅ、やっぱりか。まぁ一回しっかり誉めてるから
その上での撤退となると気まずくもなるなぁ。
「えぇと、まぁ待て。頭上げろ。別に全部が全部お前のせいじゃない。大半はわしの
・・いや、総合的に言えば運がなかったのが一番の原因じゃないかと思う」
「しかし実際に隊を率いて指揮していたのは私です!
効率的に敵を排除し運をも掴みきれなかったのは・・!」
「簡単に言うがそればっかりはどうにもならんだろ。
それにお前は何回かいい所まで行ってくれたし
何よりわしの言いつけをよく守ってくれてただろう」
というのもチビ達は身軽な分、刀装備少なめの紙装甲で
敵を仕留めそこなうと高確率でケガをして下手をすると大怪我必須なので
先に進むよりも先に生きて帰る事が最優先。
軽傷だろうが中傷だろうがこれは絶対に守れというのを
へせべはちゃんと守ってくれていて、どれだけ優勢な状況になっても
ケガ人が出たらすぐに引き返してくれていた。
「だから手入れ部屋はやたらと稼動してたが、折れた刀は一つもなかった。
それだけでわしは充分満足。ケチをつける所なんか一つもなかったぞ?」
「・・・です・・が・・!」
「それにな。何もその苦労が全部無駄の無収穫だったわけでもないんだ」
「・・?」
「知ってるかどうかわからんが、お前、実はチビ達にそこそこ怖がられてたんだ。
名前の由来の事もそうだが色々厳しくて容赦ないところとかでな。
とくに秋坊なんかはちょっと前までお前と一緒に編成しようとすると
夜中に一人で便所に行かされるみたいな顔して・・」
どだだだだだ パーーン!
「ぅわーー!主君ーー!!」
たぶん様子を廊下から聞いていたんだろう秋坊が元気に障子を開けて走りこんできて
どざーとわしの横膝に頭からスライディングしてくる。
「やめてくださいあんまりですひどいです!言わないで下さいって・・!」
「言ってないし口止めもされてないぞ確か。
大体『もう大丈夫です。それに怖いけどちゃんと優しいところもある人ですし』
とか言ってたなら今更バレてもノーカンだろうが」
「そういう問題じゃありませんーー!!あとそこもバラさないで下さいーー!!」
などと子犬みたいにコロコロ暴れる秋坊にへせべは混乱気味だが
まだ混乱すると思うぞ。ほら、その証拠に足音がいっぱいこっちへ来る。
「・・あぁ、やっぱりダメだった。大将、悪いな。一応止めはしたんだが・・」
ひょいと顔をのぞかせたのは同じく様子をうかがってたんだろうやくけん(薬研)で
その後からわらわらと気まずそうな顔をした短刀たちが顔を出してくる。
そいつらに共通する点は二つ。
まず最近できた短刀ではない昔からいる古株の短刀達であること。
なのでそこそこにレベルが高く、へせべと一緒に池田屋へ行かせていた短刀達だという事だ。
へせべもそれに気付いたらしく顔色を変えた。
「お前達・・!なぜ来た!言い付けはしておいたはずだろう!」
「あぁ無理無理。口止めするならちょっとでも関わった奴全員に
思いっきり念押しして相当注意しとかないと
絶対どこかからもれてあっという間に拡散しちまう。
俺達の大半が兄弟なの、知らないわけじゃないだろ」
「ぐ・・!」
ってことはやっぱり今回の件。へせべ一人で責任とるつもりだったらしいな。
やくけんの意見と同じになるが、おおよそ無理だろそんなもん。
うちに短刀の兄弟やそうじゃないけど行動力旺盛なやつが何人いると思ってる。
そうして一応は口止めされていたらしいやくけんを筆頭に
お乱、いまけん(今剣)、コタ、委員長(平野籐四郎)、クッキー(前田籐四郎)
最後に慌てて復活した秋坊がへせべの近くにぴしゃりと正座し
戦闘でもないのにへせべを中心にした綺麗な陣形がととのった。
「何をしているお前達!戻れ!これは俺が負うべき責任で・・」
「ダメです!もうこうなったら一緒に怒られます!」
ふんすと秋坊が鼻息荒くこっちを見たまま力説する。
実のところ、こいつは時期的にへせべよりも先にいた先輩なんだが
こうしてみるとやっぱり児童と先生か塾の講師にしか見えん。
「みずくせぇよなへせべの兄ちゃんも。
こういうのは俺だって一枚やそこらは噛んでるんだから
引きずってでも連れてくるのがスジってもんだろ」
「ボクはそんなに気にしてないんだけど、一応ね」
「えっと、それってどつきあいだっけ?」
「付き合いだよ」
などと小さい漫才をしているのは、怪我した時にへせべの小脇に抱えられて帰ってきた愛太とお乱だ。こいつらもへせべより先輩なんだが、もういいや。年功序列はログアウトしたってな。
「みんなで怒られたら怖くない・・ですよね。たぶん・・」
「だいたいひとりでかたづけるなんてずるいです。
こういうときはせんぱいのかおをたてるもの・・でしたっけ?」
若干怯えつつもがんばって踏みとどまろうとするコタに
短刀で一番古くからいるいまけんが首をかしげる。
おぉさすがに一番の古株短刀。そこそこあってるぞ疑問系だけど。
「たとえ一時期の編成であっても
長谷部さんから受けたご指導の数々とご恩まで解体されることはありません」
「一蓮托生です。諦めてください」
比較的しっかりしている委員長がそう言った後
クッキーがにこりと笑って締めくくった。
ははは。へせべが困っとる困っとる。突き放すか受け入れるか判断に困っとる。
嬉しがるって選択肢が出ないのも困ってる要因なんだろうが
ともかくしばらく迷ったへせべは散々困った末、助けてとばかりな視線をくれるので。
「・・じゃあこうするか。放棄の件は半放棄に変更だ。
皆を強化しつつたまの気が向いた時に挑みはするが、無理な突破はしない。
編成は今まで通りへせべを隊長としたお前達中心の編成とする。これでいいか?」
わっと短刀達から安堵の声が上がり、へせべが力が抜けたように手を前につく。
それが安堵からくるものなのか、罰せられなかった事からの喪失感なのかわからんが
だがそもそもこの件、そんな気を張るような事でもない。
「しかしわしは別に怒るつもりなんぞこれっぽっちもなかったんだがな。
大体今ウチに何人刀がいると思ってる。61人だぞ61人。
何かある事にその頭を一人一人ぼこぼこ叩いてたら冗談ぬきで手が折れる」
「みんなのきものはきちんとのこさずつくろってくれるのにですか?」
「そこは趣味だから苦にはならん」
いまけんのツッコミを横に流してわしはまだ手をついたままのへせべの前に膝をつく。
秋坊が心配そうな顔をするがもちろん怒るつもりはない。
