え!?ダンテさんて双子なの!?
『・・・・・・その心底イヤそうな顔はなんだ少年』
『あ、いやその・・こんな無茶苦茶な人がもう1人いるのかと思うと
 なんだか世界が終わってそうだなって
てててててーー!?
『残念ながらオレとあいつは正反対でな。
 性格も好みも考え方もスタイルもポリシーもなにもかも違う』
『・・・(頬をさすりながら)・・・その人もデビルハンター?」
『・・・・・・』

一瞬妙な間が空く。

『・・・ダンテさん?』
『・・・・・・さぁな。何年か前に会ったきり、今頃どこでどうしてるかわかりゃしないが』
『あ・・・ごめん、変なこと聞いた』
『別に。オマエが気にすることじゃない』


気にする事じゃないって言ってたけど
ダンテさんはその時ほんの一瞬だったけど、ちょっと寂しそうな目をしたから
俺はそれっきり、ダンテさんにその話をしなかった。

けれどそれが後になって
こんな事になるなんて
俺もダンテさんも仲魔のみんなでさえも


きっと絶対、誰も想像できなかったと思う。








「・・・そういえばさ、ケルって兄弟がいたっけ」

雑巾を前足で器用に使い、床を拭いていたケルベロスが顔を上げる。
純矢はブラックライダーと一緒に洗い物をしていて視線は流し台にむいていたが
それはあきらかに自分に対する質問だ。

「・・・オルトロスノコトカ?」
「うんそう。性格が違っててケンカしたりとかしたのか?」
「イヤ、シナカッタナ。性格モ大差ナイウエニ弱点モ同ジダッタカラナ」
「あ、そうなんだ」
「なんだ。ひょっとしてあの狩人の事を思い出したのかい?」

隣の部屋で洗濯物をたたんでいたフトミミが純矢の考えを先読みした。
もう予知の力はないと言っていた鬼神だが、その名残がどこかにあるのか
フトミミは純矢の思いを読むのがうまい。

「うん、まぁね。昔双子のお兄さんがいるって話してたのを思い出してさ」
「・・・・・・アンナモノガモウ一体イルノカ?」

ケルベロスの鼻に露骨なシワが寄った。

「でも性格とかが違うって言ってたから
 少なくとも出会い頭で会話の通じる、凄くマシな人だと思うけど」

純矢も時々サラリとひどい。

「ブラック。ダンテさんのお兄さんなら種族は魔人って事になるのかな」
「・・・そうなる・・・」

食器から目を離さず、興味なさげに淡々と答えたブラックライダーだが
元々が元々で付き合いも長い純矢は大して気にしなかった。

「でもどうしたんだい急に。
 もしかして人恋し・・・いや、魔人恋しくでもなったのかい?」
「はは、まさか。俺一人っ子だし、こうやって1人で留守番する時も多かったから
 兄弟がいるっていうのはどんな感じなのかと思ってさ」

湯飲みを手にしたブラックライダーの手が一瞬ぴたりと止まる。

「それにダンテさんと正反対なお兄さんってのも興味あるしね」
「・・・我ハ反対ダ。アノ男トカカワルトマズ間違イナクロクナコトニナラン」
「でもダンテさんが自分で似てないっていうんなら
 変なトラブル呼んだりしないと思うけど」
「ソレハソウダガ・・・」

まだ何か納得いかないような顔をするケルベロスに
純矢は皿をゆすぐ手を止めないまま微笑んだ。

「会ってみたいと思わないか?似てるのか似てないのか。
 ダンテさんより強いのかとか、どんな性格してるのかとか
 実はダンテさんが頭が上がらないとかあるかもしれないし」
「ナルホド、ソレハ興味アルナ」
「・・あ、なんだか想像してるうちにますます会いたくなってきた。
 でもダンテさんの話ぶりからすると、なんだか放浪癖があるみたいだし・・・」

それと同時にダンテのあの様子からして、少しワケありなようだったと純矢は思う。

「しかし君は不思議と変わった悪魔を引きつける何かがある。
 魔人であるその彼と出会わない可能性がゼロではないな」
「・・・そうかな?」

言われてみれば、純矢はダンテやトール、サマエルやブラックライダーなど
元敵だった色々な悪魔を味方にしてきている。
フトミミの言うようにダンテとつながりのある兄と
いつかどこかで出会う可能性もないとは言えない。

そう思うとあまり良いことのなかった悪魔の身体も苦にならないものだ。

「それじゃあいつか会ってみたいな。ダンテさんのお兄さん。
 会って話をして、どうやったら弟があんな性格になるのか聞いて・・・」

ガシャ

さりげにひどい事を言おうとした純矢の横で落下音がする。

ふと見ると、ブラックライダーが珍しく少し困ったようにこちらを見ていた。

「?ブラック、ど・・・」

どうかしたのかと問いかけようとしたその時だ。


ジュッ!!

