それは誰も通る者のいなくなった広いトンネル。
その静かなトンネルの中をコツコツというブーツの音と
ふよよ〜というなんだか緊張感のない音がやってきます。

その音の元はさっきまでバイクに乗って爆走していたのですが
緊張感のない音を立てている生き物がそのあまりの速さにねをあげたので
しばらく前に移動手段は徒歩になりました。

しかしバイクを運転していた男は文句を言いませんでした。
だって散歩というのは乗り物に乗っているより歩いた方が楽しいのですから。

「・・カーッ!ぺッペ!ア”〜口乾イタ。
 シッカシ人間ッテノハアンナ代物ヨク平気デ乗ッテラレルナ」

男の横でけっけと何かを吐き出そうとするみたいな口をしていた
車に轢かれた白キツネみたいな生き物が呆れたように言いました。

「いや、本当ならちゃんとした防護器具があるんだが
 あいにくあれに積んでなかったし、あったとしてもオマエには無理だ」

そう言ってその隣を歩いていた赤いコートの男が変な生き物の顔をつつくと
軽いのか柔らかいのかその両方なのか
その生き物はふよんとつつかれた方へ行ってへよんと戻ってきます。

「ンナニ急イデドコヘ行コウッテノカネ人間様ハ」
「そう言うな。人間ってのはオマエと違って空が飛べない。
 だから地面をなるべく速く移動するしかないんだよ」
「ソンナモンカ?オレハ別ニソウ・・・」

しかしその変な生き物、マカミという生き物は
もう少しで出口というところにきてピタと動きを止めます。
赤いコートのダンテという男の方もそこで同じように足を止めました。

そして目の前には何か赤い壁のようなものが出現し
目の前には何かが黒く渦巻いて白い何かを形成します。

見るとそれは白いオオカミのようでした。
ですが普通のオオカミなら何もないところからいきなり出てきたりはしません。

「今マデ見テキタやつニ比ベリャマトモナ形シテルガ・・コレモ獲物ニ入ンノカ?」
「なんだ、同じ犬科だとやる気が出ないか?」
「・・マァ何ツーカ、あいつノ影響ッテヤツデナ」

マカミの主人は動物好き。
例え相手が凶暴でも明らかに敵意があったとしても
可能なら出来るだけ交渉で解決しようとしていました。

「・・・確かにこれがアイツなら、交渉するかマウスのスキルで逃げるところだな」

けれどこの世界でそんな事が通用しないのをダンテは百も承知です。
いつもの拳銃を素早くマシンガンに持ち替えて
間合いを取りつつ白いオオカミを見据えました。

「気が乗らないなら上で見学してろ。コイツは動きは速いが上には飛ばない」
「ウィ。ヤバクナッタラ言エヨ」
「なるわけないだろ」

ダンテはそう言って取りあえず2匹いたオオカミの手近な方に斬りかかりました。
しかし動き出すと剣では捕捉できないのでマシンガンを乱射します。
オオカミの突進は時々強力になるようですが
飛んでよければ当たらないのでダンテは慌てません。

そしてまず乱射の末に一体が倒れます。
けれどダンテはその時ふと
1人の少年が白くて大きな番犬と戯れていた時の事を思い出してしまい
一瞬反応が遅れ、普段なら当たりそうもない体当たりを受けてしまいました。

「ナニヤッテンダこら!集中シロ!」
「チッ・・!」

ダンテは気を取り直して銃を握りなおし
白い弾丸のように動き回る相手の軌道を予測して
ようやく残りの一体を倒しました。

しかしその途端その場から白い煙が2つ飛び上がり
出口を飛んで遙か上空へと逃げるように消えていきます。

「・・逃ゲタノカ?」
「飼い主がいるんだ。この先で会うことになるだろうが・・
 しかし正直あそこはあまり好きじゃないな」

オ?とマカミは思います。
この男に好きじゃないとまで言わせる相手というのは
相当やっかいな相手のようです。

そんな相手ならあまり自分も会いたくないところですが
走り出したら止まらないこの男の性格はよく知っているので
マカミはやだなとは思いつつも結局付き合うことにするつもりでした。

