さて、ひとしきり漫才・・じゃなく再会後の説教を展開した後
一行は異界から元の名もなき神社へと戻ってきた。
戻って来るなりジュンヤはあらためてダンテのやらかした事を必死こいて謝罪したが
興味となりゆきで襲いかかられたライドウはさして気にする様子もなく
『いや別に』ですませてしまう。
「・・しかしな少年、先に手を出したのは確かにオレだが
それを真っ向から受け付けて同等の戦闘ができるそいつにも問題は・・」
「ないな!!1ミリも1ミクロンも1原子たりとも!!
そもそも悪魔に襲いかかるとかならまだしも
ライドウさんどっからどう見ても人間じゃないか!」
「それはわかってたが・・そいつの剣、カタナっていうのか?
それとそのロウ人形みたいな無表情を見てたら無性にバスっと撃ちたく
あ、まてストップ、これ以上顔はやめろ、しかもまた血管浮いたグーで・・」
などとやっているともう止める気力も尽きてきたゴウトが
無表情で傍観していたライドウの代わりに微妙な様子でこう言ってきた。
「しかし・・再度聞くが本当にそれがお前の仲魔なのか?」
「・・素性も口も悪いけれども一応そうです。
でもその前にかなり色々あってかなり特殊な関係ではあるんですが・・」
「今じゃ他にない最高の相棒、だろう?」
「・・・無駄だと思いつつ一応言っとくけど、ちゃんとした相棒ってのは
事あるごとに厄介事をベルトコンベアー式にドカドカ運んでこない人の事を言うんだよ」
「人生で退屈なしに刺激があるのはいい事じゃないか相棒」
「・・・・・・・・」
などと根拠のない自信満々に返されてジュンヤは反論するのを放棄した。
「・・まぁともかくこれでそちらの帰る準備は整ったのだから
後はカラスの報告次第だな」
「・・調査結果が出たか聞いてくる。君達はそこで待っていてくれ」
「・・・お願いします」
ここで待つ時の定位置になった大きな木の下へ今度はダンテと行き
ライドウ達がヤタガラスの使者を呼んで話をしている間そこで待つ。
前まで1人で少し手持ちぶさただったが
横にダンテがいると少し違うなとジュンヤは思う。
「・・で、結局のところアイツ一体なんなんだ?」
「ここを管理してる秘密組織みたいなのの1人で
俺と同じように悪魔を召喚して戦うサマナーっていう人なんだってさ」
「ふぅん」
というだけにしては妙だとダンテは思った。
多少使っていた悪魔のフォローがあったとは言え
自分と互角にやりあったのもそうだが、とにかく何かひっかかる。
刀を持っているからか、それともあの落ち着き払った態度のせいか。
いくつか理由を考えてみるが、どれもそうなようでそうではない。
じゃあ何だと思ってライドウ達を見ていると、急にライドウがこっちを見た。
視線に気付いたのかと思ったがそうではない。
足元の黒猫が妙に驚いたような様子だったし
ライドウが見ていたのはジュンヤの方だったからだ。
という事はあちらの調べでジュンヤが何者なのかが知れたのだろう。
そう思って再び話に戻ったらしいまっ黒コンビを見ながら
ダンテはその時唐突にあることを思い出した。
「・・あぁ、そうだ思い出した。少年」
「ん?」
「オマエ、さっきオレがあれと戦ってる最中、どうしてあっちの名前を先に呼んだ」
「はぁ?」
なんの事だと首をひねるジュンヤに対し
変動の激しいダンテの機嫌がすとんと降下して
目にもとまらぬ速さで腕を伸ばしてきて首をぐぎっとホールドしてくる。
「いてっ!ちょ、なんだよ急に?!」
「いいから答えろ。なんであっちを先に呼んだ」
「なんでって言われても・・ホントはダンテさんを止めようと思ったんだけど
言っても聞かないかなとか思ってたらなんとなくそうなっただけで・・」
「つまりオマエはとっさの時にオレを呼ばなかったんだな?」
「えぇ?!なに!?それって怒るとこなのか!?」
もちろんそんなのは伸び縮みの激しいダンテの物差しからしての話であって
普通の人はそんな所で怒らない。
大体自分で勝手にはぐれておいて他のヤツの名前を先に呼ぶなとは勝手な話だが
ダンテがこの少年に持つ価値観というのもちょっと特殊なので仕方がない。
「オレが1人でオマエを探し回ってる間に
オマエはあんなセロリみたいに白くてうさんくさいヤツの名前を
オレより先に呼ぶくらいになってるなんてどういう了見だ?ん?」
「んな事言ったって!とっさだったんだからしょうがないだろ!