「池田屋も似たようなもんだ。壁を殴って壊せるところを探すうちに
手から血が出て慌てて引き返し、治ったらまた挑んで血が出てまた引き返す。
その繰り返しをしてたようなもんだ」
ひぇえとばかりにコタが息をのんで、やくけんがなだめた声がする。
うん、ちょっと例えが悪かったなすまん。
「けどそれだけする価値がその壁にあるかと言われれば
別にそうでもないか。というのがわしの出した結論だ。
だからほどほどでいいんだへせべ。
ケガはしないに越した事はないし急ぐ事もない。
たまに挑んで突破できれば運がいいとでも思っとけ」
運が悪ければ討ちもらした敵槍に同じところを二度突きされる事もあるだろうし
運が良ければ・・・・あれ?そっちのイメージがまるで浮かばん。まぁいいか。
「まぁそれよりも、だ。お前やわしの周りには、こういう連中がいる事を覚えておけ。
それが今回の成果・・というほどでもないが一応の良かった事だからな」
ゆっくり顔を上げて見回したへせべの視線の先には
よかったですねとかまた一緒にがんばれますといった短刀達がいて
そこで何を感じたのかわからんが、へせべはぎゅっと音が出るほど手を握りしめ。
「・・・・主」
「ん?」
「・・少々・・お時間を・・お預け願えますか」
土下座せんばかりに頭を下げてくるもんだからまぁ、たぶん、あれだろう。
「すまんやくけん。コタと愛太残して席外してくれ」
「了解。何かあったら呼んでくれ」
察しのいいやくけんは『ほらほら、撤収だ撤収ー』と言いつつ
ちっさいのを押したり率いたり小脇に抱えたりして部屋を出る。
とは言え、いまけんが『えー?ぼくもあるじさまのおひざー』とか言ってる時点でお察しなんだろうが、そうして対へせべ用の護衛だけが残ったところで、へせべがずりずりとうつむいたまま這って来てゴッと頭をわしの膝にぶつけてきた。
おい大丈夫か結構いい音したけど。
しかしへせべはかまわず愛太とコタが緊張気味に見守る中
その状態からまったく動かず、すびとかぐずとかずぞぞーとかいう怪音を
おわ、冷てぇ。膝つめてぇ。コタ、悪いがタオル・・・おうすまん早くて助かる。
「ま、わしもあまり気にしてないからそう気にするな。
それよりありがとな。がんばってくれて。
ただ今度からそのがんばり、皆と分散して励んでくれよ」
するとへせべ、顔を上げないまま膝の両側の袴をがっしと掴んできた。
愛太が心配そうな顔をするが大丈夫だと目で返しておく。
ちょっとシワになるだろうがそれくらいかまわんさ。
ちなみにそれはしばらくして手入れ部屋から戻ってきたまんばに見つかり
無言でとび蹴りされそうになってコタが慌てて止めに入ってくれたが
やめるタイミングを見失ったのか、そこで同化でもする気だったのか
へせべはいつまでたってもそこからどく様子がなかったので
結局わしの足がしびれるころになって、やっぱりまんばにとび蹴られた。
あと今回の補足。
平野籐四郎(委員長)
普通に第一印象からそう呼ぶようになった初期の短刀。
その時は籐四郎連中がそんなにいると思ってなかったから普通に第一印象だ。
だが今でも連中の誰が何番目とかいうのはよくわかってない。
ちなみに何の委員長でもないし任命もしてないが、隊を任せると安定して働いてくれる。
前田籐四郎(クッキー)
前田と聞くとクラッカーの方を思い出すのでそっちにしようかと思ったが
少し柔らかくしてクッキーにした。
本人がクッキーを知らなかったので現物を焼いて出してやると
子供らしい顔で美味しそうにほおばってくれて作りがいがすごくあった。
16 私的なゴールで休憩を
七月まだ始まったばかりの日
すっかり書きそびれていて、あ、いや別枠で書いたかな?
とにかくおにわ(さにわ)になって約一年が経過した。
いつの間にかやたら増えた人員にぐったりしつつも、まぁなんとかやっている。
そうして一年たって気がついた事なんだが
時々あるイベントって結構使い回されてるんだな。
小判とって鍵とって玉とってすごろくして、そして景品は大体刀。
その刀も能力限界が意外と早いというか伸びしろが微妙というか
そもそもそんな多くいても使いこなせないというか
夜戦と敵槍でその大体が台無しなるのが悲しいというかなんというか・・。
・・あぁぁ、いかんいかん。歳くうと否定と不満ばかり先に出る。
しっかりしろわし。元々不向きなのはわかってた事だろうが。
そうしてそんな中、唯一明るいと思われる事案が発生。
なんと運で突破するものだと思っていた池田屋が、トントン拍子に突破できたのだ。
というのも苦労したのは最初の市中だけで、その後は弱めの敵が多く
なんやかんやで制覇できたというのが現状だ。
あとエムお(亀甲貞宗)が敵槍の攻撃に結構耐えてくれたのがいい誤算だったな。
被弾率が妙に高く、わざと当たりに行ってたような気もするが気のせいだと思う。
ぅは〜〜〜、しかしよかった。実に良かった。
まだ先の場所はあるようだが夜戦じゃないから隊は組みやすいし
やっっと重たい肩の荷と心労がおりた気分だ。
これでようやくチビ達を夜中に傷をおしてまで酷使しなくて済む。
悪夢の二番隊もようやく普通の編成に戻せるな。
というわけで、ありがとよへせべ。長々とつらい役を押し付けてすまなかったな。
・・あ、いや別にこれでお役御免ってわけじゃないから
そんな歓迎会の最中に死刑宣告されたような顔しなくていい。
これから先の事はまだ考えてないが、とりあえずがんばってくれたお前達にはまず休息と褒美がいるだろうし、とりあえずその告知だけはしとこうと思ってな。
そう、休息と褒美、恩賞だな。
途中多少組み替えはしたが、最後まで踏んばってくれたのは確か
お前とエムお(亀甲貞宗)とシロ(骨喰籐四郎)、あと委員長(平野籐四郎)と
クッキー(前田籐四郎)、あつし(厚籐四郎)だったろ。
つうわけで、今言った五名と隊長のへせべは
がんばってくれた褒美として各自で希望した恩賞を取らせようと思う。
いいんだよ。散々こき使ったんだからそれくらいさせろ。
ただしだ。お前はその旨を先に紙に書いてわしに提出しろ。
先に言っておくが口に出すにもはばかられる内容は駄目だからな。
うん。それはダメだ。それも。うん、いかん、アカン、却下。
いやご無体もなにも、考えてもみろ。
恩賞って乱暴に言えば武功の報酬ってことだぞ。
つまり今上げた要求をのんだ場合、以後の戦闘でずっとその事が頭ちらつくんだぞ。お前今後それでまともに戦えるのか?
