「・・・少年?」
あんな特徴のある目のやつもそうはいないだろうが
一応確認のためにダンテが声をかけてみると・・
それは何だか信じられないといった風にこっちを見ていたが
急にそこから転がり出ると、こっちに向かってまっすぐ走ってきた。
何やってたんだ馬鹿!と出会い頭に怒鳴られるかと思ったが
これはこれでダンテとしてはちょっと意外だ。
そういやアイツは寂しがりやだったな。
そんな事を考えながらダンテは軽く両手を広げて
走ってくるジュンヤを受け止めてやろうとしたが・・・
ぐわき!
ところが胸に飛び込んでくるかと思った少年悪魔は
手が届く寸前ちょっと方向をかえて、メガトン級のラリアートをくれた。
さすがにそう来るとは思っていなかったダンテは
3メートルほど後に飛ばされ、建造中の外壁にぶち当り
そこを粉々に破壊してさらに後の壁に激突してようやく止まる。
レオルドが驚いて動き出そうとしたが
横からトリスが手をさっと出してそれを止めた。
「とりす!?」
「・・大丈夫だよきっと」
あれだけ出会い頭に強烈な事をしておいて大丈夫も何もないような気がするが
トリスがその奇妙な2人を見る目はいたって真剣だ。
一方ダンテは細身ながらダンプカー並の力を持つ一撃によって
一瞬目の前が白くなってきれいなお花畑に行ってしまいそうになったが
壁に激突した衝撃とこみ上げてきた何かすっぱいものにより
ギリギリの所で意識を呼び戻された。
だが休む間もなくあおむけに転がった腹の上に何者かがドンと乗っかり
襟が強力な力で掴み上げられ、金色の目と合わされる。
そしていつもは穏和なはずの少年悪魔の口から
暴発したかのような怒声が、今までにない至近距離から飛んできた。
「なんだよなんだよ!なんでだよ!!
なんでそんな平気な顔してるんだよ!
人がどれだけ心配したと思ってるんだよ!」
ジュンヤの怒る顔は今まで何度も見ているが
こんな今にも泣きそうな顔で怒ってきたのは初めてだ。
「俺の気も知らないで!いつもいつも勝手なことして!
あんたはそれで別にいいかもしれないけど
少しは俺のこと考えてくれたっていいじゃないか!」
襟についていた飾りがぶんぶんゆすられてカチャカチャ音を立てる。
「家族も、友達も、知り合いも、家も、学校も!
わけもわからず一気にいろんな物なくしまくってるってのに!
あんたそれでもまだ俺から何かなくさせるつもりなのかよ畜生!!」
・・・あぁ、そういや・・・オマエは寂しがり屋でそうゆうヤツだったな。
今さらながら思い出したジュンヤの性質に
ダンテはトリスが心配していた事とレオルドの話を思い出して内心天をあおいだ。
そういえばそうだ。ジュンヤが自分より仲魔を大事にするのは
いきなりあらゆるものを奪われて穴だらけになった自分の心が
これ以上理不尽なものに浸食されないようにするため・・
人であるための唯一の命綱としてしがみついているのと同じ事。
「バカ!アホ!変人!自己中!ストーカー!今度勝手にいなくなってみろ!
髪の毛半分黒く染めて顔にぬい傷書いて、そのコート真っ黒にしてから
剣とメス入れかえてやるからな!!」
言ってる意味はわからなかったが、とにかくダンテは何も言わず
襟を掴んでがたがた前後にゆらしながら怒鳴り続けるジュンヤに
言いたいことを言いたいだけ、ありったけ全部言わせてやった。
きっと普段から言えずにたまっていた事が一気に出てきたのだろう。
ジュンヤはしばらくああだこうだと思いつくかかぎりの罵声を発していたが
そのうち言うことがなくなってきたのか、すぐ声が小さくなり
襟を掴んでいた手も次第に力をなくしてぽろりとはずれた。
「・・・気がすんだか?少年」
ジュンヤは答えなかった。
本当はまだまだ怒り足りないのだが、ジュンヤは元々温厚なので
こう冷静に対処されてしまうとなんだか自分だけがバカになったように思えてくる。
ジュンヤとしてはダンテのこんな落ちついて対処してくる所が
憎たらしくもあり、またうらやましくもあるのだが。
ともかく腹の上に居座ったまま、複雑な顔でだまりこんでしまった少年に
ダンテは小さく笑って降参とばかりに手を広げて見せた。
「気がすんだならそろそろ放してくれないか?」
「・・・・」
「まさかオマエがそんなに必死になってたなんて思わなくてな」
「・・・・」
「・・・機嫌直せよ。なんか甘い物おごってやるから」
声をかけるごとに少しづつ機嫌は回復しているようだが
やはりまだ小さな怒りがくすぶっているのか
ジュンヤの口は固く閉じられたまま開かない。
と、なると一番手っ取り早く怒りを吐き出させる方法は・・・
「なんだオマエ、襲われるより襲う方が趣味だったのか?」
ズビーーーーーーー!!!!