あとセロリはうさんくさくないしスープにするとダシが出て美味しいんだよ!
いやそういう話じゃなくて!いたいいたい!たたたた!」
「いいや違うな。オレとほとんど同等にやり合えて
斬って撃ってかかってくるヤツがまともなワケないだろう」
「そのセリフそっくりそのままダンテさんにも当てはまるだろが!
てて!痛いってマジでやめろよこの馬鹿力・・!!」」
カキン
だがその時、ふいに聞こえてきたわずかな金属音に
短い髪をかきむしっていたダンテの動きが止まった。
見ると一体いつからそこにいたのか
話が終わったらしいライドウが少し離れた所に立ち、じっと黙ってこっちを見ていた。
しかし顔はいつもの無表情のままでも手は腰の刀にかけられていて
その手はかすかにだが刀の鍔を押し上げている。
ダンテはかなりイヤそうな顔をしてぺいとジュンヤを解放した。
するとライドウの方も何事もなかったかのように手をはなし刀をマントの中に戻す。
「・・・・・チッ、東洋人のくせに似てやがる」
「いって〜・・もうなに1人で怒ってるんだよ。
大体今回のことで怒りたいのはこっちなのに・・」
「待て、その前にまずオマエに言っておく事がある」
「?なんだよ」
怪訝そうにするジュンヤに対しダンテはぐいとライドウを親指で指した。
「オレはあのタイプは好かん」
「・・・・・・。ゴメン。一体どっからツッコんでいいのかわからないけど
とりあえず日本語通じてマスカOK?」
「・・・あ〜ゴホン、もうそろそろ結果を話してもいいか?」
黙っているとずーーっと傍観しているライドウにかわり
ゴウトが心底イヤそう、かつ仕方なさげに割り込んできて
帰る方法が見つかったことを説明してくれた。
なんでもここはボルテクスとは別世界だが、そう極端に離れていないらしく
それが幸いしてある術式をふめば2人くらい問題なく送還できるのだそうだ。
「先程まで異界とこちらへの道すじも少し不安定だったようだが
その男が戻った事で今はどこへの道も安定しているようだ。
それにお前達の出所を探ってみたところ見つかりやすい場所だったらしく
帰り道もすんなりとみつかった」
「え・・それじゃあ・・」
「ライドウにも道を開くことができるよう手筈を整えてもらった。
そちらの準備さえよければすぐにでも取りかかれるぞ」
「よかった・・ホントにありがとうごさいま・・
いえ、その前にそこまでしてくれた人達にとんだ無礼をはたらいてまことに申し訳・・!」
「・・いや・・それはもういいから」
しかしまったく悪びれず横で堂々としてるデカいのも含め
妙にアンバランスな連中だと思いつつ
ゴウトはやっぱり黙っているライドウにかわってさらに続けた。
「・・しかし悪魔に礼を言われるのも妙ではあるな。
まぁそれは悪魔に限った事ではなく礼を言われる自体が珍しいだけかも知れんが」
「そうなんですか?」
「何分我々は秘密裏に行動し、人の見えぬところで事態を収めるのが役目なのでな。
先程のように異界での難題を解決したところでそれが表に伝わる事もあまりない」
「そうですか・・」
と言うことはライドウ達はこれからもずっと人知れず
悪魔がらみの事件を誰にも知られずひっそりと解決していく事になるのだろうか。
そう思うと少し寂しい気もするが、こういった縁の下の力持ちがいてこそ
なんでもない平和があるのだろう。
そしてその思いに突き当たったジュンヤは
何か思いついたような顔をしてぽんと1つ手を打った。
「・・あ、じゃあ助けてもらったお礼、って言ったらなんですけと
俺、ライドウさん達の事、ずっと忘れませんよ」
「は?」
「誰にも知られてないけど、誰にも知られちゃいけない事かも知れないけど
ライドウさん達はよそから急に来た俺達をちゃんと助けてくれたし
こんな危ない人もちゃんと穏便に回収してくれましたよね。
この事は帝都とかの記録に残らなくても、俺達がちゃんと覚えておきますから。
だからこれからもお仕事、大変かも知れませんががんばって下さい」
迷いなくそう言い切るジュンヤにゴウトはかなり意外な様子で片耳を横にしていたが