・・わかればよし。じゃあそれをふまえて考えておけ。
難しかったら誰かに相談するもよしだ。
お前はわしが絡まなかったら賢いんだからゆっくり考えろ。
「と、言って聞かせたはいいが、なかなかに複雑な顔しててなぁ。
ヒミツ(燭台切光忠)としてはどう思う?」
「ははは。鬼だね」
「簡素に辛辣!?そんな無理難題ふっかけてないぞ?!」
「いや彼限定の話だけれど無理があると思うよ。
たとえばご主人の事が三度のメシより大大大だーーい好きなワンコがいたとする。
で、その目の前には大好きなご主人がいるっていうのに
そのご主人はすごく広い敷地にワンコをぽいと放して
『こっちの事は気にせず好きに遊んできなさい』って言うのは・・」
「・・酷・・なのか?」
「酷だよ。と言っても君の感性はちょっと人とズレ気味なところもあるし、今更責める事もできないんだけど、せっかくなんだから一つくらい何か叶えてあげてもいいんじゃないかな」
「しかしそうは言っても、あいつ結構欲張りなところがあるからなぁ。
大体この前もうやれるものはほぼやったし、他に残ってるものって・・臓器くらいか?」
「・・・・・・。え?」
「ん?」
「えと、あの・・つかぬ事をお聞き、・・・あ、いや、やめておこう。
恐ろしい答えが跳弾しまくって急所に直撃しそうだ怖い」
「?そうか?まぁ地雷は人それぞれだから別にいいが」
「ところでずっと気になってるんだけど、さっきから無心にむいてるその栗って・・」
「あぁ、上から勝手に配布されてきた栗なんだが、栗飯にするには量が少ないし、羊羹に入れても一本分くらいにしかならんだろうから・・へせべの褒美がどうしても決まらないならそれを渡すのもありかと思い始めてる」
「つまり、今回も行く気なしなんだね聚楽第」
「理由はいくつかあるが、まず今は池田屋戦後の休暇中だ。
あと本来なら皆で憔悴しきってるところに任意の話を偉そうに持ってきたドジョウ(???)の尻を蹴って追い返したいところだが、反逆罪にでもされたらかなわんから無視。それでいい。それ以上それ以下はなし。そして純粋にめんどい」
「・・最後の言葉に全てが集約されてるような気がするね。
でも、報酬の刀の事はいいのかい?」
「まんばの写し元の事か?」
「あ、そこも知ってての話なんだ」
「一応それなりに調べたからな。
・・だがなぁ、刀の数はもう充分過ぎるほどに足りてるし
わしは収集家でもないし、価値のわからんわしの所にあっても仕方ないし
そういうのはちゃんと欲しいと思う審神者のところへ行くのがスジだと思う」
「本音としては?」
「まんばと名前がかぶってややこしいし、何より上の連中と関わりあいになりたくない。あとそのまんばがぶつくさ言いながらもよくやってくれてる所に余計な水を差したくない」
「・・そうかぁ。じゃあ僕としては何も言う事ないかな。
それと、皆に休暇を言う前に君も少し休んだ方がいいと思うよ。
僕らはたくさんいて手入れでどうにかなるけれど、君は一人しかいないし回復も遅いし、池田屋戦で気をもんで精神的にはくたくただろ?」
「・・お前、ヘンなところに目ざといなぁ独眼なのに」
「だからこそ、だよ。ほら、それは僕がむいておくから休んでおいで。
丁度お迎えも来てるし」
「?お迎えって・・あ」
見ると障子の下の方のもの凄く低い位置からまんばがこっちをのぞき見ていて
こちらの視線に気付くとあわてて引っ込もうとしたが
自分の布ですべってころんで一人どすばたやって、結局恥ずかしさからか動かなくなった。
うん、お前そういう所たまにあるよな。
まぁいい。お言葉に甘えて少し休もう。じゃあヒミツ、あと頼む。
しかし言われてみれば疲れてる・・のか?
まぁ確かに今まで前にあった壁が急になくなって拍子抜けした気はするが
あ、いや疲れてるな。身体が重た・・じゃない、こらまんば、なんで掴む。
おぶる?いやそこまでは別に・・あー、わかったわかった、怖い顔するな。
で、結局まんばにおんぶされて自室まで運ばれ
ひいてくれていた布団に転がされる事になったわけだが
思えば初対面の時、ヘンな名前だと笑って足を踏まれた間柄がいつの間にか妙な形に変わったもんだとふと思う。
おまけに羽織も脱がしてくれるし丁度いい位置に寝かせてくれるし
布団もかけてくれるし、っておい、いつの間にか介護されてないかこれ。
そう指摘したかったが黙々と働くまんばを見てると何も言えず
結局何から何までやってもらい、寝付くまで見張るとばかりに横に居座られる。
・・よし。寝よう。考えたって仕方ない。今はともかく休むことに専念しよう。
そう思いつつふとまんばの方を見ると、まだこっちをじーっと見ているのでなんとなく礼を言ったら、ぐっと息をのんでから『今生の別れみたいな言い方するな』と泣きそうな顔で怒られた。
・・え?なんだ、そんな風に見えるのか?