「シカシアンナ最中ニボーットスルナンザラシクネェナ。
 何考エテヤガッタンダ?」

と聞いてはいるけれどマカミはもう分かっているのでしょう。
本人はニヤリとしているつもりな、けれど抽象画みたいな変な顔を向けてきて
ダンテは肩をすくめて小さく笑いました。

「お察しの通りの事を考えちまったんだよ。
 誰かと同じようにアイツの影響ってやつでな」
「ソリャ難儀ナコッテ」
「お互いにな」

とは言うものの2人の様子はあまり苦労しているようには見えず
むしろお互い楽しんでいるかのようなとても楽しそうな様子です。

ともかく一見奇妙な、けど中身は結構似ている2人(?)組は
赤い壁の消えた出口を並んで進み始めました。



しかしのんびり歩いて外へ出たのはいいのですが
外に出た瞬間またあの赤い壁に囲まれ
今度は山羊の悪魔数体と鳥の悪魔に囲まれました。

「・・息ツク暇モナシカヨ」
「あぁ、そういや思い出したがここはそこそこに歓迎の激しいところだったな」
「思イ出スノガ・・遅ェンダヨ!」

ドスドスと意外に軽快な足取りで迫ってくる山羊の悪魔をかわし
マカミは上空でこちらを狙っていた鳥の悪魔に飛びかかりました。

この変な生き物は見た目にはあまり強そうには見えませんが
とても強い悪魔の配下をしていて合体という強くなる方法を繰り返しているので
強そうに見えなくてもちゃんと単身で悪魔と戦うことができます。

「上ノ掃除ハシテヤルカラ下ハ自分デナントカシロヨナ!」
「OK!手早くな!」

このハンターと轢かれたキツネ・・いえ神獣は見た目には変な組み合わせですが
この2人、いえ、1人と一匹、なぜか性格が似ていて馬が合うためか
こういった時のコンビネーションは絶妙です。

上を飛んでいる鳥の悪魔たちは炎の魔法で
下の走る山羊の悪魔たちはダンテが攻撃をかわしながら剣とショットガンで
お互いの邪魔にならないように、しかもお互い離れているのに
ちゃんとお互いを援護できるような順番でうまく退治していきます。

「ラスト・・!!」

そうしているうちにかなりいた悪魔達はダンテの斬った山羊の悪魔を最後に
赤い壁が消滅したので全て倒せたようです。
少し前に鳥の悪魔を全滅させて待っていたマカミがふよよと降りてきました。

「お疲れさん」
「ばか言エ。コンナモンデ疲レルカッテーノ。
 ソレヨカサッキノ分、でぃあらまシトクカ?」
「それこそバカな話だ。あんなくらいがケガの内に入るか」

けれどマカミは何やら上を向いて考えるような様子を見せた後
くるんと宙返りして傷を治すスキル(ディアラマ)を使いました。

「おい・・」
「治セルトキニ治シトケ。・・ッテ、ドッカノ誰カサンナラ言イソウダロ?」

ダンテはちょっと憮然としていましたがすぐ肩をすくめて笑いました。

それは他の連中には優しいのに
自分にだけは態度の違う世話焼きな少年が使っていた言葉です。

ここにはいませんがいたら確かにそう言って
ムッとしながらも同じように傷を治してくれたでしょう。

「飼い犬は飼い主に似るってのは本当だな」
「人ノコト言エルカヨ」
「それもそうか」

普通ならはぐらかすところですがダンテは素直に認めました。
この犬は自分とどこか似ているので誤魔化す意味がないのです。

「デ?次ハドッチニ行ケバイインダ?」
「そこのビルの下から道路へ出る」

今いるところは広いのですが、所々崩壊していて行ける場所は限られています。
ダンテは以前ここへは来たことがあるので迷いませんが
最初に来たときそれなりに迷ったのは内緒です。

ともかく2人はビルの下の入り口
元は車が出入りしていたろう場所に入りました。

が。

「・・・ん?」

入って出たら元のビルの下でした。

「アリ?ナンデ変ワッテネェンダ」
「あぁ、すまん。間違えた」

ダンテは頭を掻きつつもう一度入り口に入ります。

が。

入る。出る。やっぱり元のところ。

「・・・・・」

もう一回入る。出る。以下同文。

「オイコラ!視点切リカワッテンダヨ!コッチダコッチ!」

嫌なカメラワークで無限ループしそうになった所を注意され
ダンテは平たい生き物に背中をぎゅうぎゅう押されつつ
ようやく広い道路へ出ることができました。

「ッタク、ナンデアンナ単純ナ所デ同道メグリニナッチマウンダヨ」
「今思ったんだが・・今のは敵のワナか何かか?」
「悪魔ぼこぼこ出セル奴ガソンナせこいワナ仕掛ケルカ!」

