「えっと・・待ち合わせはここのはずなんだけど・・
 あ、あの人かな。・・・・あれ?」

「・・・・(むっつりした顔で待機中)」

「・・・人・・・かな。羽はえてるし浮いてるし・・。
 あの〜すみません・・」

「・・・・(一瞬ぎくっとしたような顔をして地面に降りた)」

「えぇっと・・間違ってたらすみませんけど
 ここで待ち合わせをするように言われた方・・ですか?」

「・・・そうだ。手間をかけてすまん。
 私は以前そちらに接触のあったジュンヤというあく・・いや
 ジュンヤという少年の関係者だ」

「あ、ジュンヤ君の。親戚の方・・ですか?」

「いや、近衛、正しくは従者だ。よろしく頼む(手差し出す)」

「・・(ちょっとためらって握り返す)えっと・・はじめまして。
 浅葱ミカです」

「・・・(一瞬顔を引きつらせてやたら複雑な顔をする)」

「?・・あの・・何か?」

「い・・いや・・私はその・・げふん!ごふん!大天使・・・ミカエル。
 主には少し省略されて呼ばれているが・・・・そういう者だ」

「あ、ミカエルさんですね。えっと・・・省略・・・・・え?」

「・・・・・・(バツ悪そうに目だけそらしてる)」

「じゃあ・・もしかしてジュンヤ君があの時言ってた
 同じ名前の知ってる人って・・」

「・・・・・私だ」

「あは、そうなんですか。あはは!それであの時ジュンヤ君困ってたんだ」

「・・・・(穴があったら入りたい心境)」

「・・・・あ、すみません」

「・・・いや、たまたまの話だ。謝る必要はない。
 それよりも妙な事で呼び出させてすまないな」

「いえ、ちょっとびっくりしたけど謎がとけましたし
 ジュンヤ君の知り合いの人なら悪い人じゃないってなんとなくわかります」

「・・その言葉、主に聞かせてやりたかったな。
 それに主のそばには我らのような異形の者は多くいても
 あの年代で同年の友人が周囲にいないのは不憫でならん」

「あの・・ミカエルさんて、ジュンヤ君のお父さんじゃないんですよね?」

「ち・・違う、外見上そう見えるがそうではない。
 ・・とにかく、用件は済ませておこう。かまわないか?」

「あ、はい。それじゃあ(手を広げる)」

「(槍が当たらないように気をつけながら)
 あまり言えたような立場ではなくなっているが・・汝に神の祝福を」

「・・ふふ、こうしてもうの凄く久しぶりだからちょっと新鮮」

「・・?(離しながら)そちらに家族は?」

「色々あって・・今はちょっと」

「・・・そうか。すまない」

「いえ、大丈夫です。頼りになる知り合いの人もできましたし。
 あの、それよりもミカエルさん、もしかしてジュンヤ君には
 今みたいな事した事ないんですか?」

「・・・(ちょっと考えて)ないな。
 そもそも主の育った環境にこのような風習はなかった」

「でもこういうの、男の子は嫌がるか照れるかもしれないけど
 一度くらいはした方がいいと思いますよ」

「・・いやしかし・・私にとって主は絶対の存在であり
 創造主であり君主であり(以下難しい単語がつらつら続く)・・」

「・・で、とにかく大事な人なんですよね」

「・・・(何か言いかかってそのままうなずく)」

「あと加えて聞きますけれど
 ジュンヤ君って誰ともつながりを持ちたがらないような子ですか?」

「いや、それはない。主はそれを隠しているようだが
 それだけは決してない」

「じゃあそういう大切な事はちゃんと態度で示さないと。
 見た感じミカエルさん口はあんまり上手くなさそうだから
 こういうのは態度で示すのが一番です」

「む・・」

「大丈夫、今日あったばかりの私とだってできたんですから。
 それにジュンヤ君ならきっと拒否したりしませんよ」

「・・・・・そういうものか?」

「同じくらいの子が言うんだからきっとそうです」

「・・・(難しい顔してる)」

「ね?」

「・・・わかった。やってみよう」

「じゃあ・・(両手広げて)ハイ」

「?」

「リハーサルです。いきなりは無理だから練習のつもりで」

「・・・(ちょっとためらって無言でもう一回抱きしめて離す)」

「いけそうですか?」

「・・(顎に手を当てて考えて)おそらくはな」

「じゃあがんばって下さいね。
 無理にはできなくてもいいですから
 その心意気だけはちゃんと伝えて下さい」

「・・・・わかった」

「あとそんな疲れ切ったような顔してると変な心配かけますよ?」

「(頬をぎゅうと伸ばして)わ、わかった。努力・・・はしてみる」

「(苦笑いしながら)・・大丈夫かなぁ・・このお父さんじゃないお父さん」








それは寡黙で不器用なおとんがしっかりした娘に尻を押されるように。

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