.お題『怖くない』くないの別バージョン 

「・・・あ、来た。おーいミカ」
「・・すまんな主。少し遅れてしまった」
「待ち合わせ時間きっかりに会うのは遅れたとは言わないって。
 それより今日は大丈夫だろうな」
「無論だ。言いつけ通り社用車ではないし、別の場所に待機させてある」
「ならいい。・・でもごめんな。そっちも色々と忙しいのに」
「いや、済ませることは済ませてきたので問題はない。
 しかし主、車も送迎もそれ相応の身分と格式を考えて行うべきでは・・」
「だーかーら何度も言うようだけど、俺はここでは普通の高校生なんだから
 高級外車で校門前まで迎えに来るのはどう考えたっておかしいんだよ。
 しかも乗ってるのがとびっきりの美人と会社社長みたいな男だったりしたら
 俺は次の日学校でどう言い訳すればいいんだ」
「・・そういうものだろうか」
「そういうものなんだよ。・・あ、ミカ携帯鳴ってる」
「ん・・サマエルだな。・・もしもし私だ。どうし・・・・・何?」
「?」
「・・・わかった。ではこの先に大通りがあったな。そこで10分待とう」
「・・サマエルなんだって?」
「近くの道路で待機していたらしいのだが・・
 警察の職務質問とナンパが五月蠅いらしくてな。
 撥ねて排除するわけにもいかんのでしばらく周囲を走ってくるそうだ」
「・・・・・。ま、いっか。じゃあ待ってる間コンビニで時間つぶしでもしようか」
「承知した」
「?・・何その手は?」
「その傘では小さいだろう。こちらの方が多少雨はしのげる」
「え?でもそれだとミカの方が濡れないか?」
「しばらくの間だけだ。心配はいらん。それに主は強風が苦手だろう」
「な!なんでわかるんだ?!」
「それだけ両手でしっかり傘を握りしめて身を縮めていれば自然とわかる。
 それに先程からずっと私の風下に入ろうと努力しているだろう」
「・・・へんな所でカンがいいなミカは」
「はは(傘を上げて場所を作ってくれた)まぁとにかく入れ。
 少々窮屈だろうが壁と重しの役割くらいは努めよう」
「・・・・ホント、こんなところにはカンが働かないくせに・・・」
「?なんの話だ?」
「なんでもない!(傘をたたんでどんとぶつかってきた)」
「うぉっと!?・・こら主、壁になるとはい言ったが壊す壁になるとは言っていない」
「(びったりひっつて)・・いいから傘、飛ばされないようにしろよ」
「・・あぁ成る程、それで強風が苦手なのか」
「うるさいな!壁はしみじみ笑わない!ほら歩け歩け!」
「おかしな主だ。いやこれは嵐ゆえの変調か?」
「怒るぞ!!」
「すまん」



でも笑ったまましっかり寄り添ってくれてるといいなと思った次第で。





.12番目とやんちゃくれ (3ダンテと青編の兄)

「あ、コイツか。アイツの毛嫌いしてる先の自分ってのは」
「・・・(あ、若い時のダンテだと思った)」
「ふぅん。見た目はただ老けただけって気もするが
 しかしこんなナリであのお嬢ちゃんにベッタリとはなぁ」
「・・お嬢?」
「アンタが母さんなんて呼んでる、あのひょろっこくてハンパなガキ悪魔の事だ。
 遠くから見るとそんな感じするだろ」
「・・・・・・」
「しかし人をあれだけ邪険にしたツケというか反動が
 あんなハンパで弱そうな悪魔に向くなんてなぁ。
 そりゃあの性格じゃいい顔しな・・ん?」
「・・・(無表情に手招きしてる)」
「何だよ」
「・・・(拳には〜と息かけて脳天に一撃)」
「いッ・・!?!」




ミカエル直伝、昭和ゲンコツ。
なんとなく書いてみたけどこの構図似合うなぁ。





.大人と子供な夏休み (ダンテと純矢、東京にて)

「・・なぁ少年、さっきから何やってる」
「見てわからないか?夏休みの宿題」
「ずいぶんと原始的な縄に縛られてるんだなオマエ。
 子供は血を吐くほど遊んで永眠するほど寝るのが仕事だろ」
「物騒な例えをするな!そうは言っても夏休みは長いんだよ。
 ある程度勉強してある程度遊ぶ方がいいんだって」
「・・おいまさかオマエ、それを全部きっちり計画立ててやってるなんて事は・・」
「その通りだけど、なんか文句あるのか?」
「・・・・なんて辛気くさいガキだ。俺の若い頃と大違いだ」
「人のことガキって言う前に、そのガキの前でアイス食べつつ
 ゴロゴロ転がるのやめてくれないかな」
「休める時は力の限り休むのがオレのモットーだ」
「俺にはヒマ持て余してかまって欲しい犬にしか見えない」
「オマエが難しい顔してるから和ませてやってるんだろ」
「(シャーペン突きつけて)あっち行け
「冷たいヤツだな(とりあえず邪魔にならない所に移動)」
「・・・(黙々とやってる)」
「ところでオマエ、成績はいい方なのか?」
「・・悪くはない・・と思う。・・中の上くらい」
「学年ランクでなら?」
「・・えーと・・大体10位に入ったり入らなかったりするけど」
「・・オイ、そんな頭のいいガキが
 休みの間までそんなもんに没頭する必要なんかないだろ」
「あーもー!うるさいなそこの子供大人!そんなにヒマなら誰かと遊びに・・
 ・・行ったら確実に問題起して俺が困る」
「よく分かってるじゃないか少年」
「ほめてない!」
「ん?なんだもう片づけるのか?」
「どこかの子供大人がうるさいから先に遊びに行くんだよ!
 キャッチボールでいいんだろ!」
「(アイスの棒ゴミ箱に投げ入れ満面の笑みで)そうこなくちゃな」
「・・・あ、そっか。予定なんて立てても
 ダンテさんがいる時点でそんなの台無し同然だよな」
「何ぶつくさ言ってる。さっさと行・・うお!(尻蹴られた)」