けどそこは指摘されなければ確かに迷いそうな場所
・・というかどっちに行けばいいか絶対迷った人いるに違いないような場所です。

そう言えばワケも分からず降りた地下通路でも似たような事があったような・・

などと思いつつ広い道路を歩いていると
突然画面の下に何だか長いバーが出現しました。

下に出て長いということは敵の悪魔の
それなりに体力のある悪魔がいるという事ですが・・。

「ン?ナンダ?中ぼすカナンカカ?」
「あぁ、確かここは悪魔に取り付かれた戦車か何かがいたはず・・
 なんだが・・・」

しかしバーの上の名前はなんたらタンクとは表示されていません。

ダンテは目をこらしました。

「?・・違うな。タンクじゃない。
 ORAN・・GG・・・?」


オラン・・なんとか?


オランなんとか = オランウータン
+中ボス

オランウータン+中ボス = 駅のアレ


「「ゴリラ!?!」」


ダンテとマカミは同時に叫びました。

オランなんとか。
名前はめんどくさいのでオランなんとかとゴリラとしか認識していませんが
それは以前狭い駅の中で遭遇して狭い中でひどい目にあわされた
あの巨大でゴリラのような悪魔のことです。

見間違いか人違い、いえ悪魔違いであってほしいとは思っても
暗がりから近づいてくる大きな猿科のシルエットはあのゴリラに間違いありません。
しかも前と同じく子分のつもりの小ザル(今回はホムロムシラ)も一緒です。

「チッ!あれだけでもう十分だってのに!」
「ケド今度ハ避ケルすぺーすガアルカラナントカナルダロ?」

しかしダンテは答えませんでした。
ハンターのカンからしてなんだかイヤな予感がしたのです。

もちろんその予感は
速攻で当たりました

ブン!
ズドン!

「うッ?!」
「ギャフ?!」

それはいつぞやの飛びかかってくる攻撃です。
そこは以前の駅内とは違い広いので回避に余裕があるかと思いきや
今度は場所が広すぎて相手がどこにいるのか見えず
周囲が半端に薄暗いので落下地点にできる影が見えにくく
前よりも回避が難しくなっているのです。

ダンテはマカミもろとも踏んづけられましたが
横に転がってなんとか体勢を立て直すと
へろへろしていたマカミをひっ掴んで道路横の歩道に飛んで逃げました。

「クソが!前より状況が悪化してやがる!」
「・・っチチ〜・・でかいクセシテ飛ブノガ速スギ・・」

ブン!
ズドン!

と文句を言ってる間にも狭い歩道にまで巨体は降ってきました。
上の方は安全かと思っても大ザルの狙いは正確で
狭い所に逃げると逆にこっちが追いつめられるハメになるようです。

ダンテはめげずに再度起きあがり
今度はちょっとだけ難を逃れたマカミを掴んで
再び広い車道に降り、子分の小猿に見えるムシラ達をかわしながら走りました。

「・・狭かろうが広かろうがやっぱり逃げ場なしとはな!おいマフラー!」
「・・イテテ・・小ざるダロ!行ケ!」

短いやり取りでお互いの役割を決めると
ダンテとマカミはそれぞれ別方向に飛びました。

マカミの方はそう苦戦はしなかったのですが
問題は敵の姿の見えにくく攻撃モーションの分かりずらかったダンテでした。

腕を振る攻撃や衝撃破は回避できるのですが
ジャンプで来る攻撃だけはあまりに速く射程範囲も広いので
どうしても回避することができません。

火は効きそうにないので衝撃の魔法(ザンダイン)でムシラ達を倒していたマカミが
事あるごとに踏まれるダンテをさすがにちょっと心配していましたが
ともかく銃を乱射するダンテを時々ゴリラが踏むという
なんだかちょっと妙な戦闘は続きました。