「・・つッ!?」

猛烈な高揚感が身体に走り
同時に消えていたはずのタトゥーが一瞬で全身に浮かび上がった。

「主!?」
「高槻!」

ケルベロスとフトミミが同時に声を上げる。
しかし突然の異常はそれ以上おこらず、少しもしないうちに身体は落ち着きを取り戻し
勝手に浮き出たタトゥーもまたすっと音もなく消えてしまった。

「・・・・な・・・なんだろ、今の・・・・」

今までにない現象に純矢が立ちつくしていると
心配そうにケルベロスが鼻をよせてきた。

「・・・主、大丈夫カ?」
「・・・あ・・うん。今のところ・・・なんとも」
「マガタマが暴走したのかい?」
「・・・いや、マガタマが暴れたような感じじゃなかった。
 なんて言うか・・・一瞬何かが身体に飛び込んだような・・・」

主っ!!
「うわ!?」

いきなりふってきた大声に純矢は思わず耳を押さえた。
こんな大声を出す悪魔は仲魔うちで1人しかいない。

「・・トール!声が大きい!」
『・・・あ、いやすまぬ。
というか大変だ主!!
「わ・・わかったからもう少し小声で落ちついて話して」
『いやしかし今・・ぬお!?
『・・主、私だ』
「ミカ?」

何かふんづける音と共に声がミカエルに切り替わる。

『たった今こちらで問題が発生した。
 ・・・いや、トール、お前はあれを見張っていてくれ。
 主の方で何か異常はあったか?』
「・・・ちらっとだけあったけど、今は何とも。どうかしたのか?」
『侵入者だ』
「えぇ!?」

仲魔達のいるストックは、純矢と契約した悪魔しか出入りできない絶対領域。
今まで外部から、まして内部からも他の悪魔に進入されたためしなど一度もない。

「どうかしたのか高槻?」
「ストックで侵入者だってミカが・・」
「何ダト!?」
「・・・・・」

ブラックライダーが今まで水の出っぱなしだった蛇口を黙ってしめた。

「それでミカ、侵入者って?」
『それが少々妙なのだ。姿形は我々が今まで見たことのない形状をしているのだが
 いきなり現れたかと思えばすでに仮死状態だった』
「え?いきなり瀕死なのか?」
『うむ。今の所こちらに害を加える力はないようだが
 それでも残された魔力から判断してかなり高位の者だ。油断はできぬ。
 ・・・どうする?主よ』
「・・・うーん・・・」

純矢は意識を集中してストックの気配を探ってみた。
するといつもの仲魔達の中心に、あまり見慣れない悪魔が倒れている。
うつぶせでよくわからないが、それはよく見ると人型をしていて
確かに今までに見たことがない悪・・魔・・・・

「・・・ん?」

そこでふと、純矢は軽い違和感をおぼえた。

人型の悪魔は別に珍しいものでもないが
しかし悪魔と言われると何かが違う。

そもそも純矢はこの悪魔のいない平和な東京で
悪魔と契約した覚えなどまったくない。

それに主である純矢の意志を通さずストックへ進入できるわけが・・・

・・ぽん

首をひねっているとふいに肩を叩かれる。
見ると終始無言だったブラックライダーが相変わらず顔色の悪い・・
という以前に血色のほとんどない顔に表情を乗せないまま、こう言った。

「・・・主・・・・望みは・・・かなえられた・・・」
「は??」

純矢は一瞬何のことかわからず変な声を出したが
ブラックライダーが言うことの大体は、その場でかなり重要な言葉ばかりだ。

望みとは何か。
なぜストックにいきなり悪魔が出現するのか。
そしてさっきの違和感。

そのすべてを総合して出た推測に、純矢はぎょっとして目を見開く。

「・・・まさか!?」

答えを求めるように見た先の無口な魔人は
肯定するかのようにゆっくりとうなずいた。

「・・・偶然が・・・重なったのだ・・・創世主よ・・・」


その短い言葉で
純矢の中にあった疑問のパーツが、音を立てて1つに組み上がった。


純矢は一瞬真っ青になり、いきなりダッシュして家で一番大きな部屋に駆け込むと
猛烈な勢いで古いちゃぶ台や座布団を片付けだした。

あわてて追いかけてきたケルベロスとフトミミには
純矢が何をしようとして慌てているのか、もちろんわかるはずもない。

「主、一体ドウシタ!?」
「えっ・・・と!ごめん!俺、多分いま凄く間抜けな事した!」
「は?」
「事情は後で説明する!ともかくフトミミさんとケルは戻って。
 ちょっとやることができたんだ。ミカ!」