ということはやっぱり顔色がよろしくないのか。と思いつつ手を伸ばしてまんばを撫でようとしたが、知らずと睡魔に押し負けて布団から手を出したところで力が尽きた。
あぁ、確かにこんなんじゃ今生の別れみたいだ面目ない、と思いつつ目を閉じ眠りに落ちる寸前、その手が両手で軽く握られたような感じがした。
そういえばわし、こっちに来てから甘やかしてもらってばかりな気がするなぁ・・。
ちなみにその後、まんばの様子からヘンな噂か情報が漏れて尾ひれをつけて泳いだらしく、次に目を開けた時、沈痛な面持ちをした結構な数の刀に取り囲まれていて、知らない間にわしの葬式でも始まったのかと普通にびびった。
あ、それとなんのかんので増えた刀も
書いておかないと忘れそうになるので書き留めておく。
巴形薙刀
刀剣と言うより鳥みたいだと思った白鷺似の薙刀。表情に乏しいがなつっこい。
逸話がないとの本人談だが、わし元々素人だから逸話があろうがなかろうが大して変わらんぞ、と言ったらなぜかへせべと地味な睨み合いを始めた。
へせべ、お前新人に恨みでもあるのか。なんでそうことごとく・・。
小豆長光
出合いがしらにスィーツなる横文字をのたまった見た目と中身が一致しない不思議甘味野郎。
ヒミツと同じたらしのニオイがすると思ったら同一刀派だったすげぇ。
菓子の製法等について情報を交換したら時間が半日ほど吹き飛んだ。お前ホントに刀か。
数珠丸恒次
たまたまできた見た目が華奢だが掛け声野太い大人しそうな太刀。
紋が例のぎんぎらだが不思議と怖さは感じない。
仏うんぬんについては詳しくないが坊さんとはまた違う思考を持つらしい。
ところで寝てないよな。起きてるよな。
一期一振
山ほどいるチビ達兄弟の兄らしい。ただ入手時が池田屋夜戦の真っ最中だったのでまだ普通の合戦場で使ったことがない。なんかすまん。
あとこれ、いっきひとふりでいいのか?だったら勇ましいな見た目に反して。
南泉一文字
いつぞやの宝物庫の最後の方に入っていた地味に派手な打刀。
猫の呪いがあるとかで口調がそれらしく、気を抜くとミケとかタマとか呼びそうになる。何を言ったか忘れたが、前にある呼び方をしたら怒りながら床をゴロゴロ転がって足をぺしっと叩いて逃げていった。侵食されとるのか素なのかは不明。
博多籐四郎
城の地下で拾った方言付の短刀。たまに何を言ってるのかわからない所もあるが
ネコババは瞬時にわかった。でもそれ堂々と言う事じゃない気がする。
戦よりも会計係に向いていそうだがあいにくそんな役職はここにない。残念。
入手が池田夜戦後だったので幸運と言えば幸運な短刀だと思う。
その17 いろんなものを持て余す
11月もう年末が見えてきた日
長々と詰まっていた池田屋をクリアしたはいいが
そのおかげ・・というかそのせいというか、とにかく皆がやたらと修行の旅とやらに出たがるようになった。
そういえば旅道具とやらにそんな事が書いてあったなと思いつつ、行きたいというなら行かせてやりたいのは山々なんだが・・今ある旅道具のセットとやらが7組しかない。こんなものなんだろうか。
ざっと調べた話だと、なんでも修行の旅に行かせるはずなのに、なぜかレベルを減らして帰ってくるらしいのでレベルをカンストさせてから行かせるものらしい。
なんというかよくわからんシステムだが、ってことはそうなるとまんば、お前が一番最初になるな。今レベル94だろ。
別に今の状態でも不自由はしとらんが、行きたいなら行くか?旅とやらに。
ん?近侍か?そうだなぁ・・確かにお前にほぼずっとまかせきりだったから調子狂うだろうが、かわいい子には旅をさせろって言うし、行きたいと言うなら止めるわけにもいかんだろうし・・。
・・・・・。
まぁ、そりゃ・・確かに一番長くいるから、さびしいかもしれんが
行きたいなら仕方ない・・ん、だろう、かな?
うーむ、私情をはさむとどう判断していいかわからなくなっ
ってぇ?!なんで頭突く!?
お前そんなだからパズルの背景がイノシシになるんじゃ、って押すな押すな。
あ、へせべ、止めてくれるのは助かるが、殴る蹴るのは急所以外に
うわこら無言で猫みたいなケンカ始めるな!
肉体言語は聞く耳がなくなってからにしろ!
おい蜻蛉!くりた!そこらにいたらこれ止めてやってくれー!
で、地味なケンカをはじめた連中はともかく
この旅の件はまだそこまで武力面で困ってないので保留としておく。
気が向いたらそのうち許可するかもしれないが、まぁそのうちだ。
そしてその他の近状としては色々あったので簡単に書くと以下の通り。
連隊戦。
どんな仕組みだったか大体忘れたが
確か海で敵と水のひっかけあいをして貝殻集めてた。
書くとやたらメルヘンだがケガの率が高くなってきたので途中で放棄。
楽器と玉集めのすごろく。
今回は交換品に馬がなかったからすぐあきた。
それにしてもたまに思うんだが、このやたらと高い交換レート。
一体どういったつもり・・あ、いやそこを追求するのは野暮だったな。
あと前から思ってたんだがこの楽器ってどうするものなんだ?
合奏でもするのか?それはそれで楽しそうだが。
大阪城地下。
長い。あと微妙な数の小判が印象に残る。
これ現地の土から掘りおこした金で小判作ってないか?