超近距離から放たれた至高の魔弾は
文句なしにネバーギブアップを発動させた。
「ほらね。やっぱり心配してたでしょ?」
「・・・それは気休めと同情の一体どっちだ?」
「うっわ、ヒネクレモノ」
さすがに回復はしてもらえず予備に持っていた魔石がゼロになり
今度から宝玉も持っておいたほうがいいかなと
顔の形が変わってないか確認しながらダンテは考える。
しかしその甲斐あってかジュンヤはようやく落ち着きを取り戻し
今少し離れた所でユエルを後にくっつけたまま
レオルドから事の次第の説明を受けていた。
「それにしても変わった悪魔さんだね。
ユエルって人見知り激しい子なんだけどあんなになついてるし」
「・・アイツはちょっとワケありでな。
見た目と体質は悪魔だが、中身はまるで別物だ」
「ふーん」
座り込んでいたダンテの横で同じように座り込んでいたトリスが
何気なくレオルドと話をしているジュンヤを見ていると
今まで見た中で一番悪魔らしくない悪魔は
何やらすいませんでしたとでっかい機械兵士にペコペコおじぎをし
レオルドもレオルドでいいえとばかりに大きな手を左右に振っている。
「そう言うそっちの友達も、まるで中に誰か入ってそうだな」
「入ってるも何も、あれがレオルドなんだし」
さも当然とばかりに言われたセリフにダンテは声を立てて笑った。
「なるほどな、そいつは失礼したなお嬢ちゃん」
「あのね、私もう18なんだからお嬢ちゃんはないんじゃない?」
ダンテの顔が笑ったままでぴしりと固まった。
「・・・あ、ちょっと、今何か失礼なこと考えたでしょ」
「・・・・・・・・気のせいだ」
「その間はなによ」
どう見ても15以下だと思っていたが
下手をすればジュンヤより年上な年齢に
ダンテは女を見る目が衰えたのかなとちょっと後悔。
「・・ま、別にいっか。はいこれ」
そう言ってぽんと前に置かれたのはかわいいケーキの箱。
何だと思って開けてみると、中には預けておいたイチゴタルトと
チョコのかかったエクレアが入っていた。
「3つもらったんだけどレオルドは食べられないし
1個は仲直りアイテムとしてサービスしてあげる。
そのかわりしっかり仲直りしてきてね」
「・・・・・」
何だかこんな少女に始終振り回されっぱなしというのも少々屈辱的だが
実はこの年齢に似合わない小柄な少女
少し前にこの世界の危機を救っていたなど、ダンテはもちろん知るよしもない。
しかしそれを知らなくても言うことはもっともなので
ダンテは無言で立ち上がり、ケーキの箱片手という非常に似合わない姿で
ジュンヤ達の方に歩き出した。
ジュンヤはまだ熱心に謝罪していて気が付かなかったが
レオルドが先にダンテに気付き、気を利かせてユエルと一緒に席を外してくれる。
そこでジュンヤもようやくこちらに来ていたダンテに気付き
少しムッとした顔はするものの、さっきのビームで気がまぎれたのか
露骨に怒る様子は見せなかった。
「・・まだご機嫌ナナメか?」
「・・べつに」
その返事の仕方だけでも十分にナナメなのだが
そう言ってしまうと逆効果になってしまうので
ダンテは小さく笑うと手にした箱からエクレアを出して
微妙に目をそらしていたジュンヤの前に差し出した。
「ホラよ」
「え?」
「さっき言ったろ。甘い物おごるって」
しかしそれはおごるどころか、もらい物をさらにもらって
一銭の金もかかっていないのだがダンテは気にしない。
一方ジュンヤは少し戸惑っていた。
甘い物は嫌いではない。むしろチョコ系統は大好きだ。
しかも久しぶりに目にする甘い食べ物は
魅力一杯ないいにおいをさせながら目の前に突き出されている。
しかしこれを受け取る事はなんだか物で買収された気にもなるのだ。
「なんだ足りないか?ならコイツも持っていきな」
なかなか受け取ろうとしないので
さらに箱に残っていたイチゴタルトも一緒に突き出され、ジュンヤは驚いた。
何しろイチゴは破壊的に似合わないがダンテの好物。
それを自我の強いダンテがあっさり他人に渡してくるなどどういった事だ。
「・・い、いいよ別に!ダンテさんこれ好きなんだろ?」