そしてしばらくして両方の体力ゲージにカラの色が見え始めたころ
ブチ切れて魔人化したダンテによりオランなんたらは退治されました。

結局ダンテはゴリラジャンプを一回もかわすことができず
踏まれまくってしこたまボロボロになり、肩で息をする状態にまでなっていましたが
とにかく勝ったのはダンテなのでこの際細かいことはぬきです。

「・・・オイ」

そんな状態のダンテにムシラ達を退治し終えたマカミが恐る恐る寄っていくと・・

「・・・あ」

ボロボロになったハンターは何か思い出したかのように声を上げました。

「・・・そう言えばこのゴリラ・・・強制戦闘じゃなかった」

つまりそれは無視してさっさと先へ進めば
いらない苦労はしなかったということ。

マカミはしばらく黙り込んだ後
ダンテの頭にがぶりと噛みつきました。




ともあれ身も心もちょっぴりボロボロになりつつ
けど身体の方は一応マカミのディアラマで治して先へ進むと
今度は薄暗い道路の向こうから何やらギョロギョロという
あまり聞き慣れない音が聞こえてきます。

「・・ナンダヨコノ変ナ音ハ」
「さっき言った戦車だな。
 動きがトロくてそう激しい攻撃はしてこないから
 上についてる筒の前に立たないように注意さえすればそう慌てる必要ない」
「フーン」

そんなもんかと思いつつ、まだシンプルな噛み跡をおでこに残したダンテと
尻尾の真ん中にしぼられたようなシワをつけたマカミは
薄暗くて不気味な音を立てている道路を進みます。

すると前になんだか大きくて動いているけどその場からは動かない
大きな箱のような物が見えてきました。

「ナンダアリャ?アンナモンデモ悪魔ナノカ?」
「いや、この箱自体は人間が作ったもので
 本体はそこでゴチャゴチャしてるゴミみたいなヤ・・」

ボガーーン!!

それは大砲の前に立たなければ大丈夫で
そんなに動かないと思っていた不意をつかれた一撃でした。

どこからか飛んできた砲撃に直撃され、ダンテはまともにすっ飛びました。
マカミの目が見た目には分かりませんが真一文字になります。

「・・・オメェ、サッキ慌テナクテイイッテ言ワナカッタカ?」
「っ・・くそ!もう1体いやがった!」

どうやら1体だけかと思っていたら奥にもう1体いたようです。
こんな攻撃をまともにくらうというのは非常に格好悪い話ですが
ダンテは気を取り直してランチャーをかつぐと、上にあった歩道にジャンプし
相手の砲弾に当たらないように注意しながら一体づつ無人の戦車を倒しました。

マカミは手出しせずそれを見届けてから口を開きます。

「確カニ攻撃ハ単純ダッタケドヨウ・・」
「・・・言うな」

こういった場合日本には油断大敵という言葉があるのですが
ダンテはあまり難しい言葉を知りません。

「ともかく行くぞ。喉元過ぎれば熱さを忘れるってヤツだ」
「・・・ナンカソレ、使イ方違ウヨウナ気ガスルケド・・・マァイイカ」

その代わり自分に都合のいい言葉だけはしっかり覚えているようでした。



オオカミ、山羊、鳥、ゴリラに戦車
2人はそんないろんなものにいろんな歓迎されつつ歩いていましたが
今度はバラバラとなんだかうるさい音が聞こえてきました。

それは鳥の羽音のようにも聞こえますがそれにしてはうるさく
とてもしつこく時間がたつにつれ攻撃的と言えるほど激しくなっていきます。

「・・ウルセェナ。今度ハナンダヨ」
「あぁ、ここからはヘリとのチェイスになる」
「ヘリ?」
「ほら、そこで浮いてる鉄の塊だ」

ダンテが指したのは暗い空に浮いてこちらを向いている人の乗り物ヘリコプター。
けれどマカミにはただの変な塊にしか見えない代物でした。

「アレはここで倒しても別のが追ってくるからな。今は逃げるぞ!」
「ハ?ア、オイ!逃ゲルニシテモナンデ建物ノ中ナンダヨ!」

などとツッコミをしている間にも建物の中に入ったダンテは
階段のまったくない変な建物の中をジャンプで上がっていき
しかも下からはどういったわけかヘリと一緒に下一杯の炎までせまってきます。