特命の文なんたら。
説明文が長いし任意なので放置。
とまぁ我ながら適当過ぎる話で実に恐縮なんだが
このあたり、新しい刀を入手したいならもっと忙しくて楽しいんだろうな。
わしはそこらへんに興味がわかないから、途中で飽きる放棄スルーは大目にみてもらいたい。
あと軽装という浴衣も出回るようになって、使い道のなかった小判との交換が始まったようだが、残念ながらこちらにもあまり興味はない。
なんでそんな熱量で審神者なんだテメェと言うなかれ。
元々成り行きで転がり込んだ奴に1から100までやれってのは無理がある。
わしみたいなヘボおにわ(審神者)に出来るのは2、30くらいが精々だろう。
そもそも刀はもう十二分に足りていて完全に持て余し気味だし
刀装も最大数あって倉庫は常時満タンで仮置き場も圧迫しているし
資源も平均10万あって上記2つの理由で使い道がないし
・・まぁこれ以上はこんすけに怒られそうだからやめとこう。
あと最近になって気付いたんだが、わしのレベルって上がったところで
資源の最大保有数がうっすら増えるだけであまり意味ない気がするのは気のせいか?
もっと味方全員の攻撃と防御力10%上昇バフとか
無条件に先制とってくる敵槍の効果無効とか
夜戦での弱体化緩和とかの能力があればいいと・・
ん?なんだこんすけ。メタ発言はお控えください?
同会社でもダメなのか?・・そうかダメか。
しかしそう考えると他の意欲的な審神者はともかくとして
わし、べつにいらないんじゃないかとか思い始めてるんだが
ってうわぁ、なんつう顔してんだたけし(日本号)。
「・・え〜・・あ〜〜〜・・よぅし、順を追って話そう。
まず第一に、いらないとかどうとかって話は、間違っても、どんな事があっても
あんたにべっっったりな護衛どもにはするな。絶対にだ」
「だからある程度距離のあるお前と
生まれたてで後腐れない巴(巴形薙刀)に話してるんだが」
「・・いやそれでもマズイだろ。
むしろこの事が万が一あんたがいなくなった場合に知られでもしたら
まず矛先が俺達・・いやほぼ俺に向いちまうだろうが」
「?そう・・なのか?」
「初見時に軽く睨まれてるからそうなんだよ。
あとたけしもやめてくださいやがれお願いします。
実家に八百屋の母ちゃんがいる気分になる」
「あ、お前の基準はそこなんだな。へせべと一緒か、ははは」
「いや、はははじゃないだろ。俺にとっちゃ普通に死活問題なんだ勘弁しろ」
「・・・主、質問だ。話が複雑で理解できない部分が多々あるが
まず主は失職、もしくは辞任するのか?」
「うーん、今のところその予定はないが、可能性としては・・」
「おいこら、今からもその先もその予定は入れるな。
そもそもあんた、審神者としては下の下みたいな事言ってるが
いつも両脇にいるべったりどもや、そうでもないが懐いてる連中
あと酔いが飛ぶのをわかってて俺がこうして付き合ってる理由がわかってての話なのかそりゃ」
「・・・・。腐れ縁の関係か?」
「くっそう!めんどくせぇ!おい生まれたて!お前も何か言ってやれ!」
「?何かとはなんだ?」
「この自称へぼ主、もう自分がいなくてもいいんじゃないかとか思ってて
今日か明日にはふらっといなくなってるかもしれない、って事での何かだ」
「・・それ、は・・困る、のだろうか。顕現したばかりの俺には、それがどういった事態に発展するのかわからない、が・・」
「・・あ、悪い。そんな急にいなくなったりしないから、そんなに掴まないでくれる?」
「もしや日ごろから何か欲しいものはないかと聞いているのに
『とくにないな』で済ませているのはそのせいなのか?
俺はまだ、主の大半を知らず何の願いも叶えられていないというのに・・」
「いやいやそれは関係ない。欲しいものは大体持ってるし
願いもじんわりと時間をかけてだがちゃんと叶ってるからな」
「どういう事だ?」
「まず欲しいものがないのはここにいる連中、お前も含めての皆がいるから、だな。
お前達はたまに不平不満はもらすが、こんなほぼ何の役にも立たんわしの所にいてくれるし、お前にいたっては結構な確立の中からわしの所に来てくれて、そうして何もわからん所から何かを拾おうとしてがんばってくれている。
それに皆ケガ・・は、たまにしてるが、病気もせずに健やかにまっすぐ育ってくれてるから、それ以上の願いなんぞ今のわしにはないぞ」
「ぉッぐっふ!」
「うぉ!?なんだどこに入った?大丈夫か?!」
「ゴッホ!ゲッは!くっそう!今のでほとんど飛んだ!
もう一本追加いいな!いいはずだ!でないとやってられるか!」
「??何を錯乱しとるのか知らんが、ほどほどにしとけよ。
あともう寒いから適当にそこらで寝るなよ、風邪ひくぞ」
「・・・あぁくそ、マズイ。誰かさんの二の舞になりそうだ。
いや俺は交換分だからそう影響はない、はずだ・・と思いたいんだがなぁ・・」
「主、そこで自己反省している妙な槍はともかく
やはり何か俺にできることはないのだろうか。
主より賜ったこの手も足も口も頭も、ただあるだけのものではないはずだ」
「・・うーむ、そうは言っても・・・あ、そうだ。
前に確立強化で出てた薙刀がいたろ。お前に少し似た、アバンギャルドな見ための黒っぽい・・」
「静形薙刀の事か?」
「あぁそうだそれだ。あの時は確立不審で見送ったが
もし何かの機会に会う事があったら紹介してくれるか」
「承知した。主がそう望むのならば」
「ヘンな要求で悪いな巴。わしは性質上というか都合上
勇ましめの逸話とかが残せなくてな」
「いや、戦働きだけが逸話ではないと、主を見ていると感じるようになった。よって問題はない」
「はは、そう言ってくれるとありがたい。
あとたけしもすまんな。わしのせいでたぶん万年三位とやらも万年九位くらいに・」
「正!三!位!そしてたけしもおやめ下さいやがれ撫でるのももうちょっと荒っぽく優しくしない絶妙に困る!」
「・・要求の多い槍だな。主も普段からこのくらいの我侭を言えればよいのに」
「ははは。酔えないから無理だな」
たけ、じゃなかった本号がまだ何かぶつぶつ言ってるが
もしかして酔いがさめると大きく出れないタイプだろうか。
あと撫で心地ががっさがさだな。
まぁ当然と言えば当然だが、これはこれで面白いな。
しかしこれからどうしたもんだろうか。
もう一人の薙刀の件は、刀の最大数の事を考えると作ってどうにかできるような気がしないから、そのうちの交換か何かでどうにかするとして、これからまだあるらしい特命うんたらも別にやる気はないし・・
まぁいいか。元々何かを達成するつもりで始めた事じゃないし、気楽にやっていく事にしよう。
その18 勝ち負けの問題ではなく
記録しそびれた月たぶん年末だった日
秘宝の里とやらを少しだけ攻略中・・というほどでもないが、気が向いたのでやった。
前までは玉のレートの高さであまり興味がわかなかったが
ここにきてなぜかたまに見つかる楽器集めが楽しくなってきたので、皆のレベル上げついでにだ。
えぇと、こういうのを何と書けばいいのか、たまにもらえるおまけ感がいいというか、アイスのあたり棒のような、ガムのあたり紙のような、かりんとうの厚みのあるところとか、ハッ●ーターンの味の濃いとこみたいな感覚と言えばわか・・・らんか。
まぁともかくおまけ感楽しさに楽器を集めてはいるんだが
なぜか集めようと思う前から琴の数だけがやたらあるのはなんでなのやら。
何かで交換した、もしくは購入したって記憶はないし
誰か婿入り道具で持参でもしてたのか?ってうお?!なんだまんば?!なんでそんなに咳き込んで・・おいこらへせべは火ぃ持ってどこ行く気だ!火付け駄目!絶対!!