「知っての通りな」
「だったら・・!」
ダンテは少し困ったような顔をして肩を軽くすくめた。
「・・まぁ確かにオレもオマエの事を少し軽く見てた。
オマエには忠実でそれなりに力のある仲魔も多くいて
今まで1人であんな世界を歩き回ってたガッツもあるってな。
しかし・・・それは昔の話で、オレのいたころの話じゃない」
ジュンヤとしては今も昔も大して変わらないだろうと思ったが
ダンテはさらにこんな事を言った。
「今のオマエはオレの依頼主だ。
他の連中がいようが馬鹿みたいな力があろうが呆れるほどのガッツがあろうが
そんなものはクライアント・・いや、相棒を放り出していい理由にはならない。
・・・そうゆうことだな」
ダンテはそう言って両手にしていたケーキ達を1つにまとめると
ジュンヤの方に再度差し出す。
「こんな菓子1つや2つじゃ足りんだろうが・・まぁせめてものワビだ」
それはつまり、1人にして悪かったなというつもりなのだ。
ジュンヤはなんだか逆に困ったような顔をしていたが
そう言われると受け取らないわけにもいかないので
しばらく迷った後、ようやく差し出された箱を手にする。
こっちが心配したり不安になったりしていたのに
平気な顔で出てこられた事に関しては確かに腹が立ったが
あのダンテがここまでこちらに気をつかってくれるとなると
情に厚いジュンヤとしてはなんだかそれはそれで
ちょっと申し訳ないような気持ちになる。
ジュンヤはかなり複雑な顔で渡された箱をにらんでいたが
やがて何を思ったのか、箱を開けてイチゴタルトを取り出すと
突き返すようにダンテに出した。
「・・・返す」
「オイオイ、勘弁してくれよ。人がせっかくなれない事言って・・・」
「だから!」
一瞬怒鳴ろうとしたが、途中で気がついて思い直し・・
「・・・その・・・その気持ちだけで十分だし。
・・・わかってくれたんなら・・・それでいいから」
オレの気持ちはイチゴタルト1個分かとも思ったが
あれだけ激怒させた後の行動としては悪くはないだろう。
「じゃあプラスマイナスゼロだな?」
「・・・うん」
「OK、じゃあこれで後腐れナシだ」
ダンテはそう言ってひょいとジュンヤの手からタルトを取り
その場二口でそれを平らげた。
「・・うっわ、はや」
「職業上早食いは得意なんでな」
「・・それって作った人に結構失礼だよね」
「なんだ少年、食わないなら・・」
「わっ!馬鹿!これは俺の!」
あわてて手癖の悪い魔人から離れると
ジュンヤは久しぶりの洋菓子を速攻で食べる。
おいしいものはゆっくり食べたいジュンヤとしてはちょっと理不尽だったが
そんなやり取りをしている間に2人はもういつもの2人に戻っていた。
「ふふ、ちょっと見た目は変わった2人だけど仲良さそうだね」
「・・確カニ」
「でもユエルやっぱりあの赤いのよりジュンヤの方がいい」
遠巻きに見ていた少女が半分にしたロールケーキを食べながら微笑んで
機械兵士がそれに同意し、半獣の少女がもう半分のケーキを食べながら
それぞれに思ったことを口にする。
「あーゆうのを喧嘩するほど仲がいいっていうんだね」
「ソウ言エバ・・ふぉるて殿トけいな殿ニモ同ジ言葉ガ使ワレテイマシタネ」
「じゃあトリスとネスティもそうなの?」
「ん?・・う〜んそれを本人に向かって聞くのはどうかと思うけど・・・多分ね」
「じゃあミニスとケルマも?」
「う”・・・いや、あれは仲がいいと言うよりは同レベルって言う方が正しいかも・・・」
ガチャ
言葉の途中で突然レオルドが身体を硬直させ
何もないはずの空を見上げた。
「とりす!強烈ナ磁場変動ヲ確認!」
「えっ!?」
「変動率測定不能!小範囲デ空間ガ・・イエ、何カ来マス!」
その異常はあまり音を立てるものではなかったが
頭上が赤く染まった事でダンテもジュンヤも同時に気付いた。
はっとして上を見ると、赤く染まった空から何か丸いものが
空をその形のままくりぬくようにして突然現れる。
・・かと思ったら
それは全部出たと同時に赤い色彩を消したかと思うと
いきなり普通に落ちてきた。
「「!」」
ガッ!!