すっかり片づいた部屋の中心に立った純矢は
かつて悪魔と戦っていた時のように指示を出し、最後に大天使の名を呼ぶ。

「立ち会ってくれるだろ?」
『外へ出すつもりか!?』
「うん。確かめたいことがあって」

言いながらフトミミとケルベロスに目配せすると
人サイズの鬼神は了解したとばかりにうなずき
大型犬サイズの魔獣は少し納得いかないような顔をしつつも地にふせる。

純矢はそれを確認し、素早く手を振り上げた。
それに呼応するようにタトゥーが全身に浮き上がる。

『しかし主・・!』

バシュ!

ぐばさ!!

むおッ!!?

フトミミとケルベロスの入れ替わりでいきなり召喚されたミカエルは
大きな翼を近くにあったタンスに引っかけてうめいた。

しかしジュンヤはかまわず部屋の中央に手を向け
ストック内の真新しい気配に意識を集中させる。

それはよくよく意識すると
以前ストックにいた、自己中で皮肉屋で、それでいて腕の立った
赤いコートの魔人によく似ていた。

そしてブラックライダーが台所からゆっくりやって来たのと
それが召喚されたのはほぼ同時だった。

ドン!

畳の上に場違いな魔法陣が浮かび、すぐ後に現れたのは・・・・

まさに『魔』の『人』。

それは人の形をしているが、その大きさはダンテより二回りほど大きく
身体には皮とも甲殻とも見える鎧をまとっていた。
その鎧の隙間からはチラチラと何かが発光していて
かたわらには岩を切り出したかのような巨大な剣がごろんと1つ。

そして一番純矢の目に焼き付いたのがその頭頂部。
うつ伏せで顔はわからないが、後へ撫でつけられた頭髪はどこかで見た白銀だ。

ジュンヤはタトゥーそのままに頭を抱えた。

「・・・・・えぇっと・・・・・ブラック」
「・・・・・・」
「・・・なんとなく想像できるけど・・・一応説明してくれるか?」
「・・・わかった・・・」


ブラックライダーの途切れ途切れな説明をつなげるとこんな感じになる。

まずジュンヤはこの東京を再生させた、いわば創世主だ。
再びまるごと世界を作る力まではないが
ある程度の事はこの東京内でできてしまうのだという。

次にこの瀕死の悪魔は、以前誰かに倒されたが
何かの理由で死にそこなったらしく、冥界の浅い所を漂流していたらしい。
冥界はどこにでも入り口があるので、もちろん東京からでも干渉可だ。

そこでだ。

ジュンヤがとある悪魔に会いたいと願うとする。
その悪魔は冥界で意識もなくただ漂流していた。
つまり、創世主ジュンヤの思いがその悪魔を冥界から勝手に拾い上げ
そのまま勝手に自動契約してしまったと、簡単に言えばそう言うことらしい。

「・・・・はぁ〜〜・・・・」

ブラックライダーの話を一通り聞き終えて
ジュンヤは特大のため息を吐き出した。


・・・俺もダンテさんの事とやかく言えないな・・・。


そんなことを考えながら。

「・・・主?」

翼をしまい一般的なスーツ姿になったミカエルが心配そうに声をかけてくる。

しかしジュンヤは色々な困難にぶつかってきた人修羅
あまりいつまでもクヨクヨしない。

「・・・ミカ、ブラック、何かあったらフォロー頼む」
「蘇生させる気か!?」
「ほっとくわけにもいかないだろ。
 それに勝手に契約したって言っても一応仲魔なんだから大丈夫・・・
 ・・・・・・・だと思う」
「・・・自信なさげに言われると、こちらとしても困るのだが・・・」

などと言いつつも、しっかりとミカエルは変化させていた槍を元にもどし
臨戦態勢をとるようにかまえる。
ブラックライダーも無言で懐から小さな鍵を取り出し
いつもの天秤に戻して静かにかかげた。

