それはまぁ今に始まったことではない。
ストックにいればトールやケルベロスなどと騒動を起こし
外にいれば比較的害の少ない悪魔とまでいざこざを起こし
ジュンヤにちょっかいを出してミカエルと地味なケンカをしたり
挑発のタイミングが悪くてとばっちりをくったマカミとファンシーなケンカをしたり
おまけに雇用前の行動がたたってか、最近雇ったジュンヤにまで変な悪評がつきはじめ
仲魔内では『あれのおかげで我らの主の品位が落とされた』とまで言われている。
戦闘力は認めるが、それに付き従うデメリットも彼には多く存在するわけで
ある程度ならまぁしかたないなとあきらめもついたかもしれない。
だがしかし・・・
「・・・ダンテさん」
「・・・なんだ」
「・・・わざと?」
「故意でできるのかこれは」
「・・・ダンテさんならできそうだと思って」
「残念ながら小細工は専門外でな」
などと話す2人の前にはいつも移動に使うターミナルがある。
ただ問題なのは、いつもメンテもせず故障一つなく元気に回転するその装置が
時々ガツとかごりとか何か引っかかるような音を立て
切れかかった電球のような発光をしながら煙を上げているということだ。
なぜこんな事になっているかというと、理由は簡単。
今ジュンヤの隣に立っている男が興味本位で使わせろと言いだし
嫌そうな顔をする依頼主を無視して適当に操作した。
それだけだ。
いつもなら転送中にはぐれないようにと
ターミナルを使う前には仲魔をストックに戻しておくのだが
この男は色々と例外が絡み合って仲魔という認識を忘れさせる傾向がある。
まぁダンテが何かしら問題を起こすことは今に始まった事ではない。
それ以前にストックへ入れておかなかった自分にも責任があるのだが
しかしどうしてこの男は次から次へとトラブルを起こすのか・・・
などと思うジュンヤの前で問題のターミナルは
変な音をたてつつどんどん回転速度を増し
煙も上がるというより沸騰して吹き出すといったくらいにパワーアップを始めた。
「聞いていいか少年」
「何?」
「こんな場合の対処法はあるのか?」
「んー・・・俺も結構ターミナルと付き合い長いけどこんなの初めてだし」
もう慣れたのかそれともさじを投げてしまっているのか
のんびりと頭をかくジュンヤの前で、マンガのような異常を見せるターミナルは
『爆発まであと10秒。9,8・・』といわんばかりに猛烈に発光し始める。
「「・・・・」」
ジュンヤとダンテは顔を見合わせ
全く同時に背を向けて、脱兎のごとく走り出した。
『だから嫌だったんだよ!もう金輪際ダンテさんは仕掛けのたぐいに触るの禁止!!
というかもう戦闘以外では息もすんな!!』
『だから何もしてないだろうが。・・・ちょっと足で小突きはしたが』
『浮き上がるほど蹴りとばすののどこがちょっとだよ!!
大体トラブルばっかり引きつけてる人がそんな乱暴するからあんな事になるんだろ!』
『人を磁石みたいに言うな。大体便利屋ってのはトラブってこその商売だ』
『・・あ、それ適切。でもだからって!
俺は便利屋でも(ブッブー)な人でもデビルハンターでもなんでもないから
こんなのに巻き込むのやめようね!今度から!』
『・・・今・・・何か驚くほど失礼な事をサンドイッチにして言わなかったか少年』
と言い合う暇があればこそ。
扉まであと数歩という所で、2人の足が後からの引力によって同時に止まる。
2人ともそれなりに力はある方だが
困ったことに魔人の脚力より背後から引きずり込もうとする力の方が強く
一歩進むもうとすれば二歩分後に引きずられ
しかも時間がたつにつれてその力は大きくなっていき・・・
「わ!?」
まず体重の軽いジュンヤの両足が地面から離された。
ガッ!!
しかしそれより速く、素早く片手でリベリオンを床に突き立てたダンテが
もう一方の手でジュンヤの腕を掴んだ。
「つかまってろ」
そう言って、掴んだ手を引っぱり自分の腹に回させ両手で固定させる。
どういったわけかダンテはふとした事で突然カッコよくなる。
一度ジュンヤは普段からそうならいいのにと仲魔にもらしたことがあったが
それはジュンヤが関わっているからいつもは無理だと
よくわからない答えを返されたことがある。
それはともかく。
元はと言えばこの助けてくれている男のせいなのだが
剣一本に2人分の命運がかかってしまった状況は
なんだか今までで一番情けないような気がしないでもない。
「少年、マウス(ピシャーチャ)のスキルに使えそうなヤツはあるか?」
「・・・戦闘から逃げるのはあるけど、これ戦闘じゃないから多分無理」
「じゃあしょうがねえ。2人仲良く情熱的なドラム缶にエスコートされるか」
「嫌だ!あれの暴走は何回か経験あるけど絶対ロクなことにならない!」
「そうか?オレは仕事のたびに妙な場所に飛ばされるが
ロクな事はなくても戻ってこれなかったためしはないが」
などと会話する間にも、ジュンヤを腰にしがみつけたままダンテの足が後へ引きずられ
突き立てたリベリオンがギリリと音を立てて斜めにかたむく。
「って事はやっぱりそんな経験ばっかりしてるダンテさんのせいじゃないか!?」
「だから違うって。オレが経験したのはデカイ魚、ヘドロ、イモムシの巣とかで・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・あ、なんだオマエその汚い物を見るようなま・・・」
ガゴッ!
言葉の途中、リベリオンが引力に耐えかねて床から抜けた。
「っ・・!」
「チッ!」
2人が同時に小さな声を上げる。
普段ならこの後同じターミナルのある場所へ転送されるが
この状況であのターミナルがそんな親切なことをしてくれるとは思えない。
以前にどこかまったくわからない場所へ飛ばされたこともあったが
その時助かったのは協力者がいての話。
しかし今度は助ける人間がもう誰もいない。
ジュンヤは即座に判断して、しがみついていた片手を振り上げた。
ダンテをはぐれる前に安全なストックへ戻すのだ。
しかしダンテもそれに気付いたらしい。
阻止するべくリベリオンを持っていない手を
今まさに振られようとしていた細い腕にのばす。
ジュンヤが成功すればダンテはストックへ。
ダンテが阻止に成功すれば強制隔離はなくなるが
別々の場所に放り出される可能性もある。
そして・・・。
キイィィィィーーーーン
独特の金属音を立ててターミナルが回転をやめ
何事もなかったかのようにしばらくして元の状態にもどった。
そこには何者の姿もなく
ただ床にリベリオンの跡が残るのみ。
ジュンヤの行動が速かったか
ダンテの行動が速かったか。
どちらにせよその結果を知るものはすでにこの世界から姿を消し
ここではないどこか遠くへ送られた後。
確かめるすべはどこにもなかった。
好き勝手シリーズの前置きです。
これ以後ジュンヤとダンテ、コンビだったりどっちか単品だったりで
別ゲーム世界でのパラレル話を書きます。
何を書くかは気分次第。
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