両方が同時に相手をどかそうと出した蹴りは
ちょうどお互いの足の裏を蹴り、同じような距離で相手を弾き飛ばした。
どごーーん!!
2人がそれぞれ背後にあった物に激突したのと
それが地面に落ちたのはほぼ同時だった。
「・・・・・痛ぇな少年」
そこらにあった壁に激突し、その拍子に立てかけてあった材木に頭を叩かれ
今回なんだかロクな目にあってないダンテが
落ちてきた筒のむこうにいたジュンヤをにらむ。
「・・・そりゃこっちのセリフだ!なんでいきなり蹴るんだよ!」
ジュンヤの方は背後に砂袋が積んであったので大したことはない。
しかしその場からどかそうとしたとはいえ、足で蹴ろうとした乱暴な扱いに
やはり筒の向こうにいたダンテを怒鳴った。
「・・助けてやったのに文句をつけるな。オマエだって同じ事しただろうが」
「だってダンテさんちょっと押したくらいじゃびくともしないだろ!」
「それにしたところでもっとやり方ってもんがあるだろうが!
なんでオマエはオレだけ他の連中より扱いが下なんだ!?」
「ダンテさんだって俺のこと乱暴に扱うじゃないか雇い主なのに!
それにスニーカーとブーツじゃ痛さが全然違う!」
「オマエオレよりパワーあるくせに何言ってやがる!」
「ダンテさんの方が足長いだろ!」
「・・あの〜〜」
円い筒をはさんでケンカを始めようとした所に
トリスのちょっと申し訳なさそうな声がわって入った。
「ケンカするのはいいけどさ
それ、なんなのかとか思わないワケ?」
指された先にあった物はさっき上から落ちてきた正体不明物体。
しかし2人が気にしなかったのはケンカに夢中になっていたのと同時に
それが見たことのある形をしていて眼中に入らなかったからだ。
結構重要なものであるはずなのに、完全無視されていたSターミナルが
2人の間でちょっと所在なさげにしていたのは気のせいだろうか。
「じゃあ本当に色々とすいませんでした」
それはまるで迷子を迎えに来た保護者のようなセリフだ。
しかしダンテとしては頭を踏まれ、おじさん呼ばわりされ
ゴミ箱に蹴りこまれたあげく首と胴がオサラバしそうになったので
一番の被害者はオレだと力説したい所だったが・・・
「ううん、いいのいいの。
でも今度から離れ離れになったりしないように気をつけてね」
ちょっとした借りができたことも事実なので
大人の意地でそれらの不満をしっかと包んで黙っておく事にした。
「ねぇねぇジュンヤホントに帰っちゃうの?」
トリスとレオルドは事情を知っているので止めはしないが
なぜかジュンヤになついてしまったユエルだけは
まだ名残惜しそうにタトゥーの入った手にしがみついてくる。
「・・うん、ごめん。あっちにどうしても助けたい友達がいるんだ」
「・・?助けるの?」
「そう、本人達は助けてって言ってるわけじゃないけど
俺は・・・やっぱりあのままじゃいけないって思うから・・」
人にはない模様にいろどられた手が
人ではない獣の耳がついた頭に優しく触れた。
「・・俺の偽善でもいいから、助けてやりたいんだ」
ユエルはしばらくもどかしそうにジュンヤの顔を見ていたが
静かながらも強い意志をその目から感じ取ったのか。
「・・・わかった」
しっかり握っていた手を自分から放した。
それはきっとジュンヤがしようとしていることは
かつて自分がトリスに助けられた時と同じように思えたからだろう。
ジュンヤは少し安心したようにぽんぽんとその頭を撫でてから
ポケットから何かを掴み出してその手に握らせる。
「あげるよ。困ったときに使うといい」
握らされた手を空けるとそこにはルビーやサファイヤやアクアマリン
かなり貴重品であるはずのダイヤモンドまで
いくつかの宝石がごろごろと無造作に転がっている。
「・・・わ、きれい。・・でもいいの?」
「うん、実は俺もきれいな以外の価値がよくわからないし
ここならお金にかえるくらいはできそうだから」
確かにボルテクスでの宝石というのは特殊な店での物々交換にしか使えず
換金のできないちょっと特殊な代物だ。
「それにただ俺が持ってるよりも
ユエルの役に立ってくれる方が俺も嬉しいからね」