「ウオ!帰リ道一切ナシカヨ!オッカネエ散歩道ダナ!」
「・・・・・」
「ン?ドシタ?」
「おいマフラー、次はどこに上がるんだ?」

下を炎、横をヘリで上にしか逃げ場はなし
そんな状態で普通にそんな事を言うダンテにマカミはへにゃと下に落ちかかりました。
けど落ちたとしても火が効かないので平気です。

「・・・オメェ、ヨクソレデ今マデ生キテコレタナ」
「タフって事だな。で?どっちだ?」
「・・(何か言いかけてやめた)〜エ〜〜・・ソッチ」
「よし」

タフだけど方向音痴で若干ドジなハンターと
道も知らないのにいつの間にかその案内係なっている神獣。

そんな2人はしつこく追跡してくるヘリの攻撃をかわしながら
なぜか火災になってしまったビルを上がり屋上に出て
さらにそこからビルの間を飛び越し
いつの間にか集まりだしてきた鳥の悪魔などに追われつつ
階段もなしにビルの外壁をジャンプだけで上がります。

「ッカー!シツケェナ!ドコマデ追イカケテクル気ダヨアノ鉄トンボ!」
「しかしこうしてるとアイツとチェイスした時の事を思い出すな!」
「あほ!コレトテメェノヤラカシタ嫌ガラセナンカガ比ベモノニナルカヨ!」
「だがここまでしつこくなかったろうし、逃げ場のない所に追い立てたりしてないだろ」
「ケドアイツハコンナびるヲ飛ンデ上ガッタリデキネェシ
 ドコヘ行コウガ狭イ場所ガホトンドダッタロウガ」
「・・しかしさすがにこうただ黙々と追い回されるだけってのもな。
 アイツみたいに何か騒ぐかわめくかしてくれれば少しは張り合いがあるんだが・・」
「・・・テメェ反省ノ色マルデナシカヨ」
「で、マフラー、次はどっちだと思う?」
マタカヨテメェハ!?

などと会話をしつつビルをジャンプで登り
時々迷ったりしながら変な2人組は上へ上へと駆け上がって行きます。

そうこうするうち最上階にたどり着き
そこでダンテはようやく上がるのをやめて銃を持ち替えました。

「さてと、それじゃここでお相手するか」
「ツッテモアレ一匹ダケジャ張リ合イガナインジャナイカ?」
「いや、あれはアレで人の作った代物だからな。
 ホラ来たぞ!!」
「ウオッ?!」

ゆっくりした動きに似合わない速さで広範囲に飛んできた弾丸をかわし
ダンテとマカミは別方向へ移動しました。

「ナルホド?普通ノ悪魔ヲ相手ニスルノトハ一味違ウッテカ!」
「狙いは正確じゃないみたいだがな!」
「・・オメェサッキモ似タヨウナ事言ワナ・・ギャ!?

黙れこんちくしょうというつもりで
ダンテは顔のくっきりしていた嫌がらせ用レッドオーブを投げつけ
そう広くもないビルの屋上を走りました。

確かにヘリから飛んでくる飛び道具はあまり正確ではないのですが
何しろ元が鉄の塊なので銃だけではなかなかダメージがいかず
マカミのザンダインも鉄には効果が薄いようなので
倒すにはちょっとばかり時間がかかりそうです。

「クッソ、メンドクセエナア。アノ上乗ッテブッタ斬ルトカデキネエノカ?」
「さすがのオレでもあそこまでは飛べないだろ」
「デモソコニ足場アルジャネェカ」

そう言ってマカミが鼻先でさしたのは屋上の四隅にある柱のようなもの。
そう言えばそれは時々飛んでくるミサイルを避ける盾としか見ていなかったのですが
蹴って上がれない高さではありません。

「なら・・やってみるか!」

ダンテは飛んできた弾丸をかわし
柱を足場にしてさらにジャンプして上へと上がります。

そこに上ったのは初めてでしたが
そこから見る景色が意外と良いのにダンテは少し驚きました。

そう言えば今までずっと登りっぱなしだったので
高いところにいるのは当たり前なのですが
こうして下を見ることが出来たのも久しぶりかもしれません。

そしてちょうど夜とあって下には都会ならではの夜景が広がっています。


『あ〜あ。こんな高さに来れるならせめて夜景が見たかったな』


それはいつだったか
とある塔を登っていた時にある少年がもらした言葉でした。

その世界に夜はなく
どこへ行こうが偽物の太陽と砂漠のような大地が見えるだけなので
ずっとそこを歩き回っている少年なら、きっとこれを見たがったでしょう。

アイツが残念そうにする事はあまりないから
出来ることならこれを持って帰ってやりたいが・・

ドガガガガ!!