ふいに相変わらず無表情なライドウをちらと見上げ。
「・・・・信じられん」
と心底言葉通り信じられないような様子で小さく言った。
それが何を意味するのかわからなかったが
その時ライドウの方がほんの少だけ表情を緩めた
・・ような気がしたのはジュンヤだけだったのかも知れない。
「・・・まぁ・・とにかく、2人ともそこへ並べ。送り返すぞ、忘れ物はないな」
「あ、そうだ制服制服!」
そう言われたジュンヤはあわてて今まで着ていた制服を脱ぐ。
いつの間にかすっかり馴染んでしまっていたので
いざ返すとなるとちょっと寂しい気もするが借り物は借り物だ。
「でもすみません洗濯もせずに返しちゃって・・」
「・・いや、かまわない」
全部たたんで最後に帽子を重ねて一式ちゃんと返品したが
それを手渡した拍子になぜかライドウに頭を軽く撫でていかれる。
それはあまりに自然な動作だったのでジュンヤはほとんど気にならなかったが
横で見ていたダンテだけがちょっとムッとして軽く睨む。
ライドウはそれを知ってか知らずかそれを綺麗にスルーし
2人を送り返すための定位置に立たせ
ふところから何か小さな板か棒のような物を取り出して
聞き慣れない呪文のようなものを詠唱しはじめた。
するとそれはジュンヤ達のいる地面の狭い範囲だけを光らせ
その周囲の空間だけを徐々にゆがめていく。
「では色々あったが達者でな。
今後このような事にならないようそちらでも気を付けろ」
「はい!本当にありがとうございました。
仲魔のみんなにもよろしく伝えておいて下さい!」
しかしそう言って手を振った直後
ずっと沈黙を通すかと思っていたライドウが何を思ったのかふといったん目を閉じた後
周囲の音にかき消されない、けど静かなよく通る声でこう言い出した。
「・・俺は・・君に1つ言い忘れていた事がある」
「え?」
「俺の葛葉ライドウという名はサマナーになった時に襲名した名。
生来の名は『神崎 純一郎』という」
そのなんでもないような告白に足元にいたゴウトがぎょっとして毛を逆立て
ジュンヤの目が一瞬でまんまるになった。
だってその名前自体にあまり馴染みはないが
それは確実に、しかもまったく思いもしなかった線で聞き覚えがある名前だったからだ。
「・・君の行く世界に何があるかはわからないが
君の行く先にほんのわずかでも希望と幸があることを・・俺は願おう」
どんどんかすんでいく視界の中で
それがライドウの言った最後の言葉になった。
そしてその世界と切り離される直前、ジュンヤは小さく何かを言った。
だがそれはライドウという名でも彼の本名でもない。
それに思わず一歩踏み出しかけた所をダンテに止められ
周囲の音も景色も消えかかっていたので伝わったかどうかはわからない。
ただそれが聞こえたのかどうかわからなかいが
消える間際に見たあの大人びて無表情な白い顔は
その時確かに、こちらを見て微笑んでいた。
ギギギギギ ふッ
「おっと」
ごわーーん
何かがきしみ、何かが開いたような音がした後やってきたのは落下感。
少し大きな音を立てて着地した先は鉄の床で
それは確かヨヨギ公園の建設現場にあった鉄の高台だった事を思い出す。
「・・さすがにターミナルに直接ってワケにはいかないか」
そう言いながらダンテは横で膝をついていた相棒から手を放し
ぽんとその頭をはたいてやるが、そこでなにか様子がおかしい事に気がつく。
少しは喜ぶか怒るかするかと思ったジュンヤがなぜか完全な無反応だ。
ただ目の前を見たまま微動だにせず、ずっと落ちた時の状態で固まっているので
ダンテは少しして心配になってきた。
「・・・オイ、どうした、相棒」
さっと目の前で手を振ってみるとようやく気がついたのか
ジュンヤは何か恐ろしげなものを見たような目をしてこう言い出した。
「・・・・・・あの人・・・・・でも・・」
「?だからどうした。あの青白くて黒いのが何か言ったのか?」
「・・・言った・・けど・・」
「・・オイ」
「・・・・・・・」
「・・オイ、起きろ、1人で呆けてないでワケを話せ」
