.話的には年末の憂鬱の続きです

「・・あ、いたいた。やっぱり時間前に来てる。
 おーいミ・・(と呼びかけて固まる)」
「(待ち合わせの看板の下でずーんと突っ立ってる)」
「・・・・(あまりに浮いたその姿に本気で帰ろうかと思ってる)」
「・・?なんだ主、来ていたのなら・・」
「!(ダッシュで逃げた)」
「な!?こら!何故逃げる!?」

数分後

「(人気のない路地裏で停止して)・・あ、あのさ・・聞いていいか?」
「(あまり走った経験がないので息切れして)・・な・・なん・・だ」
「そのあらん限りの勝負服は・・一体どういったお考えで?」
「・・き・・聞くところに・・よれば・・こういった場合・・
 最初に会った時に・・着ていた物を着用すると・・印象的になるとかで・・」
「・・そりゃ印象的は印象的だよな。
 早くスクリーンかハリウッドに帰れって怒鳴りたくなるけど」
「ではこれは間違った選択なのか!?」
「どこでそんな知識つけたのかは聞かないけど
 少なくともうどん屋に行くだけの格好としては激しく間違ってる」
「ぐ・・!フトミミの奴め!
 出かける時におかしくないかと散々念を押したというのに!」
「それって行き先を言わなかったからじゃないのか?
 うどん食べに行くだけだって言ってたらもうちょっと指摘してくれたと思うけど」
「・・・(頭抱える)」
「・・・まぁ、そんなマフィアみたいな格好でご飯食べに行くのも何だから
 会社に行くときに着る普通のスーツとかに変えようか。
 ・・あ、あとサングラスもいらないから」
「・・・すまん」
「こらこら、そうしょげない。誰だって最初は失敗の一つや二つするもんだろ?」
「・・それは・・そうだが・・・」
「ほら、とにかく行こう。(腕引っぱって)俺お腹空いたしさ。
 今日はミカのおごりでいいんだよな?」
「・・無論だ。店のメニューを全て頼んでも問題ない」
「いくらなんでもそこまで食べないって。
 それじゃ行こうか。ただしあんまり人前で主とか言わないように」
「ど・・努力はして・・みる」
「・・強気なのか弱気なのかどっちなんだよ」


でもそれ以外の呼び方なんて知らないボス。





.こじんまりしたうどん屋にて

「・・決まったか主」
「ん〜・・じゃあ梅ワカメうどん。ミカは?」
「私は最初から決まっている。では店員を呼ぶぞ。
(がたんと立ち上がって片手上げ)店主!オーダーー!!」
「(その顔面ひっ掴んで席に引き倒す)」
「うっご・・!?な・・何だ主!?」
「・・まさかと思うけど1人の時までそんな豪快な注文の仕方してないよな」
「・・(まだ掴まれたまんま)しておらん。
 いつもならあちらから即座に取りに来るのだが」
「・・ならいい。でもあんまり目立つ事するなよな」
「目立っていたか?」
「うん無駄かつ場違いに・・あ、すみませんただの注文です。えっと俺は・・」

数分後

「・・しかし・・なんか変な感じだな」
「(割り箸を横にわって)何の事だ?」
「いや、変と言うか意外というか・・ミカがカレーうどん好きだなんてなぁ」
「いや別に好きというわけではない。注文に迷った時と
 これと言った決め手を考えていなかった場合これを取るだけだ」
「つまりはお気に入りって事なんだろ?」
「いや私にすればただ無難な選択と言うだけのもので・・」
「わかったわかった、そういう事にしとこう。
 とにかく食べよう。いただきまーす」
「?イタダキマス」
「(で、ちょっと手をつけて動きが止まる)」
「(その目の前でずーぞぞーーと凄い音立ててすすってる)」
「・・・・」
「?・・どうした主」
「・・・いや、なんか豪快に食べるなぁと思って」
「こういった物は音を立てて食うのが礼儀だろう」
「それおそばの方の話・・いや、それ以前に
 カレーうどんでその荒っぽい食べ方は・・どうかと思う」
「(黄色い口して)何か問題でも?」
「(おしぼり取って)・・そこら中に飛んでる。テーブルはまぁいいとして
 顔とか服とか・・髪にまでついてるし・・ほらここも」
「(ごしごしやられながら)食後に拭くのはダメなのか?」
「目の前でそういうのやられると無性に気になるんだよ。
 豪快に食べるのが悪いとは言わないけど・・
 げ、こんなとこにも飛ばしてる!器用に汚すなぁもう・・!」
「・・・・(後にすればいいのにと思いつつ結構幸せ)」