という謎な話はともかく楽器の里の難易度は普で固定だ。
難は報酬効率はいいが、ガビョウの中から小判を掴むようで心臓に悪い。
向かわせるのはまんばへせべ共にレベル90ちょいなので
70の蜻蛉に行かせ、ついでに近侍もたのむ事にする。
しかしなんだな。へせべや蜻蛉に近侍をまかせると 正直どうも堅っ苦しい。
いや悪くはないんだがまんばの距離感に慣れてると
どうも身分が押し上げられた気がして落ち着かん。
あ、そうだ。近侍ついでに蜻蛉の軽装とやらを購入してみるか。
ちょうど小判の使い道もなくなってたことだ。
どれも浴衣に見えるが軽装っていうなら軽装なんだろ・・ぅぶべっふ!
「主!?どうされました?!誤飲ですか!?」
「いっ・・いや、すまん。なんというか・・衣装が、お前に負けてて・・ぐっふ!」
「・・・・・・。!?つまり似合っていないと!?
これはご無礼を!ただちに着替えてまいりますので!」
「あ、いやいや、そうじゃない。そうじゃなくて・・ふふ、なんというか・・」
「??」
「わしはそのあたりの感性が薄いから、似合う似合わないはわからんが
うーん、なんというか、ちょっと、楽しいと思うぞ」
「楽しい・・ですか?」
「おう、楽しい、だな。そういやお前戦着が薄手で内番着がかっちりめで
そういった衣装ってのがなかったらその反動かな」
「・・そ、そういうものでしょうか」
「うん。わしも衣装が負けそうってのは久しぶりに見た。
ふふ、そうかぁ。お前そんなド紫着せても勝つんだなぁ。
なかなか楽しい発見だ」
「何やらあまり誉められているような気がいたしませんが・・
しかし主が笑ってご満足しておられるようなら、それが何よりかと」
「うん、まぁ満足ってほどでもないが・・あ、ところで蜻蛉よ」
「はい」
「そこの足元、なんでそんなにでかでかと村正って書いてあるんだ?」
そう聞いてみると一瞬後、蜻蛉には珍しくぶっと吹き出してから謝ってきて
やっぱり笑われたりして書いてある理由を説明してくれたが
うーぬ、そうは言ってももうここも大所帯だからなぁ。
刀派がどうとかなんとか言われても、もう一々覚えてられん。
ぶっちゃけ槍と薙刀以外の見分けすらも怪しいんだがなぁ。
なんて事を話したらやっぱり笑われた。わしらしいんだとさ。
まぁこの場合はお互い笑いあえてよかったってことで良しとしておこう。
ちなみによく仕組みを忘れる連隊戦は報酬に馬があったので少しやった。
馬を取得後は放置。いつもの事だがこの高レートに付き合う気力はない。
あとどうでもいいがこの報酬告知画面、マフィア似の新刀と背後の色合いのせいか
ざっと見た目がy・げっふごふん!関係の抗争図ようだ。
それとあまりわしには関係ないが、ここができて五周年なんだそうだ。
ほうほう。それが長いのか短いのか、良いことなのか悪いことなのかは
まだここに来て二年もしないわしには判断はできんが・・
出来ることなら皆が心穏やかに安心してすごせる場であってほしいと願うのは
分不相応分な話かもしれんが、片隅に書いておくくらいは・・許されるよな。
ん?なんだ蜻蛉。
・・おいよせ、そんな優しい顔で見るな。いいじゃないかこれくらい。
審神者とか一口に言ってもピンキリだろうし、その末端の一人が多少ヘボの戦下手でも他の連中がなんとかして・・
ん?手?あぁ、かまわんが。
・・・・。
なんか・・すまんな蜻蛉。いろいろと。
いやまぁ、いろいろと。
19 なんでもない日に送るもの
年を越した月 中途半端な晴れ日
わしがここへ来て二度目の正月が終わり
なぜか毎日引かされたおみくじでシールが集まる。
その数によって交換ができるんだが、この何度かやった某パン祭りな仕様
実際にパン祭りと言われているらしい。
はははなるほど。塩パン食いたい。
で、交換は白いボウルではなく前から考えていた赤っぽい薙刀(静形薙刀)を選択。
で、いざ会ってみると見た目とは裏腹に普通におとなしいやつだった。
もっとこう、世紀末の中ボスみたいに使用前後かかわらず得物の刃をなめて奇声を発してそうな見た目だったからちょっと不安だったが、まぁおとなしいならそれに越したことはない。
ただ冬場に寒そうな格好をしてたので腹巻でも編んでやりたくなってきた。
いや大事だぞ腹は。不調の原因の大半は腹にあるから馬鹿にはできん。
そういえば最近になって気がついた・・というか二年してようやく気がついたんだが、ここの連中、見た目が洋風和風が入り混じってるのはともかく、なぜだがちょんまげが一人もいないんだな。
ってうわ、何だこんすけ、久々のチベットスナギツネ。
それと年始のドサクサで思いがけず軽装の引換券が配布されてきた。
・・これ、確か一枚小判50000するやつだよな。
小判自体そう使い道がないとはいえ、人数と相場と価値観がどれも噛み合ってない気がするが・・まぁ細かい事はいいか。こんすけに睨まれる。
ちなみに今回出た分の軽装は初期に選択できた面々だった。
ふむ、しかしこうして初期選択の連中を並べて見てると
まんば以外の選択肢ってのもあったんだなぁとか思っ