そりゃ遊んだ事のない大人は遊びたくなるだろうってな話。





.年末の憂鬱 (青編のミカエルと純矢)

「あ、おかえりミカ・・って、どうしたんだ?なんかえらくゲッソリしてるけど」
「・・ここ数日・・やたらと飲み屋や宴会に引きずり出されて・・
 今日ようやく体調不良を理由にして・・・帰ってこれた」
「あ、そうか。今そんな時期だもんな」
「(靴をぬいでゾンビみたいに歩きながら)・・飲み屋・・料亭・・宴会・・カラオケ・・・
 一体何がそう高額なのかがわからん高級バーにはしご酒・・
 この忙しい時期なぜ私が・・そんなものにかり出されねばならんのだ・・」
「(その背中押して)・・うん俺はそのへんよく知らないけど大変らしいな」
「・・この年末戦線の合間をぬってまで、なぜそのような疲れる行為をせねばならん。
 しかも一部会社の経費とか言うではないか。
・・私はあんなもののために働いているのではなく・・監視と経験と実益をかねてだな・・」
「(コートとカバンもいで)でもそれしか楽しみがないって人もいるみたいだしなぁ」
「このクソ忙しい時に・・しかも疲れ切った身体にむち打ってまで・・
なぜ年明けにしない・・私は帰りたいのに・・何が悲しゅうて仕事でしか顔を合わせたくない連中と一緒くたにそんな時間まで・・」
「よしよし、わかったからもう寝ような。ぶつくさ言ってもまた明日仕事なんだろ?」
「(壁におでこくっつけて)・・もういらん・・酒とタバコ臭さも・・酌も鍋もいらん・・
私は家に帰りたいのに・・ただ真っ直ぐに家に帰って主の顔を見たいだけなのに・・」
「(その肩ぺたぺた叩いて)はは、とにかくお疲れ様。よく頑張ったな。
 今度気に入ったって言ってたうどん屋につき合ってやるから、今日はもう休もう。
 ストックと布団、どっちにする?」
「・・・・・(じーと顔見てから)・・ストック」
「ん、それじゃお休み。また明日な(ストックにしまう)」
「(中でぐしゃと倒れる音がして、字にも書けない豪快なイビキをかきだした)」
「・・・大人の世界も大変だなぁ」



と、思ってた方は年末多数いただろうって話。





.『時にはそんなことも』 (青編の母子買い物帰り)

「醤油とパンとタマゴに牛乳っと
 それにしてもタイムセールなんて変な事知ってるなブラックは」
「しかしわざわざ時間を指定して遠い場所に行かずとも
 近くて常時安い店があるのに、なぜわざわざ遠い方を選択する」
「・・ほら、最近食べ物って色々あるだろ?
 ブラックも最近安いよりも質の方を気にするようになってさ。
 ちゃんと質を認めた所でないと買い物しないらしいんだよ」
「俺達の腹が(自主規制)の(左に同じ)ごときで壊れるとも思えないが」
「・・・そりゃそうなんだけど、気持ちの問題らしい。
 あとそれ人前で堂々と言わないように。国際的に問題になりそうだから」
「この国には正直に言ってはいけない事が多い・・ん?
 ・・母さん、こんな所にカビがあるが」
「あぁ、これはカビじゃないって。タンポポのタネだ。
 前に黄色い花が咲いてるの見たことあるだろ?
 それがしばらくしたらこんな風に綿毛をつけるんだ」
「植物のタネ・・なのか?」
「そう。(1つとって吹いて飛ばし)こうして風にのる方が
 普通に落ちるよりも遠くまで行けるだろ?」
「ではそれは人が吹いて飛ばすものなのか?」
「いや普通は風で勝手に飛んでいくものなんだけど
 こうして飛ばすのも遊びの1つなんだよ。
 なんならどっちが遠くまで飛ばせるか、競争してみようか?」
「・・(同じように1つ取り不敵に笑う)望むところだ」
「よーし、じゃあいくぞ。せーのっ・・!」



「ブラックただいまー」
「・・?(一緒に行ったバージルは?という目)」
「えーっと・・バージルさんはちょっとストック。
 それよりピンセットとか綿棒とかどこにあったかな」
「・・・(言われた物を出しながら疑問の顔)」
「え〜・・その・・帰り道にタンポポのタネ飛ばし競争したんだよ。
 でもバージルさん・・息を思いっきり吸い込みすぎて
 ・・・タネが・・・うん・・・鼻にね」
「・・・・・・・・・」



その時黒騎士は妙な敗北感を感じた。

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