ユエルも最近お金というものについてはわかるようになったばかりだが
それでもジュンヤがくれたいくつかのきれいな石は
彼の心がこもっているかのようにきらきら光り
たとえ品質的な価値はわからなくても十分に価値ある物だった。
「・・うん、ありがとう。ユエル大事にするね」
そうしてようやく笑ってくれたユエルに
泣かれたらどうしようと内心ハラハラしていたジュンヤはほっとした。
「ふふ、なんだかユエルがなついちゃうのもわかるなぁ」
「・・・だからって言葉も通じないモヤみたいなのや
ゲル状の奴らにまでなつかれるのはどうかと思うがな」
「・・・げる状デスカ」
まぁあれでも悪魔だというのだから
ゲル状だろうとモヤだろうと多少は関わったりするのだろうが・・
レオルドは機械でありながらなんだか1人でキモイ想像をしてしまった。
「まぁとにかくさっさと帰るぞ。どうもここはオレには合わな・・って!」
「ダメ!触んな!もうダンテさんはターミナルに触るの厳禁!」
「・・・ハイハイ、好きにしな」
やけくそ気味にそう言ってダンテはターミナルから手をどかし
操作しようとしているジュンヤの後ろに立つ。
その時ふと、見送ってくれている3人の中で
一番大きな、自分とよく似た色彩を持つ機械兵士と目があったので・・・
「そっちもしっかりな」
片手を上げながら2人の間でしかわからない言葉をはなった。
「ハイ、オ互イニ」
レオルドもレオルドでやはり横から聞いただけでは
意味不明の言葉で対応してくる。
「?レオルド、なんの話?」
「イエ、以前とりすニ言ワレタ事ニツイテ、イクツカオ話ヲシタモノデ」
「私?」
はて、自分の言ったことでダンテの参考になるような事が何かあっただろうか。
と考えてみても自分の事にはてんでうといトリス。
いくら考えても思い出すことなどできはしなかった。
そうこうしているうちに操作の終わったSターミナルが回転を始め
ジュンヤ達の周りの空間がひずみ出す。
「それじゃ!ありがとうございました!」
「うん、元気でね!もうはぐれたらダメだよ!」
「オ気ヲツケテ。御武運ヲ」
「バイバイジュンヤ!バイバーイ!」
しかしまるで船出前の見送りのような光景の中
たった1人無言を通していた者がいる。
「・・おーい、ダンテさーん」
トリスがそれに気付いて声をかけると、赤い光にのまれながら
そっぽを向いていたダンテはふと視線をこちらに向け・・
「わっ!?」
消えるまぎわ、いきなりジュンヤの首に腕を回して捕獲し
ニヤリと笑って、その場からターミナルとジュンヤ共々かき消えた。
「・・・素直じゃないなぁ」
そう言って、トリスは何もなくなった場所を見て1人笑った。
まぁあの様子ならもう心配ないだろう。
「・・さーてと、ちょっと予定くるったけどあかなべ行こうか」
「エ?今カラデスカ?」
「だってこんなにやけた顔でネスの所に帰れないよ。
シオンさんの所で今のこと全部吐き出してネスには報告しないつもり。
話したら余計な心配させちゃうしね。
ユエルも今のことみんなには内緒だよ?」
「うん、わかった。秘密だね」
「そ、3人だけの秘密。あ、言っとくけどレオルド
ネスに読まれないようにちゃんとデータ保護しなさいね」
「・・・了解」
多少後ろめたい気もするが
確かに変な心配をかけるのもなんなのでレオルドはうなずいた。
「じゃあ今からみんなでシオンさんの所に行って
お蕎麦食べながら今の事これから話せない分いーーっぱい話そう」
「え?ユエルもいいの?」
「もっちろん!ほら行こ行こ、レオルドもほら」
「とりす、ソンナニ急ガナクテモアカナベハ逃ゲマセンヨ」
その3人がその後秘密を守れたかどうかはわからないが
後にユエルのもらった宝石のいくつかがトリスとレオルドの手に渡り・・
友達と離れ離れにならないためのちょっとしたお守りとして
いつまでもいつまでも大事にされたとか。
機種が繰り下がってしまいましたサモン2でした。
いやだってロボ好きだし。
話としては護衛エンド後の話です。
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