いて、なんだまんば。なんで踏む。
何でもないって・・何でもないのに足踏んでくるのかお前は。
まぁいい。配布分の券で軽装交換してきたから着替えてこい。
?どうしてって・・そりゃお前がいたらお前を選ぶからだろ。
いらないのか?まぁ気に入らないなら倉庫に放り込むだけ
?着るのか?じゃあほら・・って、なんだあの挙動不審ぶりは。
「・・き、った着たたぞ。これでいい、のか」
「(噛んだ?)おう、ちゃんと着たのか」
「い、言われたからそうしただけで・・俺はべつに何を着ても俺であって、特に代わり映えしないし・・そうじろじろ見るほどのものでもないし・・いや見るなとは言わないが・・」
「うん、なるほど。うん」
「・・似合わないなら・・・元に戻すが」
「いや、ちゃんと似合う・・かどうかはあまりわからんが
素直な感想としては・・なんか強そうに見えるな」
「?つ、つよそう??」
「うん。横幅が大きく見えるせいか色合いのせいか
手ぶらでも強そうに見えるな。不思議となぜだか」
「・・あんたの感性は時々ヘンだ」
「ははは。たまに言われるが、皆が言うならそうなんだろうな」
「・・・・・後悔・・していないのか」
「?何をだ?」
「引換えの中にいただろう。・・他の初期刀」
「あぁ、最初にお前を選んだ話か?」
「さっき、ほかの選択肢もあるとか・・言っただろう」
「あ、それで足踏んだのか。わかりにくいなぁ」
「・・・それはその・・・悪かった」
「うーん、とは言えなぁ、その最初の選択ってのが
ハンドガンか十徳ナイフかA-10とかならそれなりに迷って後悔もしただろうが
なにせその時は刀が片刃の剣ってくらいの認識しかなかったからなぁ」
「?(えーてん?)」
「それに最初に会った時にも言ったが、山姥切どころか刀の事もさっぱりわからんし、実のところ今もあまりわかっとらん。だから今も昔も後悔するような事というのもほぼない」
「そう・・なのか?」
「そうなんだよ。ま、そのあたりはあまり難しく考えず
平穏無事にすごしてくれるとわしは嬉しい。
刀としては不本意かもしれんがな」
「・・どう・・なんだろうか。あんたといると、よくわからなくなってくる」
「ははは。あ、それと忘れないうちにこれもやっとこう。ほら」
「大吉?・・あ、これ・・!」
「そうだ。正月にお前と引いた大吉だ。
引いた時に珍しそうにしてたから取っておいた。記念にやろう」
「い・・・いい・・のか?」
「引換はもう済んでるし、お前と引いたから半分はお前のものみたいなもんだし、こういうのはヒネた思考をもつやつより素直に嬉しがるやつの方が・・あ、いやなんでもない。とにかくほら」
と言いつつ渡してみたはいいが、ヤバイ物の受け渡ししてるわけでもないのに挙動不審が止まらない強そうなまんばから、なぜか頭突きが返ってきた。いたい。
20 平穏であればかくことはない
春の月 うかつに外に出れない日
戦力拡充計画というものが始まった、んだが・・なんだったかなこれ。
聞いたことのない話、か?わしが気にとめてなかっただけか?
詳しい事はよくわからんが、とりあえず蜻蛉を隊長に太刀と適当な連中で行かせてみることにする。最初の場所は初心者用との話なのですんなり終了。
ところが二か所目の難易度普。
とつぜんの夜戦。
ぎゃあああぁあ!?!
知らずの夜戦一戦目をレベル差でゴリ押してどうにか切り抜けたが・・
こぅらあ!!こんすけぇ!!先に言え!!油揚げくってる場合か!!
大事な報告を油揚げと一緒に口にしまうな!
あわてて出直して短刀脇差編成で突破はしたが・・うぅ、池田屋の悪夢。
・・おいコラこんすけ。油揚げに包まれたいそうだな。
次に情報出し忘れたら、いなりずしの具にしてやろう。
甘ぁいおあげに酢めしと一緒に美味しく包んでやるぞ。
心配するな原型とどめないようにしてやるから、逃げるなよおぉいぃぃ。
走って逃げながらも油揚げは落とさなかったこんすけはともかく
次の場所ではいつぞやの初壊滅のギラギラ(検非違使)と遭遇。
げ、これか。ここだったのかいつぞやの初壊滅ポイント。
だが前の時のようになすすべもなくってわけじゃなかったが
やっぱりきつい事には変わりなく、引き返してそこから放置。
一応また条件付きでのシール所得も始まってるので
まだ安全な場所で任務数をかせぐことにする。
で、シール交換は正直これといった要求もなかったんだが
なんとなくでいなかった大太刀を選んだ。
旅道具と交換の選択肢もあるが、まだ誰も行かせてないし、楽器も使った事がないので必要なし。残るは刀の交換だが、そろそろ限度所持数にかすりそうだしもういいかとは思ってたんだが、最後の方にいた未所持のいかつい大太刀を選んだ。
短刀と打刀は山ほどいるし、太刀は打刀と見分けがつきにくく違いがよくわからん。薙刀と槍も数がそろってる。
となると、残りが大太刀になるわけだが、それを選んだ理由がもう一つあるにはあるが、まぁそこは書くほどでもないから省略。
ところでこれ、なにきりまるだ?ししきり?ももきり?