悪魔と戦うことはなくなっても、かつての信頼関係は薄れることはない。

ジュンヤは目だけで二体の仲魔に感謝すると
未だ動かない人型悪魔のそばに膝を突き、ポケットに手を入れて道反玉を探す。
反魂神珠でもよかったが、全快されたとたん暴れられるとやっかいだ。

少ししてそれは見つかった。
不思議なことに東京に戻ってからも
アイテム類は使う機会がないのにポケットを探すとすんなり出てくる。

「まさか東京でこれを使うことになるとは思わなかったけど・・・」

言いながら倒れている魔人の上にそれをかかげ、魔力を込めた。

すると淡い光が発生し、それはまるで意志を持つかのように
身体中に傷を残し倒れていた魔人の身体を音もなく包む。

そして・・・

・・・・・・・コツ

魔人の大きな指先がかすかに動いた。

次の瞬間


ダン!!


今まで石のように動かなかった魔人が弾かれたように跳ね起き
かたわらにあった巨大な剣を掴むと同時にそれをジュンヤの首めがけ・・


「止まれ!!」


それは今まさに首をはねようとしていた魔人の剣
その魔人に槍を突き立てようとしたミカエルと
絶対零度を放とうとしていたブラックライダー
その全ての動きを同時に止めた。

「今ここにいる全員に命令する!今から戦闘行為は一切禁止だ!」

いつもと違う強い口調にミカエルはたじろいだ。

「しかし主・・!」
「いいね」

ぐっと睨み付けられた目は見事なまでの金色。
こうなってしまってはいくらミカエルと言えども意見はできない。
普段なら主従関係にうといジュンヤだが
その分強い命令を出した時、主の魂と契約した悪魔はけして逆らえないのだ。

それはどうやら剣を向けてきた魔人も同じらしい。
しばらく剣先をジュンヤに向けたまま固まっていたが
やおら肩の力が抜けたかと思うと岩のような剣がゴトンと地に落ちる。

そして少し疲れたかのように片膝をついた魔人に
ジュンヤはほっと胸をなで下ろした。

「えっと・・・」

さて何を話すべきか。

話しても通じるかという疑問がないわけでもないが
もし目の前の魔人がジュンヤの推測する人物であるなら話は通じるはず。


そう、言葉が通じるにもかかわらず
話もクソもなくいきなり襲いかかって来たあの男とは逆に。


「・・・俺、高槻純矢っていいます。
 元人間の今悪魔で、あなたを呼んだ張本人です」

魔人は答えず、顔を上げただけだが
その一瞬仮面にも見える青白い顔は、やはりどこかで見たような顔をしていた。

「間違ってたらすみません。ダンテさんのお兄さんですか?」

大きな肩が一瞬ぴくりと動揺したように動く。
ミカエルがさっと身構えるが、ジュンヤはそれを手だけで制した。

「信じてもらえないかもしれないけど・・・
 俺、ダンテさんと戦ったり、助けてもらってたりしました。
 それでその時お兄さんの話をちょっと聞いて
 それでその・・・色々な要素とか、偶然とか・・・空きとかあって
 なんだか俺も知らないうちにこんな事になっちゃったんで・・・」

どう説明していいものかとジュンヤは次第にしどろもどろになりだす。
助けを求めるように仲魔に目を向けると
ミカエルは『ファイトだ主!』とばかりにガッツポーズをくれ
ブラックライダーは『・・・いいからはよ言え・・・』とばかりに手をしっしと振る。

どっちもたいがい薄情だ。

「・・・・・・えっと・・・じゃあとりあえず身体、回復させますね。
 なんだかボロボロみたいだし・・・」

そう言って手をかざそうとすると、魔人は軽く身を引いて
油断なく剣に手を伸ばそうとする。

それはまるで手負いの獣のようだが
そんな事でこと仲魔に関して愛情深いジュンヤはひるまなかった。

「大丈夫ですよ。2・3秒じっとしてれば済みますから」
「・・・・・・」
「お願いします。少しガマンして下さい」
「・・・・・・」

熱意に押されたのか、それとも根負けしたのか
鎧の魔人はようやく剣から手を離し、ジュンヤはほっとする。

「じゃあいきます。力は抜いてて下さい」

そう言ってジュンヤは手をかざして魔力を集中させた。

実の所、回復魔法は仲魔よりもジュンヤが最も得意とする分野だ。
なので久々に使うディアラハンは何の問題もなく発動した・・・

はずだった。

ビシ

「へ?」

ビキ  バリ  ピシ!