「!!」

などとぼんやりしていると横から連続で弾丸を叩き込まれ
ダンテは倒れそうになる足をなんとかふんばらせました。

「・・・やりやがっ!」

ガガガガガ!!

しかし下にいる時と違ってここにいるとヘリの攻撃がまともに来るようで
マシンガンで反撃しようとすると間髪入れずさっきと同じくらいの弾丸をもらってしまい
ダンテはまともに落ちようとしていた所を飛んできたマカミに拾われました。

「こら!マタ何ぼーっトシテンダヨ!」
「上がれって言ったのは・・オマエだろ・・!」

しかし拾われたと言ってもダンテは重いので完全に浮くわけではありません。
マカミはよっこらせとばかりにダンテを地面に降ろし
素早くディアラマをかけます。

それにしても思い出すたびに不覚を取らされるとは
あの少年、普段は害のないくせに離れると結構悪質です。

「・・なぁマフラー」
「アン?」
「オレ達の足枷ってのは可愛い顔してるクセに
 外れたら外れたでまた重たい足枷になりやがるな」

マカミは一瞬きょとんとした顔をしましたが
やがて鼻先からプヒー!と変な音を立てました。
おそらく思いっきり吹き出したのでしょう。

「ンジャアソンナモント関ワラナイ方ガヨカッタカ?」
「いいや?ハンデとしては・・悪くないぜ!!」
「ケッ!物好キ野郎メ!!」

上から飛んできたミサイルをギリギリのところでかわして
2人は別方向に飛びました。

ダンテは手にしていたマシンガンをランチャーに持ち替え
マカミは相談したわけでもないのに時々発射される誘導ミサイルのおとりになります。

「ソラソラコッチダコッチ!」
「こっちもあるがな!」

ドンという音を立ててランチャーの弾がヘリに着弾しました。

さすがにあまり敏捷性のないヘリでは
すばしっこい2人を相手にするには無理があるのか
悪魔のヘリはしばらくマカミを追いかけつつダンテを攻撃したりして
空いた方から衝撃破やランチャーの攻撃をくらい
次第に追い込まれていきます。

今まで追い回していた立場のヘリですが
ここへ来てようやくこの2人は同時に敵に回してはいけない事に
気付くことが出来たでしょうか。

そして間もなく無人のヘリは変な2人組の交互の攻撃に耐えかね
爆音を立てて炎上しがくんと機体を傾斜させて落下を始めました。

しかしそのヘリの残骸はワザとなのか偶然なのか
ダンテ達のいる方に向かってまっすぐ落ちてきます。

「オ、ナンダ最後ノヒトアガキデモ・・・ニャ!?

避ければ当たらないだろうとのんびりかまえていたマカミですが
横からいきなり胴を掴まれたかと思うと
今までいた地面に激突したヘリを上に見上げながら
重力に従い下へ下へと結構な速度で落ちていきます。

誰のせいかはもちろん言うまでもありません。

オメェナア!ナンデソウドッカラデモぽんぽんぽんぽん落チタガルンダヨ!」
「前に言ったろ。飛べないから速く移動するって」
「地面ニ向カッテ落ッコチルノハ移動ッテ言ワネェンダヨぼけ!
「ハッハ!日本語ってのは難しいなマフラー!」

やはり見た目には分かりませんがマカミの目がジト目になります。

「・・・・・・オメェ実ハタンナル趣味ダナ?」

ダンテは答えずニヤリと笑い
マカミを腕に引っかけたまま高い高いビルを落下していきました。


彼がこんな事をするのは一度や二度ではないのですが
でもたまにはそのまんま頭から落ちないかな〜などと
本気で思ってみたりしていたマカミなのでした。









このハンターさんにはどうしてもツッコミ役が必要なのだと実感した話。

ちなみに柱に上がって狙い撃ちされたのは実話。
景色が見れたのも実話です。
暇な人はためしてみよう。

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