てな具合なのを店のおばちゃんに笑われてたと・・。





. カレーも3文字に入るのかとふと疑問にも思う

「あー食べた食べた。見た目多くないけど結構お腹がふくれるなぁ」
「・・(あっちこっち拭きつつ)しかし主、先程何か追加注文していたな」
「あぁ、あれは別腹ってやつ・・あ、ほら来た」
「?・・饅頭?」
「さくらもち。日本の和菓子だよ。ほらここに巻いてるのがサクラの葉」
「確かに桜色だが・・中身は何だ?」
「あんこだよ。そう言えば和菓子の中身って大体あんこだよな」
「(箸で切ってるのをじーと見てる)」
「なんなら味見してみるか?そう甘くもないし」
「い・・いや、いい。私は甘い物はそう好きではな・・」
「大丈夫だって。ほら(半分にしたのを鼻先に突き出す)」
「・・・(微妙な顔して)何か妙なニオイがするのだが」
「こういうニオイなんだよ。最初はちょっと気になるけど味には影響ないから」
「・・・・」
「ささ、社長、遠慮なさらずお一つ」
「(見られてないのを確認して素早く食った)」
「どうだ?」
「・・・(赤い顔でお茶すすって)食えん事もない」
「はは、そっか。でもこれで1つわかった事があるな」
「何だ?」
「どんな未知の食べ物でどんなイヤそうな顔しても
 鼻先に突き出すとみんなちゃんと食べてくれるってこと」
「!?まさか主!?」
「うん。ダンテさんもバージルさんもそうだった。
 でもスパーダさんに唐辛子センベイ試した時のはちょっと罪悪感残ったな。
 それからしばらく姿見かけなかったし」
「・・・・(生まれて初めてスパーダに同情した)」
「ところでさ、うどんとさくらもちのさくらって両方三文字だよな」
「・・そうだが・・それが何か?」
「今思ったんだけど・・それって口にするとちょっと幸せにならないか?」
「は??」
「うどん、さくら。なかま、かぞく、おかし、おやつ、結構あるだろ」
「・・・いや・・あるだろと・・言われてもな」
「(さくらもち頬ばりながら)ミカは頭固いから難しいだろうけど
 こういう何でもない事に幸せ感じるのは結構重要だぞ。
 あ、いや別に三文字じゃなくてもいいんだけどな」
「・・主の言いたい事はよくわからんが・・
 私は別に言葉にせずとも幸せだと感じる事は可能だ」
「?たとえばどんな?」
「・・(ふいと目をそらし)言ってしまっては効果がなくなる」
「え?そんな微妙なものなのか?」
「私としてはそう思うだけだ。・・それより土産はどうする。
 このまま手ぶらで帰ってしまっては残った連中に睨まれるぞ」
「・・あ、そうか。じゃあここでおはぎ買っていこう」
「ではそのように」
「あ、それとミカ」
「?」
「機会があればまた来ような」
「っ(微笑みかけてギリギリこらえる)・・もちろん、主がそれを望むならば」
「(にこにこして見てる)」
「?なんだ」
「いや別に。言ったら効果なくなるだろ?」
「・・・(赤くなって目をそらし)意地の悪い主だ」




以上、近所のうどん屋を思い出しつつ我流に楽しんだ話でした。
うどんもさくらもデートも三文字。

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