1人で黙られるのもしゃくになってきたダンテはその肩を掴んでこっちを向かせ
べちびたと往復で頬を軽くはたいてやった。
やってから怒られるかと思ったがそれでもジュンヤは何も言わず
さらにしばらく沈黙し、ようやく重い口をゆっくり開いた。
「・・・あの人・・・葛葉ライドウって言う名前なんだけど・・
でもそれ、襲名して受けついだ名前で・・・・本当の名前・・別にあるって言ってた」
「?それがどうかしたのか?」
「・・あの人の本当の名前・・・・・・神崎純一郎。
俺のじいちゃんと・・まったく同じ、同姓同名だ」
「あぁ、そうな・・・・・んだと?」
一瞬まるっきり興味がないので聞き流しかけたその事実にダンテの声がちょっと裏返る。
「俺の名前・・純矢っていうのは母さんのお父さん
つまりじいちゃんから一字もらった名前なんだって・・父さんが言ってた。
実はただの偶然で同姓同名なだけなのかも知れないけど・・
でも言われてみれば・・」
思い出す限りの目鼻の顔立ち、余計な事に手をさしのべたがる性格。
若くして悪魔なんていうものに関わっていてヘンなものにも好かれ
そのくせその仲魔を悪魔とかいう垣根を越えて大事にしたがる性分。
大人びた雰囲気や無口な所はまるで違うが
思い出してみれば確かに共通するような点はいくつかあるし
それにダンテの感じたあの言いようのない違和感も
ジュンヤの血縁者に対してだというなら納得がいく。
祖父がサマナーだとかいう話など一度も聞いた事がないし
あの世界の先がこの東京のボルテクスだという確信もないが
彼がわざわざ別れ間際に本当の名前を教えてくれたということは
その仮説は平行世界という説を入れてもかなりの確率で当たっているという事だ。
その結論にずどんと突き当たったジュンヤは突然かーと顔を赤くし
1人で顔を隠して1人で恥ずかしがりだした。
「うわあああぁあ!ひどい!俺!ぜんっっぜんわからなかった!!
いくら何も知らなかったからってよりによって身内に!!
あんなこんなそんなどんなの恥ずかしい所いっぱい見られたー!!」
それはあのヤタカラスに全部聞いた上での事なのだろうが、それにしたってあんまりだ。
じゃあ知らない方がよかったのかと言われると言葉につまるが
あんな最後の最後のこっちがどうしようもない時に教えてくれるなんてあんまりだ。
こうやってじたじたするの見越して教えたのだとしたら人が悪すぎてあんまりだ。
あと最後にあんな顔で笑うなんてあんまりだ。
「とにもかくにもあんまりだぁぁ!!じーーいちゃーーん(仮)!!」
などと1人でもだえて遊んでいるジュンヤにダンテが首をひねった。
「・・しかし別にあっちもある程度の事情は知ってたらしいし
オマエがそう気にする事でもないだろ」
「違ーーう!!俺の精神的大問題だ!
親からもらった身体がこんなになってたり!
妙な事に巻き込まれてたり次元違いの迷子になってたり
妙な事に慣れきってて妙なものに好かれる体質になってたり
何よりこんな妙で派手で強引で危なくて(ドガーン)で(ブブー)な人と関わってるなんて
もう恥ずかしくて田舎に帰れないじゃんかよー!」
「・・・・・」
勢いでもれたストレートな本音にダンテは素性の悪さで実家に紹介してもらえない
甲斐性なしのダメ彼氏の気分になった。
しかしそれだと名前を呼ぶ時、無意識に先に呼んだ理屈もなんとなくわかるし
自分がなんとなく襲いかかった理由だって昔やった事を思い返せばスジが通る。
とか言ったら殴られるだろうから黙っておくが
まさか二代に渡って縁があるなんてよっぽど強い縁があるんだろうな
とか言ったらやっぱり殴られるだろう。
とかどう考えても殴られそうな事を思いつつ
ダンテはまだ1人じたじたしているジュンヤの頭をダンテはポンとはたいた。
「別に気にすることなんか何もないだろ。
黙って立ってるだけなら最高にいい男だとでも説明しときゃいい」
「そりゃ自分で言うことじゃない上に誉め言葉じゃないから!
あぁああ!すみませんごめんなさい!ライドウさ、じゃなくてじいちゃん!
今さっきの事とか俺のこととかこの人の事とか一刻も早く忘れて!