ところが傷を癒す光が消えた直後
いきなり魔人の全身に変な音を立てて亀裂が入り始めた。

「え!?ちょっとなんで!!?」

回復どころか逆に崩壊を始め
あげくうなり声とともに両手をついた魔人にジュンヤは慌てた。

「ミ、ミカ!メディアラハンを・・・!」
「しかし主、効果は主のものと同じなのだぞ?逆効果になる可能性もある」
「でも・・!」

そうこうしているうちに魔人はいきなり獣のような咆哮上げ
立ち上がったと同時に突然身体から吹き出した青白い炎に全身を包まれた。

ブラックライダーがわずかに顔をしかめ
ミカエルが銀の槍を真一文字にかまえる。
だがジュンヤは・・・

「っ・・こんのぉ!!

ヤケクソのように叫んで
あろう事か炎上する魔人の背中に飛びつき
尋常ではない色の炎を手で消そうとやっきになった。

「主!!」
「平気!」

服が焼けこげる臭いはしたが、今体内にあるのはマサカドゥスだ。

これくらいでダメージはうけないが
しかしどうがんばっても大きな身体を取り巻く炎は消えてくれず
魔人の身体は何か剥がれ落ちる音と共に次第に小さくなっていく。

だめだ!だめだ!!ダメだ!!

服がこげるのもかまわずジュンヤはもがく魔人の首にしがみつき
身体を使ってでも炎を消そうと必死になった。

だが身体の下でうなり声を上げ、のたうち回る大きな身体は
青い炎にまかれながらどんどん崩れていく。


視界が青く染まる中
ジュンヤの脳裏に色々なことが浮かんで消える。


突き付けられた剣  最初にきいた命令 

白銀の髪  どこかで見た顔立ち  手負いの獣のような魔人


そしてダンテがほんの一瞬見せた寂しそうな目。

「ーー
!!!

ジュンヤは前のめりに倒れていく魔人の背で、手を伸ばして何事かを叫んだ。

何を言ったのか自分でも、近くにいた仲魔達にもわからなかった。

ただその時確かに望んだのは
名前も知らないこの魔人を助けたいという

ただそれだけの、単純で強くて確かな願いだった。






「・・・・、・・・・るじ・・・・主?!」

聞き慣れた声で肩をゆすられたジュンヤはうっすらと目を開ける。

まず目に入ったのは自分のこげた服とタトゥーの消えた自分の腕。
声の方に顔を向けると難しい顔をしたミカエルと
相変わらず無表情のブラックライダーが見えた。

「無事か主!?」
「・・・・・・っと・・・・あ・・・うん・・・」

返事はしてみたものの、なんだか目がちかちかする。

・・・何が・・・どうなったんだっけ??

魔法を連発した後のような疲労感を感じながら
純矢はとりあえず落ちついて、ぼんやりする頭をゆっくり整理してみることにした。

・・・確か・・・回復させたつもりが・・・逆効果みたいになって
・・・火がついて・・・あわてて止めようとして・・・

・・・それから・・・

「あ!?」

そこで純矢はようやく覚醒し、がばりと身を起こした・・
・・が、そこで自分が何か妙なものを下敷きにしていることに気がつく。

ふと手元を見ると・・

いぃ!!?

さっきまで魔人のいたはずの場所に体格のいい男が倒れていて
純矢はその上に馬乗り状態になっていた。

その頭は髪型が少し違うが、やはり見覚えのある白銀。

しかし純矢が驚愕したのはそこではなく


その男が全裸だった事だ。


ぃぎゃーー!!?なッ!ちょっと!なんでだぁ!?

純矢は慌ててそれから転がり落ちると
バタバタとはうようにミカエルの背後に逃げこむ。

似ていないと聞いていたのに
出会い頭に妙な驚かされ方をしたのは迷惑な事にそっくりだ。

ミカ!ブラック!どっちでもいいからシーツか布団!!
 何かかける物持ってきて
はやくーーー!!


そうして自分がひんむかれたわけでもないのに錯乱する純矢の近くで
主人と同じく本来の姿にもどった刀が一振り。

ほんのりと、どこか安心したような淡い光をはなっていた。







DMC3クリアして衝動書きした兄物。1をやってない人にはさっぱりですが
不幸な話をハッピーにねじ曲げるのは楽しいです。

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