「ん?・・なぁそこの銀色さん
もしかしてこの前の死神の片割れじゃないか」
「・・(かなり怪訝そうな顔して)誰だ」
「・・?えぇと・・あんた前に変わった模様の少年と一緒に
ハンガーに転がり込んできた・・・・んじゃないな
その心底不思議そうな顔からして」
「・・それはおそらく双子の弟だ。一緒にいた少年も俺の知り合いになる」
「なんだ。それなら納得。
どうりで同じ顔してるのにえらく雰囲気が違うわけだ」
「・・あまりそうは見えないが、服装からして軍人か?」
「まぁな。そう堅苦しい規律にはしばられてないが・・
あぁ、心配しなくてもその連中なら軽くお茶して騒ぎながら帰ってった」
「俺は何も・・」
「顔見りゃわかる。心配したんだろ?」
「・・・少年の方はともかくとして、愚弟の方は殺しても死にはしない」
「ははは、そうか。甘やかすのがイヤなんだな」
「だから俺はなにも・・」
「ずっとせまい所で操縦桿にぎりしめて、無線でばかり会話してる職業柄だ。
声だけでなんとなくわかっちまうんでな。気を悪くしたなら謝るよ」
「・・・・・妙な男だ」
「そうだな。考えてみれば戦争屋にまともなヤツなんていないんじゃないか?」
「・・・(本当に妙な男だと思ってる)」
「(どこからかカップを用意しつつ)・・ところであんた、紅茶とコーヒーどっち・・
あ、弟がコーヒーで砂糖バカスカ入れたから、無糖の紅茶派か」
「・・・・」
「いやな、その弟さん達会った時やたらと忙しそうで
結局何も聞けずじまいだったんだ。
お兄さんは今そう忙しい方でもないんだろ?」
「・・・・・・・・・」
「・・いや、顔には書いてないから拭かなくていいって」
数分後
「・・(カモミールティー片手に壁にもたれて)へぇ・・壮絶な兄弟ゲンカの末に
親代わりで同居して仲直りしつつまだケンカしてるのかぁ。
あの連中、妙なかっこしてると思ったら私生活も無茶苦茶だったんだなぁ」
「・・・・(結局のせられてその横で無糖のアールグレイをすすりつつ
スコーンをかじるハメになってる)」
「でもま、無茶は無茶なりに幸せになってるんならよかった。
あの時2人とも結構なワケありに見えたんで
あれからどうなったのかちょっと心配したんだ」
「・・・お前は・・」
「ん?」
「母さんがお前の事を覚えているのなら、同じように気にする。
お前は今・・どうしている」
「・・そうだな、一応まだ鉄の棺桶で空を飛んでるよ。
もう誰かを落とす事はしてないが、ひっそり未練がましくつつましく、な」
「・・それで・・お前は満足か?」
「ん?うーん・・多少は退屈な時もあるが
まぁしょせん戦闘機乗りってのは飛んでる間どれだけ地上に帰りたいと思っても
やっぱりまた空に帰りたくなるもんだからな」
「・・・・」
「そんな顔しなくても、帰る場所ってのは誰しも違うもんだ。
今はそれがいいと思ってもいつか故郷へ帰る時がくるかも知れないし
空の上で死んだのならそのまま空の上まで行っちまうかも知れない。
ま、つまりは先のことなんて誰にもわからないさ」
「・・先程からずっと言おうと思っていたが、今言う。
そのあらゆる事を見透かし過ぎるお前の目は異常だ」
「あっはっは!そりゃ言えてるな!」
「・・・(もう反論するのも無駄な気がしてきた)」
「・・あっと、そうだ。前に会った弟と少年にし忘れてた事があるんだが
もしあの2人組に会うことがあるなら代わりにやっといてくれないか?」
「?・・内容によるが」
「えーと、つまりこれ(普通に近寄ってぎゅうとした)」
「!!(殺気もなにもなかった上にぼんやりしてたので避けれなかった)」
「・・?うおっとと!なんだ、何驚いて・・
あ、もしかして・・やったことなかったのか?」
「(5mほど飛び退いて構えながら)・・もうかなり昔の話になる・・いや
・・いきなり何をする。・・何だ貴様は・・」
「言う順序がバラバラみたいだが
つまりは最近してなくてビックリしたのか?」
「・・それもあるが気配、間合い、殺気もろもろを差し引いて最も驚いたのは
貴様のその突拍子もない行動順序だ」
「ははは、そりゃたった今思い出した行動だからしょうがないだろ。
けどいきなりはマズかったかな。悪い」
「・・いや、よく考えてみれば今までこんな表現の方法があった事を
忘れていた俺にも若干落ち度はある」
「じゃあ代行の方は引き受けてくれるって事か?」
「無論だ。だが愚弟の方へはおそらく拳になる。かまわないな」
「・・・まぁその方がいいっていうならそれでもいいが・・
けどそういうのが出来る相手がいるってのは
いる間は気付かないが結構幸せな事だからな。
俺の分まできっちりやっといてくれ」
「?・・お前にはもういないとでも?」
「だから今のさっきで思い出したんだよ。
戦争中に色々あってゴタゴタしてるうちに
いつの間にかそういうのが周囲からいなくなっててな」
「・・・・」
「また会えたら俺が直接しなきゃいけないんだろうが・・
なにせいつ命が落っこちるか分からないような職だから・・」
「・・・(ふいと近寄って片手で軽く抱きしめる)」
「え・・?」
「・・・代行だ。意味はそちらで解釈しろ」
「・・・(何とも言えない苦笑をして)どうやらあんたの2回目の場所ってのは
ずいぶんとあったかい所らしい」
「・・・一体何を見てきたのかは知らんが・・・本当に妙な男だ」
「そりゃあ戦争屋なんて事をしてたからな。
・・あ、そうだ。それのついでにこれも持っていけ」
「・・(ワインのビンを受け取る)?」
「前に何かの祝いでもらったシャ・・なんとかって酒なんだが・・
価値があるとか味わうって以前に飲めないんだよ。
そっちが飲めなくてもいけそうなヤツがいたら譲ってやってくれ。
俺が持っててもインテリアにしかならないんでな」
「・・・・・・」
「・・うっわ!おまっ・・!そんな時だけ笑うなよ!」
「・・くく・・・・いや・・見た目とのギャップが・・な」
「・・(ふて腐れたように)・・何もそこまで笑う事ないだろが」
「・・いや・・すまん。
だが酒好きなら1人心当たりがある。受け取っておこう」
「・・ならいいけどな」
「それと肝心な事を聞き忘れていたが、名は?」
「・・サイファー。もちろん本名じゃないが、こっちの方がよく使うしよく通ってる」
「・・サイファー?つまりゼロ、始まりであり存在しない、という意味か」
「さぁな、俺がつけたんじゃないから詳しくは知らない。そっちは?」
「名は数度変わっているが正しくはバージルだ」
「あぁ、焼いたトーストにバターぬった後ふりかけると
美味そうなニオイがぷーんとする・・
あだだだだ!!つねるなつねるな!!」
いやだってホントに美味しそうなニオイがするんだもん。
味はしないけどニオイだけでいつもと随分違うかんじになるので
ヒマな人は試してみよう。
ってこれお題もなにもあったもんじゃないような・・
でもまぁ友達になれたから別にいいや。
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