そんで出来ることならあんまり変な事に関わらないで普通に暮らしてー!」
とか1人で空のない空に向かって騒いでるジュンヤをよそにダンテは1人苦笑した。
そりゃ絶対無理だ。
悪魔なんてものに関わっていて普通に暮らせるワケがないし
大体あれがオマエの身内だっていうのなら
あんな事言われて忘れられるはずがない。
そしてダンテはふと思う。
あの無表情で無機質に見えた青年の別れ間際のあの言葉。
「希望と幸があることを願う・・か」
見た目や性格はまったく違うように見えたが
やはりその根本にあるものはやはり同じだったのかも知れない。
そう思うとダンテは少し可笑しくなった。
だとするともう少し話でもすれば仲良くなれたかも知れないが
それにあれが本当にジュンヤの血縁だとしたら少しやってみたかった事もある。
「しかしあれがオマエのじいさんだったとしたら惜しいことしたな」
「?・・なんで?」
イヤな予感をさせつつ一応聞いてみると
ダンテはその予感を見事に裏切らずジュンヤの肩にぽんと手を置きながらさらっと言った。
「そういうヤツに会ったならこう言うのがセオリーなんだろ?
『お嬢さんをオレにください』ってな」
ぼーーーん
妖精達がいなくなり、かなり静かになった工事現場の高台から
突き出しで飛ばされた赤いコートが宙を舞った。
一方そのころ、急に静かになった神社では
誰もいなくなった地面を見ながらゴウトとライドウのプチ反省会が始まっていた。
「・・まったく、言う必要はないと言ったのに。
あんな土壇場で言ってしまうのかお前は」
「・・『言うな』とまでは言われていない」
ライドウはしれっとそう言い放って反省している様子はまるでなく
そこから彼の意図を読みとることはできない。
でも帰り間際のあっちのあの様子からして
今ごろ向こうで起こっている事の想像はなんとなくつく。
「だが連中今ごろきっと混乱しているぞ。
いくらこちらに影響のない先の時代の連中とは言え、余計な情報を与えてどうする」
「何も知らずに帰ってしまうよりはいいかと思った」
「・・・それだけか?」
しかしそれにライドウは答えず
ただ黙って少し前まで騒がしい連中のいた地面を見つめた。
「・・ゴウト」
「?何だ」
「俺は今まで漠然と任務をこなしてきたが・・1つ目標ができた」
「ほう、何だ急に」
少し意外そうに見上げてくるゴウトに
ライドウは木々の加減でうす暗い空を見上げて静かに言い出した。
「あの子のいる未来というものは随分と大変そうだ。
そこに直接つながるかどうかはわからないが
俺はそれを少しでも軽くするため、これから励もうと思う」
その大規模なようで実は身内の心配してるだけという小さな目標に
ゴウトはネコながらにちょっとヘンな顔をした。
「お前はいつから・・・あぁ、いや、親バカ思考は元からか」
「馬鹿というほど馬鹿のつもりはないし、それが悪いことだとは思わない」
「・・・・・・・。まぁいい。
お前1人でこの帝都をどうにかできるようには到底思えんが
その心構えは大切にするがいい」
「そうする事にしよう」
そう言ってライドウはマントをひるがえし、暗い道を迷いなく歩き出す。
ゴウトは少し呆れたように耳をふせていたがすぐその後を小走りに追い
黒で統一された2つの姿は暗い木々の闇へうもれて見えなくなった。
さてさて、この世界と後のボルテクスがつながるかどうかは定かではないが
この世界にいたサマナーの青年が今回の事件を期に
任務にやりがいを見いだしたのは確かなようである。
それが親バカなのかどうかは不明なまま。
『いーや、ぜってーに親バカ、いや孫バカってのかありゃ』
『ふふ、ライドウちゃんらしいゆうたららしいねぇ』
『?ヘンなの。でもニンゲンっておもしろーい』
『フン、性質上分からなくもないが脆弱な輩め』
『くっくっく・・しかしそれもまた興味深し事なり』
『ぅおおおおおまえぇヴアカじゃないぃいけどヴアカなのかぁああ?!』
『ヒホ?おやばかって何だホ?』
「・・五月蠅いぞお前達」
というワケな超力兵団編でした。つってもあんまり超力でもないかこれは。
最後のオチはフィクションです。
が、私的にはそうだといいなという妄想をぎっちりこめて
このオチをつけるために1人で頑張りました。
なんとかの無駄遣いかも知れませんが。
でもこのオチをつけられただけで私的には満足です。
なお仲魔の口調とかは適当です。
あと蛇足としてライドウとその仲魔の説明っぽいものをここらへんに
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