はらきりとうちきりじゃないのだけはわかるが・・うーーむ
って、なんで固唾をのんで見守るんだお前ら。
で、最終的にののきりまるだと思っていたその読み方は
ねねきりまるなんだそうだ。
・・・。大して変わらなくないか?
あとねねって誰かのカミさんの名前だったような気がするんだが気のせいか?
と本人に言ったらしばらく黙った後、わしがそう願うなら好きに呼べとあっさり承諾してくれた。
いや願いとまではいかないんだが、怒らないならそうさせてもらおうか。
しかしなかなかに大らかだなこのななきり・・いや、のねきり・・
む、すまん。新しいことはどうも覚えにくくてな、パンきり。
それとへせべの軽装とやらが出たらしいのでなんとなく購入。
しばらく近侍をまかせるつもりはないが、ま、一応だ。
?どうしてって・・お前どうも近ごろ距離感が近いし
あと蜻蛉にも言ったが身分が急に偉くなったみたいで落ちつかん。
と説明したら釈然としない顔をしつつも試着して見せてくれた感じ・・まぁ早い話
わしより主らしくてちょっと複雑な気分だな。
もうここの表向きの統括はお前かたけ・じゃなくて本号(日本号)でもいい気がし
・・あ、いや冗談、すみません撤回。
捨てないし譲渡しないし下げ渡さないからそんな人刺しそうな顔しないで
いたいたいたたたた手ぇもげるギブ降参すみませんでした。
などと必死こいて離してもらったが、手にがっちり怨霊ばりのあとがついた。
前から思ってたんだが、お前のその底の見えない執念はどこから来るんだ。
「さて、二度と使っていただきたくない冗談はさておき
主の影武者としての任とあればやぶさかではありません。
その際は日本号含め是非有効活用ください。お役に立ってみせましょう」
「・・つってもなぁ。こんな末端も末端で雑草どころか石ころにも数えられないおっさんを、わざわざ狙いに来る奴もそう・・」
「いなくとも、なのです主。必要なくともどうぞお使いください。
我ら主のためここに存在するのですから」
「・・いや使うにしても、わし自身が大した事もできてないのに
お前たちに指示命令だけするってのも心苦しいんだが」
「では言い方を変えましょう。おそばに在らせてください、主」
ぐお直球、しかし元をたどればそういうものなんだろうなぁ。
忘れがちだがそもそもこいつらは刀剣で、誰かの元にあるのが本懐なところがあるし、こいつの場合はその気がめったやたらと強い所があるようだし。
それと何度も書くが、皆がどう思おうが何年たとうが
わしはおこわ(さにわ)には向いてないと思う。
刀の素人で歴史にも新しい刀にも興味がなく、ややこしい事は他の審神者がどうにかしてくれるだろの精神で、上の思想や管轄管理上ほめられる部分がほとんどないような奴だ。
ただよくよく考えてみればそんなやる気も根性も気概もない素性不明な輩を、大した審査もなくここへ放り込んだ上のいい加減さも、考えてみればどっこいどっこいな気がせんでもない。
そんなあちこち噛み合ってないこんな状況下だが
わしがここへ来て一つ、固まった意志みたいなものがあるにはある。
「・・なぁへせべよ」
「はい」
「会ったばかりのころにも言ったが
たまには自分を愛してやれって話、まだ継続中だからな。
そばにいるのは自由だが、主従使命感を握りしめて矢面に立つ事はない」
「そ、れは・・」
「わしはこの通りのいい加減なやつだ。
お前達の事を刀だって認識もまだ浅いし、どういった扱いが正解で
何をもって本懐とするのかも曖昧だ」
「・・主」
「ただわしの私的な願いとしては・・
ただお前達には歴史や昔や元がどうあれども
できる事なら平穏で健やかであってほしいと思う。
ちくわ(さにわ)としては、怒られるかも知れんがな」
なんて言ってるとへせべのやつ、怒るのと泣きそうのを合わせたような顔でわしの手を取ってごんと額をぶつけてきた。
あ、こいつ話し合いで解決しないと思って実力行使に出やがった。
だが効果的だな。わぁわぁ言いながら駄々こねる子供よりも
黙ってしがみついてくる子供の方が置いていきにくい。
なんて言ったら二度と離してもらえなくなりそうだが。
と思っていたら近くのフスマがすっと開いてまんばが無言で来たかと思うと
へせべを手慣れた動作で引き剥がし、わしのほぼ真横に着席。
そのすぐ後、同じように待機していたらしい蜻蛉が黙ってわしの背後にすっと座り
最後に黙ってへせべがまんばの反対側につく。
お前達、妙な時に妙な通じ合い方するんだな。
このこいつらを刀の側から引きはがして、ロクでもない方へ持っていく傾向。
そろそろ上の連中や正しい審神者に怒られるかも知れんが
まぁまだ起こってもない事を心配しても仕方ない。その時はその時としておくか。
あとへせべとまんば。わしの背後で地味に小突き合うのやめてもらいたいんだが。蜻蛉も困っとるし。
それと今回手に入れた刀のメモを少し残しておく。
この先刀を入手する予定がまるでないので、最後の入手刀になるだろう
と、思っていたら、この後なぜか上の方から60数振りも刀が配布されてきて微妙な心境になった。
何を思ってそんなに配布してきたのかは知らんが、そんなにあっても扱いに困る(訳:めんどい)だけなので脇差を一つもらいあとは返品とした。
秘技、細かい事は他の審神者が何とかしてくれる、だろう。たぶん。しらんけど。
祢々切丸(のの丸)
私的な観点からして一番刀らしい刀に見える刀。
一部能力のカンストがやたら早かったが、刀の成長ってこんなもんだったか?
まったく関係ないがわしの一つ下の弟に似ていて実家が懐かしくなってきた。
肥前忠広
読み方はわからんが大量配布のかぶってない分から選んだ脇差。
数の少なさから脇差を選んだつもりだが、思いがけずこいつも刀らしかった。
ただ人斬りとはいえ刀ってのは使う人間によって変わってくるものだし
上には上の上の上の(ピー)があるからなぁと笑って言ったら普通に引かれた。すまん。
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